天才を育てる教育法?

最近、テレビや新聞、雑誌やネット、どこを見ても藤井四段の話題を目にするわけですが。
とりわけ幼少期の教育法には、注目が集まっている印象です。
自分自身も興味のある話題、ということもあるかもしれません。
いくつかキーワードも出てきているような状況ですが、世間の意見や価値観はさておき、自分なりに思うところを少々。

将棋を誰から習って、どうやって強くなるかというのはもちろん一人ひとり違います。
また将棋を習わせたいと思う親御さんにも、いろんな方がいると思います。
ただそのいろんなパターンがある中で、親がそれなりに指せて、熱心に教え込んで最初はやってくれたものの、途中でやめてしまった。
という例がけっこう多いという体感を、ずっと前から持っています。
これを解消する方法はないものかと、このところよく考えています。

個人的な意見としては、賢い子どもにと考えたときに、親が将棋のルールを教えて一緒に遊ぶ、というのはかなり良い手だと思っています。
これはまず将棋そのものの良さがひとつ。
そしてルールを教えることを初手から他人任せにするより、まずは一緒にやってあげる、あるいは一緒に覚えるという行動は、子どもに良い影響を与えるような気がします。

いっぽうでその後も何かと教え続けるというのは、あまり筋が良くないような気がしています。
最近同世代で5~6歳の子どもを持つお父さん・お母さんと話す機会が立て続けにあって、そのときに「親を相手に対戦していると、つい甘えが出るのでは」と全く同じことを言われて、なるほどと思いました。
この点、将棋は年齢の近いライバルや、最近だとネット上にも相手に事欠かないという点で、他のボードゲームと比較しても優位性がありそうです。

逆に、親に教わると反発してしまうとか、他にもいろいろと理由はあるのですが、総論としては「一緒にルールを学んで(教えて)、そのあとは見守る」というような流れになれば一番いいなと思っています。
僕自身のことを振り返ってみても、将棋を(他のことも)やらされたことはありませんでした。
奨励会を受けるときも、中学や大学受験のときも、すべて自分で決めてきた気がします。
自分がやろうと思ったことを、やりたいようにやらせてもらって、その結果こうなりました。

これは自分の価値観や人生観にも関連しますが、自由が何よりも大切で、「自主性を尊重」とかよく言われるのはまったくその通りだと思っています。
良い学校に入る、とかも無理に行かせようとすると勉強しないのに、素知らぬ顔だと案外急に頑張りだしたりするものではないでしょうか。

また将棋は勝つためには自分の力で「なんとかしようと」する、という側面があって、最近気づいたのですがこれは英語の「manage」という概念に近いのではないでしょうか。
それは、変化の激しい現代社会を生きる我々に、とても大切なスキルではないかと、そんなことを考えています。

「将棋ファン」の話

将棋界は、プロとファンの距離が近い世界とよく言われます。
たしかに、人数はかなり少ないのに、知名度はそれなりにあって、すぐ(物理的な意味でも、金銭的な意味でも)会いに行けるプロの世界というのは、珍しいかもしれません。
野球選手にキャッチボールしてもらおうと思ったら、ハードルはかなり高いですからね。

プロ棋士が、こういう記事を書くのはおかしいのかも?とも思いつつ。
ファンから見てプロが近いということは、その逆もまた然り。とも思います。
最近の盛り上がりを中から眺めていて、将棋指しより将棋ファンになりたいと思うこともたまにあります。
そういうわけにはもちろんいかないので、すぐ自分で否定しますけどね。

 

ということで将棋ファンの話。
長い前フリでしたが昨日、雨続さんのラジオ解説を聞きました。
その記事がこちら
これで内容がよくまとまっていると思いますが、熱心な方は探して聞いてみましょう。(7/21までのようです)

「〇〇将」という言葉が聞かれるようになったのは、いつの頃からなんですかね。
〇の中身はいろいろ当てはめられそうで、こういうのを考えるのはけっこう好きです。
自分のことを考えてみると、まあ一応プロの将棋指しですから「指す将」なのは当たり前として、でもそれより上位にきそうなのが「読む将」と、あと「語る将」かなと思います。
「観る将」は自分の場合は棋譜中心だし、何より勉強のためだからこれはちょっと違うかもしれません。

昔から、何事も実践より理論が得意なタイプで、うんちくをたれるのが好きでした。
いまでも将棋の歴史だったりマメ知識だったり、あるいは盤上の話題でも戦法の変遷や由来やその背景などを、解説するのはけっこう得意だと思います。
将棋関係の本は毎年かなりの数、買っています。たぶん棋士の中でもかなり上位でしょう。
書くことも語ることと同じぐらい好きですが、どちらかと言うと得意なのは話すことのようです。
これは自分でもやや意外で、最近ようやく気がつきました。

