勝ち

昨日の対局は、先週に引き続き先手中飛車。
採用が続いているのはたまたまでもあるのですが、頼れる相棒になりつつあります。

そして本局もまた、自分にとっては経験のない形に。
類型を意識しながら指してみたもののワカレはすこし指しにくくなり、工夫が必要と感じました。

中盤でさばきに転じたところで急に景色が良くなり、その後粘られるも無事逃げきって勝ち。
優勢になってからは一手だけ、気の緩んだ手があったのですがそれを除けばうまく指せたと思うので、全体的には満足のいく内容になりました。

昨日はB1とC2の順位戦があるなど対局の多い日で、大広間は大先輩が多く重厚な空気の中で一日を過ごしました。
視界に70代の桐山先生の姿が見える位置取りで、他に南先生や森下先生・中田先生など50を過ぎた先輩方も含めて、凛として崩れない対局姿勢に感銘を受けました。
持ち時間いっぱいまで頑張っておられて、自分も10年後、20年後まで頑張らないといけないなと改めて思いました。

来週の対局も頑張ります。

 

帰宅後は王座戦第2局を観戦。
斎藤七段、夕休前の△4五銀▲同歩△2五桂という手順はお見事でした。
かっこいいだけでなく、ちょっと気がつきにくい組み立てだったのではないかと。
中村王座としては、▲同飛と取るしかなかったのではないかなあ。

ああいう場面で外野の棋士は「負けても取る一手」「死んでも取るしかない」とか言うもんですが、実際には死ぬわけじゃないとはいえ、タイトル懸かってますからね。
観ていて簡単には判断できないなと思った場面でした。

今日はとある仕事の打ち合わせなど。
最近ありがたいことに、将棋連盟以外から仕事の依頼をいただくことが続いていて、ちょっと忙しくなっています。
あまり無理をせず、自分にできることを丁寧にこなしていきたいと思います。

今日対局

王位戦で高野六段と。

今期の王位戦7番勝負は両者相譲らず、3-3のフルセットで最終局が注目されるところです。
こちらは来期予選の1回戦。

このところ将棋の内容がすこし良くなってきた実感があるので、この調子で、良い流れを持続できるようにと思っています。

今月はこのあと王座戦でも来期予選の1回戦がついています。
今日はその5番勝負の第2局で、こちらも注目ですね。

では、今日も一生懸命頑張ります。

監修本のまえがき(作戦編)

昨日に続いて、「はじめに」の文章を転載します。

勝つための将棋 作戦編(理論社)

また本書について書いて下さっている記事も、合わせてご紹介します。

本の紹介(長原こども将棋教室)
ソフト開発に書籍出版。最強頭脳集団・東京大学の将棋との関わり(Arai Koh’s Shogi Life)

ご紹介いただきどうもありがとうございます。

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作戦編に進んだ皆さんは、将棋のルールやマナーは、すでに入門編で十分マスターしていることと思います。
この本では「戦法」や「囲い」など、将棋特有の名前がついたものがたくさん登場します。また「手筋」や「格言」などと呼ばれる、戦いを有利に進めるためのテクニックやセオリーも出てきます。初めて見ると少し難しいかもしれませんが、一つずつ覚えていきましょう。
戦法や囲いはたくさん紹介されていますが、そのすべての形と名前を覚えなくても、将棋を指すことはできます。特に最初のうちは、何か一つだけ、好きな戦法と囲いを見つけて、それを集中的に使ってみるのが良いと思います。どの戦法でも大丈夫です。ただし、将棋は必ず決まった答えがある学校のテストとは違って、相手がどう来るかは分からないゲームです。毎回自分なりに工夫して指すことで、考える力が身に付いてきます。
手筋や格言は、いろいろな場面で応用できるものです。本で読んだあの形に似ているな、と思い出せたらそのときはチャンス。本で読んで勉強したことを実際の対戦で試してみることで、どんどん強くなれると思います。

私は4歳で将棋を覚えてからもう30年以上も指し続けていますが、見たこともないようなすごい一手を見て感動することが、いまでもよくあります。次の対局のために勉強していると、いつも新たな発見があります。本当に奥深い世界だなあと心の底から思います。そこが将棋の一番の魅力だと感じています。
皆さんはいま、将棋の世界の入り口に立ったところです。このほんを一冊読み終わる頃には、たくさんの新しい発見があると思いますし、その中にはきっと、「なるほど」「すごい」「かっこいい」と感じるところがあるはずです。そのときに、よし自分でもやってみよう!と思うことが大切です。その気持ちを忘れずに、次の対戦に向かいましょう。
いろいろな相手とたくさん対戦して、楽しく上達していきましょう。

