来場御礼

昨日のイベントはおかげさまで大盛況、大成功でした。
ご来場の皆様にはありがとうございました。
聞けば250人の定員がすぐにいっぱいになったそうですね。
若きタイトルホルダーの豊島二冠・高見叡王の人気ぶりを目の当たりにして、むべなるかなと思いました。

そういえば、こうした大勢の棋士が出演するイベントはかなり久々でした。(関わりの深いとちぎ将棋まつりを除いて)
トークショー等の舞台イベントを横目に指導対局をするのは、非常に新鮮な感じで、しかも良いポジションで観戦させていただき(?)、とても役得でした。
もちろん、僕も将棋はちゃんと指しましたよ。
当たった皆様方には、どうもありがとうございました。

最近の若手棋士はそれぞれにファンが(しかも女性ファンが)たくさんいて、みんな仕事も本当にしっかりしていると聞いてはいたけれど、実際に目にして本当にその通りなんだなあと思いました。
またこのイベントは鈴木環那さんが企画しているそうですが、企画も面白いだけでなく司会からお見送りまで本当に素晴らしい気配りで、見ていて気持ち良かったです。
あまり身内をほめ過ぎるのも良くないですが、素直な感想です。

ということで本当に楽しい一日でした。
またこういう機会がありましたらよろしくお願い致します。

今度高見叡王に会ったらあっち向いてホイで勝負を挑もうと思います。

新棋戦

先日の大きなニュースについて。
まったく知らなかったので、とても驚き、嬉しく思いました。

女流新棋戦「ヒューリック杯清麗戦」が誕生
ヒューリック社にはこれまでにも棋聖戦や文部科学大臣杯、またそれ以前から棋士会でのイベントでご協賛をいただいており、本当にありがたいことです。

将棋界がお世話になるようになってから、街を歩いているときはよく「Hulic」のロゴが目に留まるようになりました。
将棋界も以前に比べると多くの企業や自治体から支援をいただけるようになっているので、そういったことをいつも忘れないよう心に留めておきたいと思います。

実は今日、棋士会のクリスマスフェスタにお招きいただいているのですがこちらも、会場はヒューリックホールです。
以前にも一度、大会の指導対局で行ったことがあるのですがとてもきれいで、素晴らしい会場です。

今回の新棋戦はまずリーグ戦というところが画期的で、会長の挨拶にもあったようですが「女流棋士の対局数を増やしたい」という気持ちがあるようです。
対局数が増えることで、技術向上にもつながることでしょう。

女流棋士という職業は若くして(相対的に短い修業期間で)プロという地位を得る半面、対局から得られる報酬はタイトルを取るかそれに近いところまで行かない限りは低いのが現状なので、職業棋士としての意識が育ちにくいという側面はあるように思います。
対局の機会が増えれて実力が向上すれば、おのずと解消される問題と思うので、そのきっかけとして本当に大きなことと思います。

後から見ると、当時は本当にプロになるハードルが低かった、と思えるぐらいに女流棋士の世界がレベルアップすることが必要だし、またポテンシャルはある(ただし時間はかかる)はずです。
兆しもあります。
女流、のびのび躍進 公式戦、過去最高の勝ち数(朝日新聞)

自分が将棋を覚えた三十数年前、棋士の世界はすでに七大タイトルの時代でした。
一方女流棋戦はたしか4つぐらい、人数も20人ぐらいだったのではないかと思います。
これがいまは八大タイトルと七大タイトルになり、人数も増え、世の中の知名度も高まりました。
いま棋士・女流棋士として活動している自分たちには、これをさらに広げていく努力が求められますね。
これからも頑張りましょう。

昨日の中継など

昨日の竜王戦、長くなるのかなと思っていたら、そこから1時間あまりでまさかの昼休前決着。
これには驚きました。
冷静に見ると▲2八歩のところは差がついた感じだったようで、ちょっと見る目がなかったですね。
最終第7局は非常に大きなものが懸かった一番になりました。

本局は観戦記に上村四段が抜擢されていたのも注目で、仲間内でも話題になっていました。
初観戦記がタイトル戦で、しかもこれほど大きなものが懸かった勝負というのはたぶん例のないことと思います。
新年最初と聞いていますが、早期決着をどんなふうに仕上げるのでしょうか。
そういえば、挑戦者の広瀬八段とはたしか奨励会が同期だったはずです。

またフルセットはこれで4棋戦連続ですか。
実力伯仲の時代を反映しているかのよう、ってこれたしか前にも書きましたね。
最終局は20日から下関で、とのこと。

また昨日は順位戦がたくさん行われていた日で、渡辺棋王がA級復帰を決めていました。
順当といえば順当なようにも見えると思いますが最近は格で勝てることは昔に比べると少なくなっているはずなので(あくまで想像ですが)、1期ですぐ、しかも負けなし、年内の復帰決定はさすがという感じがします。

昨日は打ち合わせからの懇親会だったので、残りの対局はこれから目を通す予定です。

NIKKEI STYLEに斎藤王座が登場していました。
将棋棋士・斎藤慎太郎さん 師匠に手紙、両親の勧めで
人柄を感じさせるエピソードがたくさん書かれていて、なんというか、納得してしまいます。
他の記事のラインナップを見ると、こういうところに棋士も普通に入る時代になったのだなあと改めて嬉しく思います。

