王座戦ほか

昨日は注目の一戦があったので、5限の授業を終えたあと(と書くと学生みたいですね笑)、まっすぐ帰らずに連盟に立ち寄ることにしました。

到着したとき、その深浦ー藤井戦は70手目前後の局面を迎えていました。
直前の63手目は▲9五同歩と手を戻して△6五歩▲8八金で深浦九段が悪くないのではと見ていましたが、感想戦コメントやネット上の(つまりソフトの)見解なども総合すると、大変な局面だったようです。

数手後、74手目の△8六歩が好手で、形勢が藤井七段に傾きました。

たしかにその通りではあるんですがこの局面、多くのプロの第一感はたぶん△8一飛なんですよね。
ただそれは▲6二角成△同玉▲7三金と強襲されて危険なので、もっと安全な手を探すことになります。

他には△5一角や△7二銀などで▲7三成香の狙いを防ぐ手が候補に入ってきて、攻めるなら△7七桂成~△6五桂や△8七と▲同金△8六歩のように先手を取って攻める手が先に見えるところだと思います。
いろいろ継ぎ盤でつついた末に△8六歩が一番良いと気がついたんですが、直前に▲8四角と出てきたところで悠然と△8六歩は、頭が柔らかいの一言だと思いました。

藤井七段がこの手を指したのを見て、ああこれは「魚釣りの歩」だなあ(意味はぐぐってみてください)と思ったのですが実際はそこからもう1時間ぐらい観戦して、自分の力でもはっきり勝てそうな局面まで見届けてから帰りました。
相変わらず手堅いかつ素早い終盤で感心するしかありませんでした。

王座戦もう一局、大阪で行われていた久保ー斎藤戦は、斎藤七段がキレのある終盤を見せて完勝。
詰将棋の力で藤井七段に近いであろう棋士の一人で、次の準決勝も相当に楽しみな一戦です。

もう片方の山が棋王戦五番勝負以来の対戦となる渡辺ー永瀬戦で、渡辺さんが最年長というトーナメント表はたしか昨年も見たような、と思って調べてみたら前期王座戦はベスト8の時点でそうでした。
みんな若いですが中でも藤井君はダントツに若い。注目です。

昨日は他にも棋王戦や順位戦など、豪華な一日でもありました。
順位戦は最後の一局が持将棋になったようで、まだ目を通せていない将棋もあるのでこれから続きを見ようと思います。

学校

昨日は近所にある中学校の将棋部に指導に行ってきました。
いまのところに引っ越してきてちょうど1年になりますが、おそらく同じ学区内なので縁があったと言えそうです。

定期的なお仕事は理事就任に当たっていったんすべて辞めていたので、学校での指導は5年ぶりになるはずです。
昨年までこの中学校には別の指導棋士の方が来られていて、将棋部の活動はもうかなり長く続いているようでした。
これからさらに活発に&強くなってもらえるよう、1年間頑張っていきたいと思っています。

自分が若手棋士の頃に、当時の米長会長の施策で小中学校への講師派遣が始まってから、10年あまりが経ちました。
学校教育への将棋導入推進事業
当時は将棋部のない学校もけっこう多かったように思います。おそらくいまは、当時と比べると盛り返しているのではないでしょうか。

子どもへの普及を将棋連盟にとっての最重要項目と位置付けてきたおかげで、部活や放課後クラブなどで将棋を楽しむ子どもの数は(少子化にも関わらず)ずいぶん増えたと感じています。
彼らが続けてくれていれば初期の子たちはいま、大学生~社会人になっていて、あるいは将棋の楽しさを広め教える側に回ってくれているかもしれません。
そんな良い循環を、今後は期待したいですね。

JT子ども大会でのギネス記録はこうした長年の努力が実ったと言えると思いますし、昨今の藤井ブームの背景にも、地道な活動を続けてきたことが挙げられると思います。
種まきは豊作のときでも不作のときでも関係なく、淡々としかし着実に、行っていくことが大事です。

