粘り強く

昨日のB2は熱戦が多く、しかも早い時間に戦いが起きてそこからが長いという将棋が多かったので、観戦していて特に面白い一日でした。
夕方からずっと目を離せない将棋が多く、今期も始まったな、の思いを新たにしました。

C1が才気煥発な若者の多いクラスとすれば、B2はとにかく球が重く、腰が重い。粘り強い中堅棋士の多いクラス。とよく言われるように、「しぶとい」と思わせる将棋が多かったように思います。

主催紙のこのツイートを見て、順位が下の棋士がほとんど勝っているなと、ふと気づきました。(10勝2敗)
偶然でしょうし、そう珍しいことでもないのかもしれませんが、もともとの実力が特に拮抗しているからこその事象という気はします。

あと昨日は対抗形では振り飛車側が全勝でした。
それぞれの勝ち方を見ていると、やっぱり粘り強く、それと丁寧に指すことで振り飛車の良さが出るのだなと勉強になる一日でした。

なおA級も振り飛車(久保九段)の会心譜になりそうに見えていましたが、朝起きて続きを見てみると結果は逆でした。
穴熊から出てきてからがしぶとく、こちらは居飛穴側(佐藤九段)の粘り強さが発揮された一局でした。

今日はB1が6局とC2の半分(12局)で都合18局、それと女流王位戦の第4局も行われます。

順位戦 開幕と制度変更

今週からいよいよ、今期の順位戦が開幕します。
今日、水曜日はB2と、A級1局でスタート。
明日もB1とC2(半分)、あさってもA級2局があります。
自分のクラス(C1)は来週の火曜日です。
他のクラスの戦いぶりを観戦しつつ、開幕に向けて調整していきたいと思います。

///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

先日の総会で、来期(2020年度)順位戦から昇降級(点)枠の人数が一部変更されることに決まり、連盟HPでもリリースがありました。
第70回通常総会ご報告

順位戦制度はやはり将棋界の中でも特に根幹の一つなので、棋士や理事の間でも議題(あるいは話題)に上がることが多く、特にC1の過度な人数増加は、何年も前から対応すべき課題の一つでした。
たとえば30年ほど前と比較すると、B2やC2の在籍人数には大きな変化がないのに対し、C1だけが1.5倍以上になっています。
その結果として近年は9勝1敗という好成績で昇級できないケースが(以前や他のクラスに比べて)頻発する状況を生じていました。

しかもそのような状況になること(=各クラス在籍人数の変動)は、10年以上前からある程度予測可能なことでもありました。
そうした状況の変化に制度が対応していかないのは、たとえて言うなら国の不作為のようなものということになります。
ただ現実に制度を改革するというのは(しかも将棋連盟のような当事者のみで物事を決める団体にとっては特に)非常に難しいことでもあります。

今回の改定案における変更部分だけをまとめると
(1)B1⇔B2 どちらも1名増
(2)B2→C1 増、ただし流動的
(3)C1→B2 1名増
(4)C1→C2 増、ただし流動的
となります。

・まず(3)により、C1の人数は減少し、B2の人数は増加します。
・ただし(2)により、B2の人数増加には一定の歯止めがかかります。
・(2)によりC1の人数は増加し、(4)により減少します。
よってこの2つの効果はある程度打ち消されます。
・(4)により、C2の人数は増加することが見込まれます。
よってこの点が「将来の課題」となっています。
・(1)だけは在籍人数に影響を与えないので、(2)~(4)とは性質の異なる改定と言えます。

個人的な意見としては(1)を同時に決めてしまう必要はなかったと思いますが、違う意見の方もいるでしょうし、全体に対して反対という方も当然いたでしょう。
ファンの方からも、いろんな声がありそうです。

この件はある程度外からの目線で内側の議論を見ていて、途中の進め方にはいろいろと疑問を感じていたのですが、結果として改革が実現したこと自体は、良かったと思います。

5/16 棋聖戦(2)

午後は金井六段との対戦でした。
振り駒で再び後手番になり、積極雁木を採用。先手も雁木で追随する流れで、ほぼ先後同型に近い相雁木になりました。

相雁木は僕にとって思い出の深い戦型で、以前こんな記事を書いています。
雁木
以来この戦型を指すのは実に30年近くぶり、少なく見積もっても20年以上ぶりだと思います。将棋って、こういうこともあるんですね。
この戦型や思い出については平成新手白書にも書いています。

そんな遠い昔の記憶は、もちろん実際の公式戦で役に立つということはないのですが、本局はたまたま序盤をうまく指せて、プロ的にはかなり差のついた作戦勝ちになりました。

しかしそこからうまく指せませんでした。将棋は良いほうが決めきれず、むしろ粘るような指し方をするとだいたい混戦になります。
紆余曲折あってこんな局面になりました。すでに129手目です。

△8八歩成と角を取って▲同玉までの局面

ここに至るまで、本当にいろんなことがありましたがここはまたチャンスが来たと感じていました。
駒がたくさん当たっていて非常にややこしい局面、すこし整理すると、飛車を取られても後手玉はまだ詰まないので、その間に詰めろをかければ勝てそうです。
ということで第一感は△4六角で、たぶんこれなら勝ちでした。

