噂の新手

昨日はブログに書いた3棋戦の他に、マイナビのチャレンジマッチもあったのですね。
昼間「観戦」のボタンを押したら、やけにたくさんの中継局が並んでいて、あれ?と思ったらそういうことでしたか。
その後、昨日の将棋にはまだきちんと目を通せていないので、また後日に。

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こないだの順位戦の対局日、隣でやっていた▲阿部ー△佐々木戦で、午後の早い時間に衝撃的な銀のタダ捨てが出ていました。
たまたまこの手は僕も聞いて知っていたので、噂の新手、という感じでああ、ついに出たかと思いました。
聞いたときのことはいまも覚えていて、本当に驚きました。

実は平成新手白書にも入れようかな、とも思ったのですが実際に盤上に指された手ではないので、書きませんでした。
相早繰り銀という戦型については「今後も指されると予想している」と記しており、いまのところその予想は当たっている感じです。

翌日には遠山編集長改め棋士会副会長が記事にしていましたね。
図面を貼る代わりに、そちらの記事を紹介しておきます。
【将棋】佐々木勇気七段がみせた一撃必殺の銀捨て

一般向けの記事ですが普通に指し手の解説をしています。
良い時代になりました。

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やはりと言うべきか、この手も普通に(?)コンピュータソフトが示すそうです。というか、たしかに示してました。

いまはこういう新手が指されるとき、準備段階において
(1)自分で思いついて、ソフトにかけてみたら同じ手を示した
(2)自分で思いついて、ソフトにかけてみたら示さなかった。しかし入力してみたら高評価された
(3)ソフトが示すので、調べてみたら良い手だったので採用した
(4)ソフトが示すので、とりあえずやってみた
etc.のうち、
どれに当たるのか、の区別はつきにくくなっています。

その結果自分で新手を「思いつく」ことの価値は暴落していて、代わりに「探索」とか「発掘調査」みたいな手法が有力になっているのが現状だと思います。
あと、本当は(1)なのに、(3)だと思われると残念、というのもありますね。

ひとつ言えることは
(5)自分で思いついて、(ソフトにはかけずに)自分だけで考えて採用した
とか
(6)その場で思いついて、やってみた
というような人は、かなり少数派になっているということでしょうか。
あまり良い傾向とは思わないですが、それはそれでやむを得ないのかなという感じです。

個人的には(2)のような新手を発見できたり、(6)のような手を公式戦の場でさせたら嬉しいのですが、現実にはなかなか難しいです。

また△3七銀のような(人間にとって)衝撃的な新手があとどのぐらい水面下に眠っているのか、という点には勝負という観点を越えて興味がありますね。

豪華な土曜日

昨夜twitter上で「三間飛車」が「さんけんびしゃ」なのかはたまた「さんげんびしゃ」なのかで、論争になってたのは面白かったですね。
これはたぶん両方が正解のはずです。
米長先生の「どっちでもええやないかという団体でございます」という名言(?)を思い出しました。

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今日は叡王戦と日本シリーズの開幕戦が重なり、さらに王将戦で千田ー藤井戦という好カードもあり、土曜日だというのに豪華な一日。
もっとも「だというのに」ではなく徐々に「だからこそ」となっていってくれたら良いなと思います。
タイトル戦の番勝負をはじめとする、各棋戦の特に大きな一番が土日に行われれば観る人は確実に増えるでしょうから。
あと学生の対局もできるだけ休日につけられるようにしてほしいですね。

昨日の中継、深浦ー佐藤天戦の大逆転には驚きました。
トップ棋士同士でも、時にああいうことがあるんですね。
やはり将棋は何が起こるかわからない。最後の最後までわからない。

今週はC1でも島ー増田戦とか、ちょっと信じられないような逆転がいくつかありました。
戦いは最後の5分間にある。よく忘れるけど、忘れないために書いておきます。

自動記録

昨日はまたビッグニュースがありました。
全然知らなかったので驚きました。
日本将棋連盟とリコーが「リコー将棋 AI棋譜記録システム」を共同開発
こちら連盟HPのリリースですが、もちろんリコーさんのプレスリリースのほか、NHKなどのニュースでも取り上げていただいていたようです。

