夏の終わり?

週末の突然の猛暑には驚きました。
東京も相当に暑かったですが北海道で40度近くまで上がるとは。
最近は何が起きても異常気象とは思わず「今後はこういうことも当たり前に起きるのだ」と思うことにしているんですがこれはさすがに・・・。

20年近く前の学生時代、北大に行った友人がいて何度か遊びに行ったのですが北海道の家にはエアコンがないことが多いと聞きました。
これは夏はクーラーは必要なく、冬は暖房では足りずストーブがないと耐えられないからという話でした。
今は分かりませんがもしクーラーがなかったらさすがにきつそうですね。

で、今日は全国的に一転してたぶん前日比で10度近く下がってるようで、感覚的には夏の終わりみたいな感じがします。
実際はここから梅雨が来て、夏がやってくるわけで、なんだか体がびっくりしてしまいそうです。
四季の移ろいが崩れると体調管理も難しくなるし、年齢的なこともあるので気をつけていかねばと思いますね。

今朝は起きたら痛ましい報道を目にして、ブログ書く気分でなくなったのでこれだけで。
被害者の方々のご無事を祈るばかりです。

’人間性’とは

たまたま興味深い記事を見かけて、ちょっと考えたことがあるのでご紹介。
AI時代の人間性復活 スポーツが最後の砦に
冒頭、
人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)が生活の隅々に及ぶ未来の社会において、スポーツはいかなる価値を持つのか。
という問い(自問)は、「スポーツ」に他のものを当てはめても成り立つでしょう。

特に考えさせられたのは最後の部分で
大リーグではデータ重視の「マネー・ボール」に対して「野球がつまらなくなった」と嘆くファンが増えている
というような話はおそらく他の世界でも、珍しいことではない、というかむしろよくあることなのではないかと。

これを将棋界に当てはめて考えると、どうしてもみんながAIに基づいて研究を進めるので、似たような将棋になってしまいがちだし、それを解説する棋士たちもまた、AIの意見や影響からは逃れられない。
という側面が思い浮かぶ。
たとえば羽生先生も近著で「将棋が画一化する」ことへの警鐘や危機感を語っている。本題とはそれるが、最近の羽生先生が意識的に多様な戦型を試している(ように見える)ことは、もちろんそれが目先の勝利につながるという考えもあるかもしれないが、それだけでもないと思う。

幸いにして将棋は現在のところ(画一化の兆しは何度となく訪れているものの)基本的には拡散化(羽生先生の言葉を借りるならば「カオス」)の傾向にあり、「データ重視で将棋がつまらなくなった」とファンに嘆かれるような状況には至っていない。
ただし、難しくはなっている。プロの将棋はもともと難しいものだが、最近はさらに難易度が上がっていると私は感じる。

これも将棋だけが特別ということではなくあくまで一般論として、ある競技のレベルが上がっていくことによって、それだけその競技の魅力が増すとは限らない。
だからと言って、(データの蓄積や分析によって)レベルが上がっていくことからは逃れられないし、ましてそれを拒否すべきではない。ここはあらゆるプロ競技において難しい問題と言える。
これからも競技レベルは上がっていく、つまりさらに難しくなっていくという前提に立った上で、プロはその世界の魅力をどうやって伝えるかという問いを、常に持ち続けていなければいけない。

AIの話に戻って、昨今の将棋界ではよく「AIに負けても人間同士の戦いの魅力が損なわれるわけではない」「車と競争したら勝てないけど人間が全力で走る姿に人間は感動する」などという言説がよく聞かれる。
たしかにその通りだと思うのだが、そこで思考停止しているのはどうなのかなと個人的には思っているし、気がついたら「最近の将棋はつまらなくなった」と言われる世の中が来てしまうかもしれない、という危機感は持っているべきではないかと思っている。
やはりその競技に取り組む(実際にプレイする/観る/伝えるetc.の別を問わず)ことの意義や、その時代に合った方法を、常に考えていなくてはけないと思う。

人間性復活のレジスタンスの拠点にしたい
というなんとも壮大な一言を目にして、そんなことを考えた。

4/24 安用寺六段戦

対局の振り返りです。
今期初対局は、兄弟子の安用寺さんとの対戦でした。順位戦での対戦が多く、兄弟弟子の中では一番たくさん当たっています。

振り駒で後手番になり、相手の先手三間飛車。
からの、▲8八飛と振り戻して急戦を狙う形で、結果的に後手番向かい飛車の古い定跡形に進みました。
定跡と言ってもそんなにたくさん実戦例があるわけではなく、自分の中では悪くないワカレと認識している、という程度のことで実際に指してみると難しい将棋でした。
直後、定跡を抜けた先でこちらにミスが出て、以降は形勢を悲観していたのですがその後も難しかったようで、形勢に揺れに一喜一憂してはいけないと改めて反省しました。

 

