定跡と前例

とりあえず普通には生活できるようになったので(まだ散らかってますが)今日は図面貼ってみます。

一昨日の棋聖戦第1局、ちょっと意外な戦型という声もあったようですが、こうやって古い定跡形が再登場することも最近ではよくあることという気がします。
古い形になると羽生先生に一日の長がある、とかは、勢いのある若手なら特に考えないのでしょう。
実際、過去の研究や実戦例が、いまの目で見て正しいかは分からないわけですし。

50手目の棋譜コメントに、あれ?これどこかで見た局面・・と思って調べたら、珍しく自分の記憶のほうが正確でホッとしました。
前例は後手2勝、とありますが先手2勝が正しいです。
(全棋譜はこちら

なぜ覚えているかというと、最近のほうの前例が自分自身の対局だったので。
(昨年2月王将戦、対△高見五段戦)
その将棋は50手目△7五歩に対し、▲3五歩△7六歩▲同金△8六歩▲同銀△7四銀▲2四歩△同角▲6四歩△6五銀▲7七歩・・と進行。

もう1局の前例は2013年の王位戦、▲森内ー△藤森戦で、この将棋は藤森君の著書で自戦記を読んでいたので、対局のときにもある程度覚えていたように記憶しています。
(↑良書なのでオススメします。彼は見出しの付け方が楽しく、とても面白く読めました。)

その将棋は50手目から▲3五歩△7六歩▲同金△7五歩▲6六金△7四銀▲3四歩△8六歩▲同銀△6五銀▲5七角・・という進行。

最後の▲5七角が名手で、名人の懐の深さが印象的な一局です。
この将棋を踏まえて、△7五歩▲6六金を省略したのが高見五段の工夫でした。

一昨日の棋聖戦の将棋は、51手目に▲2四歩と前例から変化。

高見五段との将棋は熱戦の末勝つことができたものの、上の図では先手が苦しいと感じていたので、斎藤七段の工夫はなるほどでした。
一例を示すのが簡単ではないのですが、プロの感覚としてこのタイミングだとたしかに△2四同角とは取りにくいです。
前例はたぶん知っていたのだと思いますが、まだはっきり定跡化されたと言えるほどの将棋とは言えないので、さすがというしかないですね。

その後の進行における共通点として、△6五銀の金取りに▲7七歩の辛抱、という手順が実戦に現れたことが挙げられます。
部分的な定跡ということになるかと思います。
▲6五同金△同桂と、▲7七歩△7六銀▲同歩△6五桂、という手順を比べると、7六に先手の歩が残るかどうかの差で、この差がとても大きいのです。

本局はこの後詰む、詰まないの超難解な終盤戦になり、ものすごく見ごたえがありましたが、定跡の探求という意味ではこの▲7七歩の局面がどうか、というのが非常に重要なポイントになると思います。
はっきりしたことは分かりませんが、2局を比較した印象だけで言えば、本局のワカレならば先手を持ってみたいかなという気がします。

以上はあくまで僕の見解に過ぎないので、両対局者の見解等は、産経新聞や将棋世界の観戦記を待ちたいと思います。

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