今日は名人・A級棋士から若手、女流棋士・奨励会員・アマチュアとそろい踏みの一日です。

100

史上空前、100期目のタイトルを懸けた竜王戦第6局は2日目に入りました。
現在57手目▲2八歩まで。後手陣に竜が2枚できていて、比較的早い進行ですが先は長そうです。
激しく駒を取り合って大きく振り合って難しい、というのは最近のトレンドのような気がしていて、「難易度の高い展開が増えている」一つの例ではないかと思います。
形勢はなんとも言えないですがどちらかと言えば先手を持ちたいですかね。

昨日は藤井七段の通算100勝達成が大きなニュースになっていました。
テレビ棋戦の結果を伝えることになってまで、大きく報じられるようなことなのかなという疑問もあるんですが、100という数字はやはり響くものがあるのかもしれません。
そういえばテレビは「100万円」が大好きですよね、ってそれは関係ないか。
気がついたときにはすぐ200勝になってると思いますが、この先も都度大きく報道されるかどうか、将棋ブームがどれだけ続いていくかにもよるでしょう。

藤井聡太七段、最速・最年少・最高勝率で通算100勝を達成!
過去の永世称号者との比較や、本人と先輩方のコメントが出ています。
(※ランキングとは異なるようです)
目を引くのは羽生先生の対局数で、当時はいまのように早指しで複数局指す棋戦(棋聖戦一次予選や朝日杯・ヤマダ杯など)は少なかったはずなので、日数にしたらおそらく藤井君以上で、さぞ大変だったのではないかと思います。

ところですこし話は変わりますがスケートの紀平さん、年齢を知っておや、と思い調べてみると、藤井君とは生年月日がわずか2日違いのようで。
そしてN高校在学中とのこと。ちなみに囲碁界ではやはりN高の方が女流棋聖のタイトルを持っているそうです。
だからどうした、というわけではないんですが、目に留まったので書き残しておきたいと思いました。

それと昨日は、女流タイトル戦誕生の大きなニュースがありました。
将棋界的にはこちらのほうが大きなニュースです。(たぶん)
これについてはまた後日書きたいと思います。

今日はA級、B1、C2の3クラスに他の棋戦もあって非常に豪華な一日。

自分は地元の中学校と、書籍の打ち合わせなど。

超越の棋士 羽生善治との対話

著者の高川さんとは自分も以前に一度、ゆっくり話をさせていただいたことがあります。
刊行されてわりとすぐに献本いただいたのですが(どうもありがとうございました)、先月の終わりぐらいにようやく読み終わりました。
今年はさまざまな将棋系の出版がありましたが本書と「師弟」は双璧でしょうね。
読み応えがありすぎました。

始まってわりとすぐ「おそらく、10年後くらいの人たちが一番ソフトの恩恵を受けて、うまく使えるようになると思います。だから、いまの人たちは実験台なんです」と印象深いフレーズが出てきます。
こういう本質を突くような短い言葉が、羽生さんの対談本における特徴の一つだと思います。

「以前よりも難易度の高い局面を迎えることが増えている」というフレーズも印象に残りました。
これは年齢的なことを問われたときのやり取りなんですが、フラットな気持ちで、しかし向上心を持ち続けている羽生さんの長所をよく表していると感じます。

最近自分がなるほどと思っていつも心に留めているのはこれですね。
「自分が思いついたものは、他の誰かも思いついているものなんです。これは経験則として、ほぼ間違いない」
20年前の将棋界に実際にそうだったかはさておき、いまの時代の特徴をよくとらえていると思います。

また冒頭では、将棋界は規制のない世界だから(たとえばここではドローンを飛ばしてはいけない、みたいなことがない)際限なく進化のスピードが速くなっていて止められない、というようなことも述べています。
技術革新に対する信頼と、そういう外的な環境の変化を決して理由にはしないという意思を感じます。

著者が「将棋を指す意味」という根源的な問いを繰り返し、都度禅問答のようなやり取りが行われる部分は本書の見どころというか、テーマの一つになっています。
ただ、そこから印象に残るようなフレーズを引き出すことは、難しかったのでしょう。そりゃそうだろうなと思います。
でも、明日もしタイトル100期という偉業が達成されたら、この人はまた同じ質問をしに行くんだろうな、という期待感もあります。

棋士としていま一番心配しているのは「画一化」の懸念で、これについても羽生さんは実に本質をとらえたことを述べています。
すなわち、
「AIが6:4でこちらが良さそう、と示すと、人間は6:4に割れるのではなくて、9:1とか極端な分かれ方をする。この傾向が続くと多様性が失われる」
というものです。

これはあくまで将棋の話なんですが、どちらかというとそれ以外の物事を想像してしまいました。
このようなことは、けっこういろんな分野で起きているような気がします。

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竜王戦は第4局まで純然たる角換わりシリーズで、他の対局でも羽生竜王はこの半年ほど、明らかに角換わりの採用率が突出していました。
オールラウンドプレイヤーで知られる羽生さんがここまで一つの戦法を続けたことは、この10年ぐらいでは記憶にありません。

しかし番勝負がいよいよ佳境に入ったこないだの第5局では矢倉、そして今日からの第6局では横歩取りを持ってきました。
これは多様性の重視ではなく勝負を考えての選択と思いますが、この1局がきっかけで新たな流行が作られることは、あるかもしれません。

今日明日は大いに注目したいと思います。