よくある質問の答え

昨日も書いた通り、今日は朝の飛行機で帰京予定で、順調なら今頃空の上です。
この記事は予約投稿で、こないだの週刊文春での将棋特集で取材を受けたことで、個人的な補足も含めて思うところを少々書いてみます。
週刊文春に総力特集「人生を変える将棋」が掲載

僕がプロデビューを果たした2004年からしばらくの間、非常によく受けた質問がありました。
たぶん自分の人生で他のどんな問いよりも多く聞かれているだろうし、また自分は世の中の誰よりもこの質問を受けていると思います。

「将棋のプロになるのと、東大に入るのとでは、どちらが難しいですか?」

そもそも比べようのないものであることは大前提でありつつも、まあ、正直なところ答えは明らかでもありました。
ただ当時は若かったですし、幾分の照れや、取材への不慣れ等もあって、あまりキッパリとは答えてこなかった気がします。
ブログもまだやっていなかったですし、自分の言葉で自分の考えを述べる機会もいまより少なかったと思います。

入学と比べるなら、せめて奨励会入会のほうが質問として適切な気がするなあ。ということも当時から思っていました。
ただ数年も経つとこの質問を受けることも少なくなって、はっきりと言うこともないまま気がつけば大学卒業からもう10年あまりが経ちました。

今回、自分の言葉だけでなく優れた後輩二人からも似た見解が寄せられて活字になったので、今後は奨励会試験と比較してもらえたらありがたいかなと思いますね。
繰り返しになりますが比べられないものであることは前提で、個人的にはそれでも奨励会試験のほうがハードルが高いような気がします。

1時間半ほどの対談ではいろいろと興味深い話が聞けて自分にとっても有意義だったのですが、タイトル獲得という結果を出すに至った中村王座・糸谷八段の2人がそろって、奨励会試験を受ける際、当初は親に反対された。と言ったのは驚きました。
それほどまでに厳しい世界であるとこの当時(いまから20年ほど前)には既に見られていたということの表れと言えそうです。

若い頃の選択や行動に関して後悔は特にないですが、この2人と比べるとやっぱり自分は自分に対する厳しさが足りなくて(僕は基本的に自分にも他人にも甘い)、それがいまの地位につながってしまったかな、という思いはあります。
大学に関してももうすこし何をしたいかよく考えたほうが良かったですね。今にして思えば。

ただもちろん得たものも多かったです。
今回の対談は自分自身、過去に経験のない企画で記事も非常に良い仕上がりになっていると思いますので、お読みいただければ幸いです。

2件のコメント

  1.  まあ東大は理Ⅲを除き、才能がなくても努力により多くの人が入れると思います。棋士は努力だけではどうにもならないので自明ですよね。

     そういう質問をするメディアがいることが驚きです。メディアの劣化ですね。

     結局のところ棋士はスペシャリストな訳で、よほどのことがない限り将来を決めたと言えます。
     一方で大学は本当に自由な自分の4年間です。ですから、将来を考えるという意味ではおっしゃるとおり奨励会が適切なのだと思います。
     そういった意味では、杉本先生などのお考えなど、人生を預かっているという師匠の大変さを感じます。

    1. 劣化とは違う気がしますね。昔からですし、むしろ聞かれる機会は減ってますので。
      最近は棋士の認知度が上がってきていてありがたいことです。

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