女流棋戦3つ

一昨日の女流王位戦第4局は、里見さんが勝って復位。
将棋の内容がすこし一方的な感じで、ここまでの3局がどれも熱戦だっただけに、渡部さんとしては悔いの残る将棋になってしまったように見えました。
一昨年タイトルを獲られたのと同じ場所でのリベンジ、また、クイーン称号獲得などが報じられていました。相変わらず、強いですね。

王位と女流王位の記念対局もモチベーションになっている、というコメントも印象に残りました。
全冠制覇なるかどうか、という状態がもうしばらく続くのかもしれません。

あと昨日のブログに清麗戦の「本戦が始まります」と書いたのですが実際は今期の本戦はベスト4の2局だけ、勝ったほう同士で五番勝負なので実質的には挑決に近かったのですね。
これは1年半ほど前の叡王戦準決勝と同じ状況、新規のタイトル戦ならではで昨日書いたときにはウッカリしていました。

新たなタイトル戦の記念すべき第1回ですから、HPでももうすこし盛り上げる方法を考えて良かった気はします。
考えてみると本戦進出を懸けた一番とかも、通常の予選の枠抜けに比べるとかなり大きな一番だったのですね。

今日は土曜日ながら中継がたくさんあるようで、その多くはヤマダ杯の女流戦です。
おそらく明日のパーティーで一同に会するので、それに合わせて一斉に対局を組んでいるということでしょう。
その他に加古川青流戦と、朝日アマ名人戦も中継されるようです。

いのちだいじに

昨日も連日の大激戦ぞろいでした。
特にB1は、2局が早い終局でしたがあとの4局はいずれも終局が日付をまたぎ、不利な側がなかなか土俵を割らないという大熱戦。
やはり本当に大変なクラスなのだなという思いで見ていました。

中でも郷田九段のあの手この手を尽くした粘りには感嘆しました。
「将棋は情念のゲーム」やはり簡単には終わらない。
苦しい形勢のときにどう指しているかを、周りの棋士も見ています。主に自戒を込めて。

あと菅井ー永瀬戦はやはり永瀬叡王の粘りがすさまじかったですが、そのおかげもあって菅井七段の名局が誕生したのではないかと。
振り飛車党はぜひ並べてほしい一局です。どうしてあんなに駒がさばけるのか分からない、とほれぼれすると思います。

表題はこないだの棋聖戦で「ガンガンいこうぜ」という中継ブログがあったのをふと思い出したもの。
棋譜コメントでドラクエのコマンドについて解説されていたのにはちょっと笑いました。
対局していて、脳内がそういう気分になることはたしかにあります。
ただ現実には「いのちだいじに」と思うことのほうが多くて、特に昨日のように終わりそうで終わらない将棋をたくさん観ていると、やはりいのちだいじにだな、と思うんですよね。

C2は持ち時間の方式が違うので、B1と同時にやっていると多少早く感じますが、それでも遅い終局の将棋がけっこうありました。
大きな逆転は少なかった印象ですがそれでもドラマがあった将棋もあり、やはり粘り強く指すことが大切と、前日とまったく同じことを思いました。

今日はA級が2局、それと清麗戦の本戦が始まります。

粘り強く

昨日のB2は熱戦が多く、しかも早い時間に戦いが起きてそこからが長いという将棋が多かったので、観戦していて特に面白い一日でした。
夕方からずっと目を離せない将棋が多く、今期も始まったな、の思いを新たにしました。

C1が才気煥発な若者の多いクラスとすれば、B2はとにかく球が重く、腰が重い。粘り強い中堅棋士の多いクラス。とよく言われるように、「しぶとい」と思わせる将棋が多かったように思います。

主催紙のこのツイートを見て、順位が下の棋士がほとんど勝っているなと、ふと気づきました。(10勝2敗)
偶然でしょうし、そう珍しいことでもないのかもしれませんが、もともとの実力が特に拮抗しているからこその事象という気はします。

あと昨日は対抗形では振り飛車側が全勝でした。
それぞれの勝ち方を見ていると、やっぱり粘り強く、それと丁寧に指すことで振り飛車の良さが出るのだなと勉強になる一日でした。

なおA級も振り飛車(久保九段)の会心譜になりそうに見えていましたが、朝起きて続きを見てみると結果は逆でした。
穴熊から出てきてからがしぶとく、こちらは居飛穴側(佐藤九段)の粘り強さが発揮された一局でした。