ただ秒読みなのでなるべくリスクの低い手を、という気持ちが△6七歩という手を選ばせました。これが疑問手で、▲同金△5四飛にじっと▲5六歩と受けられて妙に難しくなりました。
飛車取りと▲5三歩成、狙いを2つも解除できたのですが、それでも▲2六桂とか▲4六桂とかいろいろ残っていて、嫌味を完全に消すことはできません。
どうせ受け切れないなら攻めに注力すべきでした。と後になれば言えますが自陣も見ながら指してしまうのは人情でしょう。

そして焦ったところで△4三銀という2000点級の大ポカが出て、すかさず▲2三桂と打たれて逆転しました。これは1分将棋とはいえさすがにひどかったです。しかし、ひどかったとはいえすでに悪手の出やすい局面ではありました。

終盤のミスが多く残念な将棋でした。

5/16 棋聖戦(1)

今日明日は先月指した対局の振り返りです。

ヒューリック杯棋聖戦は、一次予選は持ち時間1時間で、1日2局を指すこともあるという方式です。
この日もそうで、午前は新四段の山本君との初対戦でした。

相手は当然の初手7八飛。こちらは左美濃で対抗して、振り穴vs銀冠のじっくりした将棋になりました。
そういえば振り穴を相手にするのはずいぶんと久々です。

中盤の折衝で相手にミスが出て、すこし指せる流れになりました。
図の局面ではなんと飛車得です。
ただ「5三のと金」が大きな存在で、油断はできない局面と思っていました。

 ▲4六歩と桂取りに突き出した局面

実戦はここから△5七桂成▲4五歩△3五銀▲3六歩△5六角と進んで勝ち筋に入りました。以下▲3五歩に△7九飛(次は△3八角成)で攻め合い一手勝ちが見込めます。
手順中4四でなく3五で銀を取らせるのがポイントで、駒を取りながら玉に迫られるのを防いでいます。

途中の▲3六歩では▲3三銀成△同金▲4四歩△同銀▲5四と、のように攻めるのが正しく、それなら難しい形勢でした。
4筋の歩が切れることで▲4九歩の受けが生じるのも大きいです。

戻って図の局面をソフトにかけると△3七角!!という派手な手を指摘してくれるんですが、これはちょっと現実的ではないですね。よほど鋭い人なら浮かぶのかもしれませんが、秒読みの中でこの手を見つけられなかったのは、実戦的にはむしろ良かったかなと思います。

図で4五にいる桂はもともと2一にいた囲いの駒が相手の左銀を取った名残なのですが、こういうふうに囲いの桂だけが跳ねて、攻めの桂が(8一に)取り残される展開は駒得でもだいたい大変です。
もちろんそれは百も承知の上で仕掛けたわけですが、実際に飛車得でも大変という展開になり、やはりセオリーというのは正しいのだなと身をもって理解しました。

ミスもいろいろとあり、満足できる内容ではなかったですが久々の白星でホッとしました。
また本局は新四段の対局ということで観戦記もつけていただきました。
掲載はいま行われている五番勝負の終了後なのでかなり先になるかと思いますが、ぜひご覧ください。

趣味と言葉の話

こないだの話(BMAB)の続きなんですが、僕自身は、バックギャモンというゲームを趣味としていて、基本的には競技として、つまり大会に参加することを主として取り組んでいます。
将棋で言えば純然たる「指す将」で、あとはすこしだけ「旅将」という感じです。「観る」とかはあんまりないし「指導を受ける」とかもありません。

ただこれはどちらかと言えばたぶん少数派で、当然ながら将棋を生業としたことと無関係ではないでしょう。
基本的にはもうすこしライトに、取り組んだほうが趣味としては楽しいというか、手軽だと思います。

いっぽうで大会に出るということは、そのこと自体がかなりモチベーションにつながるというのが実感です。逆に自分の実力を試したり、勝ったり負けたりという機会が少ないと、プレイヤーとしてその趣味を長く続けることは難しそうな気もします。
最近ギャモン界でも初級戦や、手軽に参加できるイベントが増えていたり、将棋界でも「級位者大会」のようなものが増えているのは、とても良い傾向だと思います。

大会に出ると、誰もがもうすこし勝ちたいとか、もうすこし強くなりたいと思うのが普通です。実力には違いがあったとしても、その気持ちに変わりはあまりありません。
ただ、そのために何をすれば良いかは、本当に難しいものです。

///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

私のパフォーマンス理論vol.22-言葉について
また為末さんのブログなんですが、自分の足りない部分や劣っている部分を言葉にすることが、その欠点を克服する第一歩ということはよく思います。
自分自身、たとえば将棋や勉強においては、心がけてきたことでもあります。
ギャモンではいままであんまり真剣にはやってこなかったので、今後は(棋譜を残すので)しっかりやって、技術向上につなげたいなと思っています。

これもいろんなレベルがあると思うのですが、たとえば将棋の級位者の方の場合でも、自分自身でこの部分を改善したい、となんとなくでも言葉にすることが第一歩で、それができればその時点で問題は解決しているということもよくあります。
またそこまでいかなくても、たとえばその言葉を口にしてみることで、周りの上級者やあるいは指導者の方から良いアドバイスが得られやすくなるということもありそうです。
なので自分なりに考えて、言葉にしてみて、それを身近な指導者に相談してみる。というのはごく平凡なようでいて、とても大切な上達法なのではないかと思います。
ただあまりに真剣になりすぎても大変なので、趣味の範囲で続けられる程度に、ほどほどにやってみるのが良いと思います。