電王戦

本日、第2局。
今度こそ、本当に最後の最後、Final of FINALです。
正直言ってここまで盛り上がり続けるとは、当初は思っていなかった気がします。
終わりが来ることはもうだいぶ前から分かっていたとはいえ、寂しい気持ちもあります。
自分自身、ある一時期を濃密に関わりましたし、一棋士としても深い関心を持って見守ってきました。

実は今日から旅行に出かけるので、旅先で日本将棋連盟モバイルをチェックすることになりそうです。
ニコニコ生放送はこちら

ずっと紹介しようと思っていて、伸び伸びになってしまっていたのですが、未来にも役立つと思うのでいまさらながらご紹介。

いまから注文しても対局が終わるまでには届かないし、このブログの読者なら皆さん買ってるでしょうから全くの手順前後ですが(笑)
お手元にある方はぜひ、パラパラと読み返しながら観戦されてはいかがでしょうか。

将棋に一番関係があるのは第2章かと思います。
いくつか「核心」となっていると思った部分を、要約して紹介してみます。

・将棋は囲碁と違って、「何もしない」ことが最適解になることが多い。将棋にはマイナスの指し手、極端な悪手が多く、逆に囲碁はほとんどの手がプラスである。だから、将棋は「ダメな手」が分かることが特に大切である。
・では「ダメな手」をどうやって見分けるのかというと、実戦経験で「図形の認識能力」を高めていく。これが「美意識」につながっていく。プロ棋士が直観でほとんどの選択肢を捨てて、読みの方向性を絞り込んでいけるのはこの「美意識」があればこそのこと。
・ところが人工知能には「美意識」がない。また、「恐怖心」もない。しかし、美意識や恐怖心がないからこそ、人間が「美しくない」あるいは「不安」「危険」と感じて知らず知らずのうちに捨てている可能性の中から、良い手を拾い上げることができる。
・将棋ソフトであれば、そうやって可能性を広げてくれるのはただただ有意義なこと。しかし社会一般に人工知能が導入されていくとなると、人間が人工知能の判断に納得できるかどうかは、より厳しく問われるだろう。
・人工知能も間違えることはある。人間がミスをするのは理解できる一方で、人工知能は絶対に間違えないと勘違いしてしまうことはありうるので、過信しないようにしないといけない。
・一方で人間の「美意識」もまた、時代とともに変わっていくものである。決して定まったものではない。

自分自身もAIに対して、かなり近い感覚を持っていると思っています。
ただもしかしたら、自分の言葉に変換していくうちに、そうなっているのかもしれません。
皆様はどう思われるでしょうか。

最後に一か所、とても腑に落ちた部分を引用して今日の結びにします。
この意味では、将棋界は多士済々で、逆張り、他の人と違う研究をしている人がたくさんいる世界なので、これからも進化がやむことは当分ないだろうと思っています。
(実際、いまでもソフトを使っていない棋士はたくさんいる)

>「学習の高速道路」について、私にはもう一つ根本的な疑問があります。それは、本当に皆で「高速道路」を走っていくことが、進化を速めることなのだろうか、ということです。
実は、自然界では、むしろ生物の個体それぞれが遺伝的に多様性を持つことが、進化の鍵となっています。とするならば、全員が同じ選択をすることは、むしろ全体から見ると、多様性が失われていて、かえって進化が止まってしまう気もするのです。

自分自身も、かつて谷川会長が言われたように、技術と個性を磨いて、これからも棋士として頑張っていきたいと思っています。

では、今日の対局にご注目を。

2件のコメント

  1.  AIはしょせん道具だと思います。
     確かに進歩は著しく、最近は急速な成長を遂げていますが。

     PC(AI)を先生方はどう活用されているのでしょうか?
     この本では、電王戦に参加された先生の話として、気の遠くなる作業で、プログラムの癖やバグを見つけるようなもので将棋であって将棋ではない、みたいなことが書かれています。

     うまく表現できませんが、もし「将棋の高速道路」なるものがあってそれに全幅の信頼を置くとしたら、20年後くらいに、極端に言えば、主に活用するソフトに応じて先生方の棋風は「ポナンザ型」とか「やねうら王系型」とかになってしまうのでしょうか?

     初心者レベルの考えからすると、そういう単純なものではないように感じます。

     ので、常人と異なるすごい才能を持たれている棋士の皆さんがAIを使っても、結局プロのトラック運転手のカーナビの使い方と同じで、参考情報の域を超えないのではないか、と感じますが・・。

     素人の考えで恐縮ですが。

    1. >マックイーンさん
      いつもコメントありがとうございます。

      ちょうどこの旅行では、カーナビの便利さに助けられたところでした。
      こうやって道具として、便利に使えば良いと思います。

      同時に、頭を使わなくなるのは怖いですね。
      カーナビであれば、指示通りにするだけでなくちゃんと地図や周囲の状況も確認するとか、常に、自分で考えることを意識しておきたいものだと思います。

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