10/15 豊川七段戦

順位戦の5回戦でした。
棋譜は名人戦棋譜速報でご覧いただけます。

本局は夕休のすこし前に千日手になりました。

飛・銀・玉などの動きを繰り返して千日手

ここまでくると、居飛車のほうが玉形は堅いものの仕掛けの糸口が難しく、一方振り飛車のほうも△4四銀のあと△5五歩や△3五歩などと仕掛けるほどではなく、千日手は自然な感じです。もちろん後手番としては満足と言えます。

夕休後からの指し直しは、急戦策にうまく対応できて有利になりました。
特に大さばきの途中、▲6四馬と切った手(59手目)は会心の一手でした。

形勢が良いことはひと目で分かるのに具体的な指し手は難しい局面

図では角と銀桂の二枚替え+と金で大きく駒得、玉形も大差で堅く、さらに手番、とはっきり優勢を意識していました。
しかし具体的な指し手は難しい。実はこういうときが、将棋を指していて一番苦しいものです。しっかり勝たないといけないというプレッシャーが強くのしかかってきます。

本譜、ここで▲4四歩と突いた手は、良いところに手がいきました。
この歩を取らせることで、▲4七歩の受けや▲4三歩の攻めが生じ、指し手の選択肢が増えてリードを広げることができたと思います。
△4四同銀のあとの▲8八飛も、大事な飛車の活用を図って味の良い手だと思いました。
振り飛車の将棋は、こういう感覚的な部分が大切になるので、この将棋では感覚の良い、筋の良い指し手を続けられたことが、良かったです。

とはいえこの後もかなり粘られ、結局勝ち切れたのはここから2時間以上も先のことでした。
一局の将棋を勝つことの大変さを改めて知らされる将棋になり、また、苦しい内容が続いていたので勝ててホッとした一局でもありました。

順位戦はここまで●〇●〇と交互に来ていたので、この勝利で今期初めて白星先行になりました。

仕事納め

昨日の竜王戦1組、佐藤和俊さんが破竹の勢いの渡辺三冠を撃破。
半年以上にわたって豊島竜王・名人以外誰にも負けてなかった三冠王にCクラスの棋士が勝つ(しかも後手番で)というのは、やはりトップとすぐ下の差がかなり縮まっていることを表す結果と思います。
実は年明けにその和俊さんと順位戦で当たっており、自分にとってはいっそう楽しみな一戦になりました。

その他も佐々木五段が久保九段を破り、井出四段は永世名人の森内九段を倒すなど、下位棋士の活躍が目立つ一日でした。
どちらも熱戦の末の受け切り勝ちで、上位クラスの棋士が強いのは当然である一方でこういうことが起きるのも、将棋界の価値の一つだと思います。

今日はこれから「東北ジュニア団体戦」が将棋倶楽部24の大阪道場で行われ、そちらのネット解説を務めます。興味のある方は、観戦にいらしてください。
自分にとっては今年最後のお仕事で、仕事納めになります。

たしか数年前にもやらせていただいたのですが、3局同時に解説するのでけっこう忙しいんですよね。
こういう仕事は好きなので、良い将棋が観られる期待と合わせて、楽しみにしています。

続・順位戦など

昨日のB1も情念こもった勝負が多数見られました。
最後に残った畠山ー山崎戦、どうやらはっきりしたかというところで寝てしまったのですが朝起きたら結果が逆になっていてびっくり。
5手詰を逃しての大逆転劇だったようで、深夜の秒読みはやはり何が起こるか分かりません。
また千田ー深浦戦も詰む、詰まないが複雑に絡み合う終盤で面白かったです。

朝日杯は羽生九段が後手番で1回戦を一手損角換わりで勝ち、それを受けて2回戦の屋敷九段は▲2六歩△3四歩▲2五歩と牽制→羽生九段は四間飛車、という流れで戦型選択が興味深いところでした。
羽生九段が現行の朝日杯を予選で敗退するのは初めて、というか予選を指すこと自体が初めてだったそうです。
つまりまだ予選を抜けたことがないとも言えるわけで(?)本戦の手前にも強い棋士はたくさんいる、という事象を示す(分かっていることとはいえ)結果になったのではないかと思います。