映像分析で自動的に棋譜起こし、というアイデアはもちろん以前からあったのですが、当時は技術が追い付いていなかったり、費用面でもハードルが高そうで、導入したいものの難しいという状況でした。
記録係不足はもう10年ぐらい前からの深刻な課題で、これまでにもタブレットによる記録や、順位戦における持時間の実質短縮・2局取りなどの対策を講じてきましたが、根本的な解決のためには原則自動化することが最適解なのは明らかです。
ようやくこのような流れになったことは、本当に喜ばしいことと思います。
将棋界が長年お世話になっているリコーさんに支援していただくということで、棋士の安心感もありそうです。

将棋の棋譜を起こすのに本来、必要な要素は少ないので、昨今のAIの進歩を考えれば一見難しくなさそうに思えます。
ただ実際の対局現場では本来の着手と関係ない動きも予想される(たとえば盤面に虫が飛んできて手で追い払うとか、ホコリを払うために駒をすこしずらして拭くとか、いわゆる空打ちとか)ので、そういった「ノイズ」に対応できるかが技術的な課題でしょうか。
事前にありとあらゆる事象を想定して対応するというよりも、バックアップ体制を整えつつ、その場で対応することが望ましいと思います。
棋譜そのものは棋士の頭の中にもあるわけで、時間計測さえしっかりしていれば深刻なトラブルにはならないはずなので。

ところでリコーさん、昨日はこんなリリースもされていたようです。
ご自分たちと、将棋界の「働き方改革」を同時に発表するなんて、粋な話ですね。
(もしかしたらタイミングは偶然かもしれませんが)

将棋の「裏方」にもAI、リコーと棋譜の自動記録システム
こちらは日経ビジネスの記事。知人(というかギャモン仲間)のお名前が出てきてびっくりしました。そうでしたか。

まだ本格的な導入になるのはすこし先になるのだと思いますが、自分の対局で体験するのはなんだか楽しみです。

ヒューリック杯など

この2週間ほどは順位戦の中継が多かった(昨日もA級が1局)中で昨日は棋聖戦の第2局があり、挑戦者の快勝で1-1のタイに。
お互いに後手番ブレイクという展開は見ていて一番面白いですね。
中盤の△5五銀は斬新な新手でした。

角換わりはおそらくコンピュータソフトの影響をもっとも強く受けた戦型で、新型同型の出現以降は新しいアイデアが出にくくなっている状況だと思うのですが、それでもまだまだ知られざる手筋はきっとあるんでしょうね。
これからもタイトル戦等で指され続ける中で、どれだけ掘り進めることができるか、という勝負になっていくのでしょう。

女流新タイトル戦、序列1位の清麗戦は通常の挑決に当たる本戦2局が終了。
里見さんは六冠を目指す戦い、甲斐さんはその里見さんに予選で土をつけているということで順当な結果になったと言えそうです。
頼本さんは昨日の将棋は残念だったと思いますが、あれぐらい豪快な大敗はむしろ引きずらないで良いのではないでしょうか。

五番勝負の日程が中継ブログに出ていました。
夏の土曜日を中心とした日程ということで、イベント等も予定されているのかもしれませんね。

あと昨日は竜王戦で本家本元・元祖藤井システムが炸裂していました。
懐かしい定跡形で、いまでも使える戦法であることはもちろん、こうやってトップ棋士の対局に登場することもあるのだと目の当たりにすると嬉しいですね。
たぶん、ファンの方も同じ気持ちではないでしょうか。
藤井システムは新手白書の振り飛車編でももちろん取り上げる予定です。

では今日はこのへんで。

負け

大事な開幕戦、初手▲5六歩から、指し慣れた先手中飛車を採用。
中盤はいつものように、あまり経験のない展開。自分の感性に従って、指したいと思う手を指しました。
角銀総交換になって、図の▲5六角は、この一局の命運を懸けた一手。
すこし前の局面から、ここに角を打つイメージで進めており感触も良し。

△6七角までの順はもちろん僕も本命で、以下▲同角△同とに▲2三銀△同玉▲2一飛でどうかと読んでいました。お互い怖い勝負です。

実戦は△8四飛の途中下車、いい辛抱と思いました。
このあとも自分が指したいと思う手を指しましたが、相手の反撃が見事に刺さって、負けてしまいました。
感想戦もわりとしっかりやりましたが結局敗因はよく分からず。図の局面自体が良くなかったのかもしれません。

先手番で、そこそこ力は出せた将棋だったにも関わらず黒星スタートになってしまい、今期も厳しい戦いになりそうです。
くさらず、くじけず、一局一局、一生懸命頑張っていきたいと思います。