いろんな属性(?)の方がいるということが、その世界を豊かにすると思います。
最近の言葉で言えば、ダイバーシティーです。
自分なりの、いろんな楽しみ方を見つけてほしいですね。
それが許される世界なのはもちろんのこと、どの入り口から入っても、いくらでも深く潜っていけるだけの奥行きがあるのが、将棋の世界の特長だと思います。
「沼」という表現はなかなか言いえて妙と思いました。

 

さて「将棋が好き」は同じですがプロとファンの一番の違いは、やはりプロはその世界に責任を持たないといけないという点かなと思っています。
イケメンでもなければそんなに強くもない僕ですが、自分にしかできない役割もきっとあるし、たとえば対局中の手つきだとか、立ち居振る舞いはきちんとしてなきゃなと改めて思いました。

ファンは、自由で、無責任で、それこそどんな楽しみ方をしても良いと思います。
(指すときは相手がいるので別ですが、一人で楽しむ分には、の意です)
そうすることでこそ将棋の世界がいっそう広がりを見せるし、その方の人生も豊かになると思うので。

ということで、今日は「ファン」というキーワードを軸に、すこし語ってみました。
それでは日曜日のひととき、NHK杯でお楽しみください。

本人がこう書いていて、これはかなり期待大ですよ。

それと日曜日ですが竜王戦決勝トーナメントも行われます。
今日も将棋充ですね。

将棋世界8月号と、振り飛車の話

増刷とのことで、すこし前に話題になってましたね。
昨日は「フジイノミクス」というタイトルでブログを書きましたがこれもその一環でしょう。
2か月連続の表紙起用が、大成功でしたね。来月はどうなりますか。
以前の将棋世界では、1年分集めてつなげると、扉の部分にトップ棋士の写真が現れる、という作りになっていたこともあったと記憶しています。
もしかしたら今後またあるかも?

僕はこないだの大阪遠征のときに読みました。
まず目を引いたのが菅井七段のインタビュー。
いろいろとかっこいいです。

今後もいろいろな戦法を指すつもりですけど、最近は飛車を振ることが多く、王位挑戦に関しては振り飛車のお蔭かなと思います。自分が強くて勝ったというよりは、振り飛車という戦法のよいところをうまく出せたような気がしています

自分がいろいろな形を指して思ったのは『この戦型をやっているから勝てない』という事実は存在しないということです

プロ棋士の中でも、振り飛車党は特に個性を感じさせる棋士が多く、菅井七段もその代表的な一人です。
今回のインタビューには、昔の棋譜からも勉強している様子がうかがえ、先日の王位戦第1局のときに、「大山先生的というか、昭和の香りのする力強い指し回しでした」と書いたのはやはり間違いではなかったのだなと思いました。

実は僕自身も最近は振り飛車を指すことが多くて、まだ良い結果は残せていないのですがそれは振り飛車のせいではないという実感がたしかにあります。
コンピュータは振り飛車の評価が低いとよく聞くのですが、今後また変わることもあるのではないでしょうか。
どんな将棋であれ、中終盤をしっかりと指すことが大切です。
良いお手本から学んで、もう一度棋力を向上させたいと思っています。

 

他の記事では、やはり目玉は藤井四段に関する大崎さんの新連載でしょう。
幼少期の教育法とかにも、注目が集まっているみたいですが個人的には特別な部分よりも、より普遍的な部分に注目することが大切かなと思います。

あと棋聖戦第1局の記事では、僕のブログ記事にも触れられています。
この将棋はその後、いまのところ公式戦には出現していませんがいずれまた登場することもあり、そのときにまた参考にされることと思います。

 

昨日のモバイル中継、羽生ー村山(竜王戦)と斎藤ー青嶋(王座戦)はいずれもすごい終盤戦でした。
最後の場面は僕もリアルタイムで観ていて、手に汗握りました。
まだの方はぜひ、ご覧ください。

後者の王座戦は青嶋五段の先手四間飛車で、相穴熊戦でした。
ここにも個性ある振り飛車の使い手が一人。
最近の将棋界は個性と実力を兼ね備えた若者が多く、本当に面白いです。

最後に再び将棋世界の記事から引用して今日の結びにします。
(「公式棋戦の動き」棋王戦より」)

大山、升田時代のA級順位戦の棋譜を並べると、同じクラスとはいえ、棋士間に力の差があることがよくわかる。皆が同じような力を持つ現代とは大きな違いだ。社会とインフラの発達で情報が平等に行き渡るようになり、勉強法も向上し、洗練された。その分、競争は激しく、なかなか一人勝ちが難しい状況である。関西若手棋士が続々とタイトル戦初挑戦を決めているが、逆に言えば挑戦権を続けて獲得するのが難しいということだ。

 

フジイノミクス?

