すこし前の話なんですがシカゴに飛ぶ直前のこと、有名な詰将棋作家の若島先生がこんなツイートをされているのが目に留まりました。
詰将棋講座で使った問題をご紹介しておきます。この図に駒を2枚追加して、22合駒が歩合限定になるようにせよ。ただし、追加する駒は先手・後手どちらの駒でもいいし、持駒でもいいが、先手の玉を使ってはいけない。歩合限定とは、歩以外の合駒だとすべて詰むが、歩合の場合は詰まないことを指す。 pic.twitter.com/Om9iuMW59U
— Problem Paradise (@propara) 2018年5月21日
上記と同じ条件で、歩合限定を「香合限定」〜「飛合限定」に変えた問題(計7問)を解け。ただし、いずれも11玉でも詰むようにしておくこと。
— Problem Paradise (@propara) 2018年5月21日
面白そうだなと思って、図を頭に留めて飛行機に乗りました。
詰みそうで意外と詰まない簡素な図を考えると、よく眠れることが多いので、うってつけだなんですよね。
結論から言うと、向こうにいるうちにはできなくて、帰ってきてからも考えて、たぶんできました。
ただし、実現可能な逃れ筋(という表現で良いのかどうか?)がそれぞれ1通りだけなのかどうか、までは自分の力では分かりませんでした。
とても面白かったので、以下に自分の考えたことを記します。
完全にネタバレでしかもとても長いので、実際に解いた方、もしくは答えを知りたい方だけ続きをお読みください。
興味のある方は、実際に考えてみてください。
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まず、ものはためしで頭の中で2二に歩を合駒してみて、可能な詰み筋をいくつか考えてみます。
・▲2一竜、もしくは▲2一角・銀
・▲2二同竜
・▲2三に何かを打つ
このあたりがパッと思いつきますが、2三に駒を打つとだいたい詰みすぎるので、これは違うなと直感的に思いました。
あとで分かるわけですがこの直感は甘かったですね。
(1)一番簡単そうなのは金合で、予想通りこれはすぐできました。
▲2一竜で詰む+飛車合は取れば詰むという形を作れば良いのでこれで完成です。
(▲4三角で2一に利きを足し、△2三歩で逃げ道をふさぐ)
(2)次に簡単そうなのは歩合で、歩以外だと切って詰み、という図を考えてみます。
▲2二同竜△同玉▲3三〇〇・・という筋をしばらく考えた結果、この図にたどりつきました。
(▲2一竜△2三玉が逃れるように▲2四角がポイント)
▲3三角成に△1二玉しかないですがそこで飛金銀桂は打って詰み、香は▲3四馬左△2一玉▲2三香以下詰み。
角は品切れで、もしあっても詰みます。
(3)銀合もわりとすぐ浮かびました。これは1一に玉がいる形で▲2三桂に△同銀だけは詰まない、という形が詰将棋でよく出てきますからね。
▲2四桂から入る筋は当初想定してませんでしたが、考えてみると普通ですね。
でも持ち駒桂2枚で銀合以外全部詰むのはやや意外かも。
このあたりまではサクサク進みます。
(4)次に角桂をセットで考えようと思いましたが案外難しい。
そこで飛合が詰まないけど金合は詰むという形を先に探すことにしました。
金合のときと同じで▲2一竜で詰む筋を本線に、金だと切って詰むけど飛だと詰まない、という形を探します。
▲2一竜を▲3三桂で支えるアイデアと、▲4一角の配置に気づいたのはほぼ同時でした。
(金合は切って▲2三金△1一玉▲2一桂成で詰む)
△2二飛合▲同竜△同玉に▲2三飛は△3一玉、▲3二飛は△2三玉、▲2一飛は△3三玉で逃れ。なかなかうまくできてます。
このあたりまでは頭の中だけでできましたが、残りは難しかったです。
(5)日本に帰ってきてから、改めて盤に並べてみました。
頭の中で考えているのとはやっぱり違うみたいで、しばらく眺めているうちに、1三の香を取る詰み筋もあるんだなと気が付きました。
たとえば▲2三竜、△1一玉、▲1三竜、という筋のときに、△同角と取れたら詰まないのでは・・?
と考えていると、実際にできたのは角合ではなく、香合でした。
▲2四竜という超強力な攻め駒の追加に対し、△2一歩の配置がいかにも弱い感じで盲点でした。
・金銀の合駒は2四の竜で切って詰み。
・角桂は▲2三竜「引」△1一玉▲1三竜「上」で詰みます。
・香合は▲2三竜「引」に△同香を用意しつつ、切ったあとが役に立たない唯一の合駒です。
・ちなみに飛合は品切れで、もし打てても詰みます。さあこれであと2つ。
(6)残るは角桂なんですが、飛合のときに気が付いた▲4一角の配置は、ほど良い詰まなさ加減(?)だなと思ってずっと追いかけていました。
特に▲2三ナントカに△1一玉と落ちた形は持駒桂以外なら詰むのです。
いかにもという感じがしますよね。
この筋をずっと考えていて、3四に馬が来ると良いということにようやく気が付きました。
2二の合駒が桂以外ならば、▲3四角成△1一玉▲2二竜△同玉▲2三馬△1一玉に▲1二取った駒、で詰み。
これであと1問です。
(7)角合が自分にとっては一番の難問でした。
そこで原点にかえって、角の利きの特徴を考えてみました。
・頭が丸い(前に利きがない)
・ナナメに効く
・・・はい、それはもちろん誰でも知ってます。
ただ実際に盤面に角を置いて眺めてみると、いままで3一の地点についてはあまり考えて来なかった、という事実に気がつきました。
そうすると、あるんですねえ、「▲3一竜」で詰むという筋が。
これに気が付いてしまえば完成までは一瞬でした。
最後になったのはたまたま自分にとって盲点だっただけで、わりと簡単に気がつく人も多いかもしれません。
△2二合▲2三金△1一玉と進んで、角銀以外は▲3一竜で詰み、銀合は▲2二竜△同角▲1二銀で詰み。
持駒金は銀でも良いし、▲3五桂とか▲2九飛などの配置でも良さそうです。
ということで、全部できました。
長々と最後までお読みいただいてありがとうございました。
さて、私からの問題ですがこの(1)~(7)の解答のうち、実は一つだけ間違いがあります。それはどれでしょう?
たぶん、わざわざここまで読んで下さった方なら気づいていると思います。
万が一2つ以上間違いがあったら、そのときはコメントで教えてください。
これ、どのくらいの時間で出来たらプロ級なんですかね?
僕はかなりの時間、楽しめました。
詰将棋の世界、奥が深いです。知ってた。