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昨日は書道部だったので著書にサイン入れしてきました。

今日以降、連盟1Fで販売されていると思います。
新刊12冊と前著3冊です。
また自分で仕入れた分も別にあって、そちらは今後プレゼント用や、イベント出演の際にご希望の方には販売します。
とりあえず年明けに先崎さんの「棋楽」に行くことが決まっているので、そこには少し持っていこうと思います。
(イベント内容については告知が出たら改めて)

今日は竜王戦1組や叡王戦本戦など、4棋戦6局。

順位戦など

昨日はB2の一斉対局を中心に観戦。
鈴木九段の勝ちっぷりはすごかったですね。
月曜日に続いての、ノーマル四間飛車での居飛穴連続粉砕は、振り飛車党のアマチュアファンに夢と希望を与えたと思います。
昨日の将棋は、途中は居飛穴側が指せているように見えたのですが、なんとも豪快な早指しでした。
弟弟子の大石君にとっては昇級争いの直接対決で敗れ痛い1敗でした。
その他、上位は星を伸ばし次局も1敗同士の直対が組まれています。そこを勝ったほうが2枠目の自力という状況での年越しになりました。

また昨日は深夜の熱戦が多く、上記含め二枚目突入(150手越え)が計4局、両者1分将棋に入った将棋も3局ありました。
最後に残った杉本ー村山戦はおそらく最終盤での逆転。これぞ振り飛車、職人の粘りという感じでやはり将棋は情念のゲームだと改めて思いました。

今日はB1の一斉対局の他にA級も1局、また朝日杯では羽生九段が登場するなどとても豪華な一日。
年内の順位戦一斉対局は昨日・今日で最後のようで、今日も長い一日になりそうですね。

9/27 長谷部四段戦

しばらく放置してしまってましたが、対局の振り返り記事を再開します。
もう3か月も書いていなかったということは、他にブログに書くようなトピックがいろいろあったということでもあるんですが、やっぱりきちんと反省する時間が取れてないということでもあるので、来年はなるべくそういうことのないようにしたいです。

本局は王座戦の予選1回戦でした。
前にも書いた通り、長谷部君は栃木期待の星ということで対戦を楽しみにしていました。

戦型は角道オープン四間飛車から△3三角と上がる形。
自分ではあまり指したことがない戦型で、まだ慣れていないところがあるのですが挑戦してみたいと前から思っていました。
対して相手は急戦を仕掛けてきてこの局面。

先手が角交換したあとに自陣角を打つのは桂頭を狙う手筋として知られていますが、この局面はすでによくある形からは離れており、序盤のセンスが問われています。
ここで△5四角と筋違いに打ったのですがこれは急所をそらした手で、以下▲5六歩△2一飛に▲8六角でシビレました。
角成りを受けるには△5二金ぐらいしかないですが、これは玉が薄くなって耐えらない手です。

ということで図では通例通り△6四角と打つ組み立てにすべきだったように思います。
(すぐ打つか、先に△5四歩かは難しい)
実戦の△5四角~△2一飛はその後△3六角~△2七歩or△2五歩として△3一銀から飛先逆襲をもくろんだ動きですが、これは実現しない狙い、絵に描いた餅でした。
ただ△5四角と打つ筋自体はまったくない手ではなく、むしろ角交換振り飛車にはありがちな手なので、ここは経験不足やセンスのなさが露呈したと言えます。

そして問題はこの後で、粘りを欠いて夕休前に負けてしまいました。
思えばこの頃は体調も悪く、精神的にも苦しい時期で、そういったいろいろな悪い部分が出てしまった気がします。
そういう時期にこういう悪い内容の将棋を指してしまうと、それでまた気分が落ち込んで悪いスパイラルに入ってしまう、という懸念があります。
幸い今はそういう状況からは脱していると思いますが、今後も気をつけていかないといけません。

楽しみにしていた対局が不甲斐ない内容に終わってしまったことは本当に残念で、また対戦できる機会があればと思っています。