一昨日出演させていただいた「ワイドスクランブル」(テレ朝)で振られた話の中に、興味深いことがいろいろとありました。
表題の単語は、他のところでも目にしたことがあるので、ちょっとした流行ですかね。

どう呼ぶはさておき、「経済効果」に注目するのは大事なことだと思います。
関連グッズが完売、新刊も予約殺到、等ももちろんありがたいことですが、個人的に一番大きいと思うのは、やはり「将棋を習う子ども、習わせたい親」が増えているということ。
10年、20年先の未来につながる話なので。これは何物にも代えがたい財産です。

いっぽう番組でも発言した通り、将棋教室はどこも満員御礼という話も耳にしています。
いつもの生徒さんを見つつ、新規入会の子にルール等から教えるというのは先生のほうもなかなか大変なので、うまくルールを家庭で覚えてもらえる仕組みが作れないものか、というのも以前から考えているところです。

とりあえず良い入門書と安価な将棋セット(盤駒)を購入する家庭が増える、という流れになれば極めて普及効果が高いと思うので、言うは易し、ですがぜひ業界全体としてそういう方向性の施策をと願っています。
自分自身も、これからもそう発信していきたいと思います。
ちなみに将棋の駒は、片付けるときにきちんと数えて箱に入れることが大切です。
そうすればいつまでも使えます。

↑こんな提言もいただきました。
これまた経済効果だけではなく、普及の観点からもとても重要で、僕自身も以前から考えていることでもあります。

番組では例として朝日杯の準決勝・決勝の話をしました。
無料だとJT杯や、社会科見学で朝の数分間だけ対局室を見学してもらうなど、他にも例はいくつかあります。
先日まで行われていた棋聖戦などでは、タイトル戦の見学ツアーの取り組みもあります。

ただ「業界全体の仕組みとして」そのようにはなっていません。
このあたりのことは、相撲界の仕組み等にもっと学ぶべきと以前から思っています。
また一緒に出演しておられたコメンテーターの方からは、パブリックビューイングの提案もいただきました。
この機会にできることから、と新常務会にはいろいろと期待しています。

この1か月ほどでたぶん10回ぐらい地上波に出させていただき、ずいぶんといろいろな話をしました。
(本当は、たまには普通の将棋番組の解説もしたいんですが)
テレビのスタッフの方々は将棋を知らない方も多いと思うのですが、毎回いろいろな切り口で、とても工夫して番組を作っていただいていて、本当にありがたいことと感謝しています。

自分自身も、話すのにもだいぶ慣れてきました。
まだまだ話していない、将棋界の良い点や、今回の話のような前向きな目標も、たくさんあるので、これからも機会があればと思っています。

今日はVS(1対1の練習将棋)からの、ちょっとした打ち合わせが1件。

7/11 千田六段戦

一昨日の将棋について。

この局面に至るまで、自分の感覚では、お互い特に不自然な手はなし。

この▲5五歩は、放置すると▲7五歩(~▲6六歩)の銀挟みが狙い。
それを防ぐには本譜の△5四歩のほかには、△7四銀と引き上げるしかない。

(1)本譜の△5四歩は悪手で、▲6六銀とぶつけられて早くも不利。
以下△同銀▲同角の局面は、▲2四歩(△同歩▲2三銀)、▲5四歩、▲4一銀、と3つの狙いがあってまったく収拾がつきません。うっかりしていました。
代えて▲6六歩△7四銀▲5四歩△4三金のような感じで、一局の将棋と思っていました。
この順だと、▲6六歩で角道が止まっているので、しばらくは駒組みが続きそうです。

(2)よって代案はこの局面で△7四銀ということになりますが、その局面はやや作戦負けと思います。
正しくそう指していれば、先は長いので、日の高いうちに負けるということはなかったと思いますが。

千田君の序盤は人間には見慣れない指し方も多いですが、本局に関しては非常に自然で、かつ当然ながら行き届いているなと思いました。

 

ところで、弟弟子との順位戦はこれで3局目なのですが、その3回とも2回戦、7月上旬、場所は大阪でした。
偶然の一致なのか、起きやすいのかよく分からないのですが、この日は兄弟弟子同士のカードが5つもあったので、まったくの偶然というわけでもなさそうです。
兄弟子の増田さんや安用寺さんとは別のタイミングでも対戦があるので、C1の人数が増えてきた、最近の傾向と感じているのですが、どうなんでしょう。

あと過去に対戦した糸谷君、大石君はいずれもその期に昇級しています。
千田君も相変わらずよく勝っているので、チャンスは大いにありそうです。

順位戦の連敗スタートは棋士生活14年目にして、たぶん初めてのはず。
またこんなに早い時間に負けてしまったのは、数年前に魁秀先生に飛車を逮捕されて以来だったと思います。
厳しい立ち上がりになってしまいましたが、将棋に向き合う時間はきちんと取れているので、来月以降はもっと頑張って巻き返しをはかります。

昨日のA級順位戦はすごい将棋だったと、ネット上でかなり評判になっているのを目にしました。
まだ観ていないのでこれからチェックします。
今日もC2の残り半分14局があります。
名人戦棋譜速報でお楽しみください。

 

それと、ここ数日たくさんのコメントをいただき、ありがとうございます。
返信や、続きもいずれまた時間を作って、書きたいと思っています。

昨日のワイドスクランブルの話もまた明日改めて。