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上達のきっかけや学習の過程は人それぞれですが、中でも「憧れ」や「模倣」は欠かせないものではないかと思います。
本書がその一助となることを願っています。

 

 

監修本のまえがき(入門編)

昨日ご紹介した本の「はじめに」(監修者の言葉)に書いた文章を、出版社の許可を得て、転載します。

お読みいただいて興味を持たれた方は、ご注文いただければ幸いです。
今後学校の図書館などにも、置いていただける予定とのことでした。

勝つための将棋 入門編(理論社)

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いま、将棋が大ブームです。

最年少棋士・藤井聡太さんの大活躍や、羽生善治さんの国民栄誉賞受賞などで、「プロ棋士」の存在に注目が集まっているのは、同じ棋士として本当にうれしく思っています。
将棋は考える力や、「集中力」「決断力」などを養うことができるゲームです。
また、自分自身が集中して考えて、決断するだけではなく、必ず相手のこともよく見ていないと勝てません。「洞察力」を自然に養えるのが将棋の素晴らしいところだと思います。
そのほかにも論理的な思考力や判断力、先を見通す力など、たくさんの能力が身に付くと言われています。

私はプロ棋士になる前、奨励会三段のときに東京大学に進学しました。大学受験のときにはまず「合格のためには〇点取らないといけないな」とか「今週はこの科目を勉強して、来週は・・」といった感じで目標やスケジュールを考えました。問題を解くときには「こういう手順で解いていこう」というような筋道を立てた考え方や「たぶんこの部分が特に大事だろうな」と出題の意図を洞察する力が役に立ちました。いずれも、将棋を通じて身に付けてきた能力が生かされたと思っています。

もうひとつ、将棋で大事なことが、礼儀作法です。
将棋には「3つのあいさつ」があると言われます。「おねがいします」「まけました」「ありがとうございました」の3つです。対局を始めるときにあいさつ、終わったときにもあいさつ、これを忘れないようにしましょう。最初は慣れないかもしれませんが、毎回やっているうちに、自然と身に付いてきます。
将棋の強い人ほど、あいさつもきちんとしているものです。将棋で良い礼儀作法が身に付けば、毎日の生活習慣にも良い影響があることでしょう。

私も最初は、一冊の入門書がスタートでした。みなさんもこの本で正しいルールとマナーを学んで、家族や友だちと楽しく将棋を指してみましょう。
将棋を通じて、みなさんにたくさんの素晴らしい学びと出会いがあることを願っています。

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「洞察」という言葉をよく使うようになったのは、以前ある先輩に将棋の指導法について教わったことがきっかけでした。
将棋を通じて身に付くいろいろな能力については、今後もいろいろな形で話したり、発信していきたいと思っています。

入門書の監修など

このたび東大将棋部の後輩たちが、入門書を出す運びとなり、監修を務めました。

勝つための将棋 入門編
同 作戦編(理論社)

今年のはじめ頃に話があってから、「進行中の仕事」ということでブログにもそれとなく書いたりしてきたのですが、無事刊行の運びとなって大変嬉しく思っています。
大変な将棋ブームで多くの業界・企業が将棋に注目しているおかげで、こうしたいままで将棋界とお付き合いのない方々とのお仕事も増えています。
一棋士としてお手伝いできることは、これからもできる限りのことをしていきたいと思います。

最近周りを見ていてよく思うのは「将棋漫画」のように将棋をモデル・モチーフetc.にした書籍・雑誌・記事・番組・映像etc.がとても多くなっているということ。
そしてプロ棋士がその「監修」を務めている、というお知らせもよく目にします。
それだけ棋士の活躍の場が広がっている、ということにもなりますし、きちんと取り上げたいと思っていただいているということでもあるので、本当に喜ばしいことと思いますね。

さてその東大将棋部、昨日の富士通杯は劇的な展開で、惜しくも優勝を逃したようで。
学生棋界の層が最近また厚くなっているようで、秋の団体戦や年末の王座戦も、熱い戦いになりそうです。
また頑張ってください。

 

霧島酒造杯女流王将戦三番勝負 生中継のお知らせ
対局日のリリースだったので斜め読みしていたのですが、持ち時間が3時間になってしかも生放送なのですね。
突然のことで驚きました。

60年以上も続くNHK杯に代表されるように、テレビ将棋は早指し、というのがある意味で「常識」だったので画期的なことかもしれません。
反響に注目したいと思います。