死闘

昨日の王位戦、すごかったですね。
中盤の段階で、長くなりそうな予感はありましたが、これほどとは。
その後の感想戦まで含めて、22時までやっていたのは夕休のないタイトル戦としては、かなり異例のことと思います。

十番勝負で見るとこれで豊島王位の3-2ですか。
豊島王位の白星は序盤からリードしての完勝が2局と逆転勝ちが1局、木村九段のほうは粘られながらも完勝が2局、ということで内容的にも五分に近い気がします。
明日の竜王戦挑決もタイスコアになると、いよいよ盛り上がりそうですがどうなるでしょうか。

あと昨日はB2も大熱戦ばかりでした。
秒読みに入った将棋が多く、23時を過ぎて半数の対局が残っているのは現行のルールではかなり遅いほうだと思います。
世間はすこし涼しくなって秋の気配ですが、実に熱い一日でした。

今日はB1と、C2の残り半分。
今夜も眠れない、長い夜になるかもしれません。

王位戦など

昨日から王位戦第4局、舞台は有馬温泉。
封じ手直前の△4六銀~△9二角には驚きました。
こういう一点狙いの攻めは、あまりうまくいかない印象があります。
お二人がどう思っているのか、興味深いところですね。

//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

対局場の「中の坊瑞苑」では僕も記録を取らせていただいたことがあります。
ちょうど20年前の夏でした。

そういえばこないだある記者の方と「タイトル戦で10回以上記録を取ってプロになった人は少ない」という話になって、「僕はたぶん10回以上取ってると思います」と言ったのですが、数えてみるとやっぱりそうでした。
7大タイトル戦(当時)のうち王将戦を除くすべてのタイトル戦でやらせていただき、勉強させていただいたのは良い思い出です。

タイトル戦の記録をたくさん取っているということは、ある程度長く奨励会(しかも有段者)にいるということなので、たしかに良いことばかりではないしプロになれなかったケースが多くなるのも無理はないのですが、貴重な経験をさせていただいて、自分としては本当に感謝しています。
奨励会が現行の制度になってから、自分より多く取っている人がいるのかどうか?
すぐには思い浮かびませんでした。

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

将棋のほうは、書いている間に50手目△4七銀成が指されたところ。
先手持ちの印象は変わりませんが、それなりに難しそうな将棋には見えます。
後手玉が4二で囲いに入っていないのがかえって良い感じ、という展開になれば形勢の評価も変わってくるかもしれません。

今週はこの後すぐ竜王戦の挑決第2局もありますし、今日の結果は相当に大きなものになりそうです。

来場御礼、最近の対局等

今年の怪童戦も盛況のうちに終了しました。
指導対局もずいぶん指しました。ご来場の皆さまには、どうもありがとうございました。
参加者数は222名と縁起の良さそうな数字になったと聞いています。
また気がつけば、節目の20回まであと2年となりました。

将棋怪童に河口さん 村山聖杯(中国新聞デジタル)
決勝戦はレベルの高い攻防が長く続いて屈指の熱戦だったと思いました。

今年は土曜日の開催だったので、日曜日の移動を避けていつもより余分にもう1泊してから昨日の朝、東京に戻りました。
いったん帰宅後、昼すぎからは書道部へ。夜は門倉部長のお祝いをしました。
ワンチャンスをモノにする勝負強さが光りましたね。おめでとう。
将棋・YAMADAチャレンジ 門倉五段 栄冠(上毛新聞)

また女流のほうは愛媛県出身の山根さんが優勝でした。
地方出身棋士の活躍は地元の方々にとって喜びだと思いますし、地元の応援は棋士にとって励みになるものと思います。
YAMADA女流チャレンジ杯 山根女流初段(松山出身)初V(愛媛新聞)

昨日は新人王戦で早咲さんの大逆転勝ちに驚かされました。
若手有望株を相手に立て続けの逆転劇を演じる早咲さんは心底すごいと思いますし、プロ相手に6~7割は常に勝っている棋士でも時にアマチュア相手に負けてしまうことに、良い将棋を勝ち切ることの難しさを感じます。

今日明日は王位戦第4局。
ここ数日のその他のニュースは、また改めて。

2枚落ちの話

今日のテーマは、これも有名な「銀多伝」です。

この局面から、▲6六歩~▲6七金と指されました。
これは定跡にはあまり書かれていない手のはずですが、好手だと思います。
戦場から離れている金を、自玉の近く、かつ中央に近づける本筋の手で、他には▲7七金という手もあり、こちらも好みです。
いずれも、このあと▲7六歩と打てば、上手の大事な金を8五のほうへと追いやって、戦線離脱させることができます。

このような理由があって、めったに指されることのない手なのですが、指されたときには必ず、この手は良い手ですよと教えることにしています。

ただ、それなら、と気になっていることもありまして。

そういうことなら、この局面から▲5八飛として△8五金~△7六金を許すのではなく、▲7八金△8五金▲7七金といったん受けておいたほうが、もっと得なのではないか。という問題はあるんですよね。
たぶんこれは、昭和の時代から上手を持って指導される方も気になっていたのではないだろうかと、想像しています。

これは二枚落ちの素晴らしい定跡手順の中のちょっとした枝葉みたいなもので、大きな幹のほうが重要なので気にすべきことではないのですが、↑の▲6六歩とか▲7七金をたまに指されると、思い出すエピソードです。

それはさておき、僕は二枚落ちの2つの定跡(この銀多伝と、もう一つは二歩突っ切り)は本当に素晴らしい、それこそ世界遺産のようなものだと思っているので、このブログを読んでもしすこしでも興味を持たれたら、一度は触れてみることをオススメします。

6枚落ちの話

将棋ウォーズ指導、その後も楽しく指しています。
今日・明日は予約投稿で、その一場面から。

6枚落ちの定跡の一局面、に見えるが・・・

駒落ちには歴史的名著「将棋大観」に端を発する有名定跡がいくつかありますが、中でも特に有名な一つが、6枚落ちで9筋から攻め込む定跡だと思います。
図のように△8四金~△9五歩でなんとか端を防御しようとする上手に対し、▲8四角と切って△同歩に▲9五飛と突破します。
以下は飛を成ったあと、と金や成香で攻めていくのですが、これはご存じの方も多い通り、良い攻め方ではないと教える指導者もけっこう多い手順です。
理由はもちろん、早い段階で角という強い駒を上手に渡してしまうからです。

それはさておき、実はこの局面は、定跡と一か所違う点があるのですが定跡通の方はお分かりでしょうか。
それは、△6四歩と▲5六歩の交換が入っていないのです。

上手が△6四歩と突いてきたら、▲5六歩と角の逃げ道を作って9三までの利きを確保しましょう、と多くの駒落ち本に書いてあるはずですが、突いて来なかった場合のことは書かれていないことも多いように思います。

実はこの局面では、▲5五角とするのが下手の最善手だと思います。

△6四歩と突いていないスキを突く

8二の銀取りを防ぐには△7一銀しかないですが、そうすることで▲9三香成や▲7三角成といった手を無傷で実現することができるので、下手の攻めは成功です。

言われてみればなるほど、だと思いますが自分の経験上、こう指されることはほとんどありません。
不思議と言えば不思議ですが、それだけ▲8四角という手が有名ということだと思います。

角と金を交換してまでも、飛車を成り込むのが大切、というのは正しい判断ですが、できれば大駒を相手に渡すことなく、2枚とも成り込んで攻めたいところですよね。
この手を僕がブログに書いたことで、今後6枚落ちで指導対局にチャレンジする方が、こう指してくれたらなあと願っています。