今日はB1が6局とC2の半分(12局)で都合18局、それと女流王位戦の第4局も行われます。

順位戦 開幕と制度変更

今週からいよいよ、今期の順位戦が開幕します。
今日、水曜日はB2と、A級1局でスタート。
明日もB1とC2(半分)、あさってもA級2局があります。
自分のクラス(C1)は来週の火曜日です。
他のクラスの戦いぶりを観戦しつつ、開幕に向けて調整していきたいと思います。

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先日の総会で、来期(2020年度)順位戦から昇降級(点)枠の人数が一部変更されることに決まり、連盟HPでもリリースがありました。
第70回通常総会ご報告

順位戦制度はやはり将棋界の中でも特に根幹の一つなので、棋士や理事の間でも議題(あるいは話題)に上がることが多く、特にC1の過度な人数増加は、何年も前から対応すべき課題の一つでした。
たとえば30年ほど前と比較すると、B2やC2の在籍人数には大きな変化がないのに対し、C1だけが1.5倍以上になっています。
その結果として近年は9勝1敗という好成績で昇級できないケースが(以前や他のクラスに比べて)頻発する状況を生じていました。

しかもそのような状況になること(=各クラス在籍人数の変動)は、10年以上前からある程度予測可能なことでもありました。
そうした状況の変化に制度が対応していかないのは、たとえて言うなら国の不作為のようなものということになります。
ただ現実に制度を改革するというのは(しかも将棋連盟のような当事者のみで物事を決める団体にとっては特に)非常に難しいことでもあります。

今回の改定案における変更部分だけをまとめると
(1)B1⇔B2 どちらも1名増
(2)B2→C1 増、ただし流動的
(3)C1→B2 1名増
(4)C1→C2 増、ただし流動的
となります。

・まず(3)により、C1の人数は減少し、B2の人数は増加します。
・ただし(2)により、B2の人数増加には一定の歯止めがかかります。
・(2)によりC1の人数は増加し、(4)により減少します。
よってこの2つの効果はある程度打ち消されます。
・(4)により、C2の人数は増加することが見込まれます。
よってこの点が「将来の課題」となっています。
・(1)だけは在籍人数に影響を与えないので、(2)~(4)とは性質の異なる改定と言えます。

個人的な意見としては(1)を同時に決めてしまう必要はなかったと思いますが、違う意見の方もいるでしょうし、全体に対して反対という方も当然いたでしょう。
ファンの方からも、いろんな声がありそうです。

この件はある程度外からの目線で内側の議論を見ていて、途中の進め方にはいろいろと疑問を感じていたのですが、結果として改革が実現したこと自体は、良かったと思います。

5/16 棋聖戦(2)

午後は金井六段との対戦でした。
振り駒で再び後手番になり、積極雁木を採用。先手も雁木で追随する流れで、ほぼ先後同型に近い相雁木になりました。

相雁木は僕にとって思い出の深い戦型で、以前こんな記事を書いています。
雁木
以来この戦型を指すのは実に30年近くぶり、少なく見積もっても20年以上ぶりだと思います。将棋って、こういうこともあるんですね。
この戦型や思い出については平成新手白書にも書いています。

そんな遠い昔の記憶は、もちろん実際の公式戦で役に立つということはないのですが、本局はたまたま序盤をうまく指せて、プロ的にはかなり差のついた作戦勝ちになりました。

しかしそこからうまく指せませんでした。将棋は良いほうが決めきれず、むしろ粘るような指し方をするとだいたい混戦になります。
紆余曲折あってこんな局面になりました。すでに129手目です。

△8八歩成と角を取って▲同玉までの局面

ここに至るまで、本当にいろんなことがありましたがここはまたチャンスが来たと感じていました。
駒がたくさん当たっていて非常にややこしい局面、すこし整理すると、飛車を取られても後手玉はまだ詰まないので、その間に詰めろをかければ勝てそうです。
ということで第一感は△4六角で、たぶんこれなら勝ちでした。

ただ秒読みなのでなるべくリスクの低い手を、という気持ちが△6七歩という手を選ばせました。これが疑問手で、▲同金△5四飛にじっと▲5六歩と受けられて妙に難しくなりました。
飛車取りと▲5三歩成、狙いを2つも解除できたのですが、それでも▲2六桂とか▲4六桂とかいろいろ残っていて、嫌味を完全に消すことはできません。
どうせ受け切れないなら攻めに注力すべきでした。と後になれば言えますが自陣も見ながら指してしまうのは人情でしょう。

そして焦ったところで△4三銀という2000点級の大ポカが出て、すかさず▲2三桂と打たれて逆転しました。これは1分将棋とはいえさすがにひどかったです。しかし、ひどかったとはいえすでに悪手の出やすい局面ではありました。

終盤のミスが多く残念な将棋でした。