図の局面では歩切れが痛くかなり苦しいという認識だったのですが、感想戦ではこちらも自信なかったと言われて、後でこうやって逆から見てみるとたしかにその通りで難しい形勢でした。
僕はここで△1五歩▲同歩△同香と投げやり気味に突撃したのですが、どうせヤケクソなら△1五同角!という手もありました。対局中はこんな手ありえないとすぐ切り捨てたんですが、けっこう有力だった気がします。
また安用寺さんには△3七桂成!という勝負手も指摘されました。これは見えませんでした。

しばらく進んで次の図。

金銀と桂香の交換で駒得なのですが端の関係が大きく苦しい局面です。
とはいえここで平凡に△6八銀なら大変な勝負でした。
実戦は△6三歩▲9一角成と角をそらしてから△6八銀と打ったのがひどい手で、▲8九竜と逃げられて△8八金と打つようでは勝負ははっきりしました。(△8八歩と打つ一歩がない)
角をそらしておかないと自玉が寄せられてしまうという思い込みがあったのですが、いきなりの▲6八同竜△同竜▲1三銀ではむしろ先手玉のほうが寄ってしまいます。
▲2五桂や▲2六香のような手で形勢は自信なしですが本譜よりは難しく、自分から勝負のアヤをなくしてしまうような指し回しはひどかったです。

時間の使い方もいま一つで、いろいろと反省点の多い一局になってしまいました。

竜王戦

竜王戦は間もなく各組ランキング戦がすべて終わるところですがそれに先立ち、今期七番勝負の開催地が発表されました。
第32期竜王戦七番勝負 日程・開催地の発表

第1局のセルリアン東急は3年連続ということで、名人戦の椿山荘同様、恒例になってきました。
一方第2局の仁和寺は、たしか将棋が行われるのは初めてではないかと思います。また第5局の津和野も初めてのはずですが、先日はすぐそばの萩で名人戦が行われたばかりで、なんだかあの地域が急に活気づいてますね。

広島出身(しかも両親は山口県出身)の僕にとって、松陰先生ゆかりのあのあたりはわりと身近な場所なんですが、「萩・津和野」はセットで語られることが多いだけに「萩市は山口県で津和野町は島根県」なのはうっかりしやすい事実です。豆。
ちょっと東京から行くには大変な場所ではあるんですが、チャンスがあれば現地に行ってみたいところです。

ファンの方にとっては観戦の予定が立てやすいので、こうやって早めに発表があるとありがたいという声はよく聞きます。
主催紙の都合もあるのですが可能な範囲で他の棋戦も発表が早まると良いですね。

 

ランキング戦は各組決勝戦が順次行われているところで、一昨日が5組、昨日が2組でした。
竜王戦の決勝というのは自分も経験がありますが本当に大きな勝負で、特に一昨日の5組決勝は兄弟弟子同士のカードでもあったのでお互い期するものがあったことと思います。
内容的にも両者死力を尽くした大熱戦で最後まで形勢のはっきりしない、後から振り返ってもどこで優劣がついたか分からない、素晴らしい将棋でした。

対局予定を見るとこの後は明日(日曜日)が6組、月曜が3組、水曜が1組、金曜が4組。で、間の火曜が1組の5位決定戦、木曜が3位決定戦ということで、来週は毎日1局ずつ竜王戦の大一番が指されるようです。
一斉対局も良さがありますが、こうやって日をばらけさせるのも一考で、この日程が偶然なのかうまく調整したのかはわかりませんが、観る側にとってはありがたい配慮と思います。

では今日はこのへんで。

最終日、タイ記録、プレーオフ

昨日の王位リーグ最終日、注目された羽生ー谷川戦は羽生九段が勝って最多勝タイ記録を達成。
羽生先生がこういう数字的なものに対して「目標としてやってきた」とコメントするのは珍しい気がするので、やはり積み重ねに対する感慨や、先人に対する敬意や目標とする気持ちなどがあったのだなあと思いました。
改めて考えても、信じられないような大記録です。
関係ないけど、自分の当面の目標は300勝です。それだって決して簡単なことではありません。

他に「将棋はルールはずっと変わらないけど、戦術はどんどん変化している」というコメントもとても印象に残りました。おそらく、この事実こそが羽生先生という偉人の知的好奇心を満たす源泉なのだと思います。

無冠になってからの羽生九段は、変な言い方かもしれませんがいままで以上に楽しく将棋を指しておられる気がします。
このことは自分から見ると、ある意味これまでの数々の大偉業以上にうらやましく思うことで、特に最近は毎局違った戦型、違った指し方に挑戦しておられて、もちろん勝負へのこだわりと同時に何かタガが外れたような一面も見せているように感じています。
僕も修行時代、数多く羽生先生の記録を取ったものですが、心底楽しそうに感想戦をする姿を何度も見てきて印象に残っています。

昨日の一斉対局の結果、リーグ戦は紅白ともプレーオフになりました。
全体的に上位が苦戦しているかに見える将棋が多い中、永瀬叡王が徳俵でギリギリ残したのが印象に残りました。
あの先手玉は本当に寄ってなかったのか?見ていてびっくりしました。

誰が挑戦者になっても楽しみ、というファンの声をネット上ではよく目にしていますが、勝ち上がるのは一人だけ。
どういう結果になるのか楽しみですね。