三段リーグ

先日の三段リーグ最終日は、女性初の四段昇段ならず、ということで大きく報道されました。

2人の新四段のうち谷合君は東大の後輩で、普段から練習将棋を指す間柄です。
彼はこれまで次点を含む好成績を何度も上げており、藤井聡太現七段に三段リーグで土をつけた5人のうちの1人でもありました。
惜しいところで昇段を逃すことが続いていたので、ようやく、ようやく上がってくれて本当に嬉しく思います。

服部君は今回の西山さんと同じで14-4での次点経験者(それが1期目)で、その後も毎回勝ち越し、他に公式戦でも活躍するなど、評価の高い一人でした。
個人的には2年前に富山にお招きいただいた際に、地元の方々が気にかけておられたのをよく覚えています。
将棋は強くなる過程において、地域差が小さくないはずと思うのですが、昔から今に至るまで不思議なほど地方出身の棋士、それもトップ棋士がたくさんいます。
これからは郷土の応援を背に、頑張ってほしいと思います。

西山さんは本当に惜しかったです。
ただ一人の女性であることはそれ自体もおそらくハンデであるのみならず(この点は想像つきませんが)、昇段の目が出てきたときに他の三段に比べて注目されるということは、三段リーグを勝ち抜く上で基本的にはマイナスです。
例外は「若い」という理由だけで、それ以外の理由で注目されて良いことは少ないです。

ただしひとたびプロになれば、注目されることはプラスに働きます。その瞬間から、今度は注目されることに感謝すべき立場に変わります。
彼女の場合すでにプロ(タイトルホルダー)としての立場を持ちつつ、三段としての立場で戦うというのは本当に大変なことで、その心情は余人には(里見さん以外には)分からないという気がします。
タイトル戦という華やかな舞台で責任を果たす一方で、それでも四段になりたいという強い気持ちを持ち続けるというのは本当にすごいことだと思います。

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かつて十数年前、自分が最終日に負けて昇段を逃したときに、「みんな帰ったよ」とお世話になっている記者の方に言われたことがありました。
自分の人生において、潮が引いていくような経験をしたのはあのときだけです。
(ただし同じことがすぐにもう一度ありました)
「初の〇〇」はバリューがあります。ただ、時間が経てば何でもなくなることも多いです。
今回のことは、自分のことと比べるとはるかにインパクトの大きなニュースですが、それでもやがて三段リーグに常に何人か女性がいるような時代が来れば、見方も自然と変わってくるでしょう。

三段と四段の間の線引きが一番厳しい世界ゆえ、今回のケースであれば潮が引いていくのが正しい姿と思うので、昇段を逃した本人のコメントが出ていたことには本当に驚きました。
それでなくても大きく報道されているところ、酷なことをと思いましたが、責任ある立場を考えると、それもやむを得ないのかもしれません。

西山さん自身にも、女性とか男性とかそういうことでなく、純粋に将棋を見てほしいとか、強くなりたいという気持ちがどこかにはあると思います。
僕も彼女の将棋はいつも勉強しています。羨ましいぐらい華のある将棋です。
昨日の将棋もお見事でした。
これからも注目を集めることは間違いないので、それをプラスに変えて、頑張ってほしいと願っています。

3件のコメント

  1. 本件については様々な報道やコメントがありましたが、一番腑に落ちる内容でした。西山三段には必ず四段になってもらいたいです。また、必ずなれると信じています。

  2. 今回の片上先生のブログは、おそらく全ての将棋ファンが共有しているであろう感想を的確に述べておられる、その一点でも特筆すべきものです。
    トモちゃん、来期も頑張ってください!

    森先生、あなたの育てた弟子の皆さんは本当に素晴らしい!
    と、ここに書くべきではありませんが、片上くんよろしくお伝え下さい。

    聖ファンのジジイより

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