2日続くのは偶然ですが、実は今日は首都大学東京での講義の担当日です。
中村王座と一緒に務めているもので、こちらは将棋というより法律の専門科目なのですが、これも将棋の奥深さや考え方を知ってもらう活動の一環でもあります。
自分にしかできない、かどうかは分からないけれど自分の役割だとは思うので、これからも頑張っていきたいと思っています。

昨日はヤマダ杯の女流戦が一斉に行われ、ベスト4が出そろいました。
また新女流棋士が一人誕生ですね。
加藤圭女流3級が女流2級に
おめでとうございます。

今日は注目の一戦。
A級棋士深浦康市 VS 最年少七段藤井聡太【棋士データ・成績比較】
最近はHPにこうした展望記事が増えてきて、良い傾向だなと思っています。

では今日はこのあたりで。

名人戦終わる

名人戦第6局は大熱戦の末、佐藤名人が勝って防衛。
この将棋はまさに神経戦で、なかなか本格的な戦いにならない展開でプロ的には見ていて非常に興味深い内容でした。

この時点でお互いに持時間9時間のうち8時間50分以上を消費し、秒読みに入っていました。
名人戦史上に残る、語り継がれるほどのスローペースの一局が誕生したのではないかと思います。

過去の公式戦ではこんなこともあったようですが。

他にも一度も駒が成らないまま終局、とかいろんな珍局がありますが、本局も記録的な一局だったことは間違いないでしょう。

同じく銀杏記者のツイートで知りましたが前期と今期、佐藤名人はまったく同じ星取りで防衛を果たしたのですね。
黒星先行の展開、かつ開幕前の成績がやや落ちているのも共通で、逆境に強いのが強者の証明ということなのかも。

今期の名人戦はとりわけ内容が濃かった印象で、面白いシリーズでした。
本局と似たジリジリした展開になった第3局は特に印象に残っています。
羽生竜王としては第5局の完敗が悔やまれるところだったのではないかと思いました。
現代将棋の要素もふんだんに詰まった将棋が続いたので、名人戦で現れた将棋は今後プロ棋界で流行すると予想しています。

 

地震の日のことなので3日前になりますが、里見さんが棋聖戦で白星を挙げ、次は藤井七段と対戦なんですね。
予選の一局でここまで満天下の注目を集める対局は珍しいでしょう。
藤井君が女流棋士と当たるのは初めてだそうで、今後いつまで予選を指すか分からない(上位に行けば免除になる)ので、かなり貴重な一局になりそうです。

今日の中継はヤマダ杯がズラリ、これはたぶん女流棋士総会との兼ね合いでしょうね。
カロリーナも登場します。

今年の村山杯の案内が出ました。
第17期村山聖杯将棋怪童戦のお知らせ

梅雨真っ盛りという感じの天気が続いていますがそろそろ夏の遠征予定を立てる季節でもあります。
今年も広島で多数のご参加をお待ちしています。

名人戦、順位戦

大きな地震から二晩が過ぎ、ニュースで見る感じでは徐々に復旧してきているようですね。
日本のインフラの強さには驚くばかりですし、過去の大震災の教訓が活かされているのは良かったと思います。

天災を前にすると日々の平穏な暮らしがあることに対する感謝の念をひときわ強くします。
余震はここまで警鐘されていたほどではないようですが、今日は大雨の予報などもあり、引き続きお気をつけください。
東京も今日は朝から雨ですね。

名人戦は昨日・今日で第6局、舞台は天童。
羽生竜王の2手目△6二銀は七冠直前の頃を思い出します。
あの頃はいわば「実験」の色が濃かったと思いますが今回に関してはここ一番に有力と判断しての採用でしょう。

封じ手の局面は一歩得の先手を持ちたい声が多そうですが、自分の感覚では後手を持っても十分やれるように思います。
そう思えること自体、現代将棋の価値観の変容、過去の価値観との訣別を感じますし、自分自身もそういう現代ならではの感覚に、だいぶ目が慣れてきたのかなと思います。
もっとも、自分で指してみないことには分からないし、すこし指しても本当のところはなかなか分からないんですけどね。

昨日のC1順位戦は、東京所属棋士同士のカードに関しては予定通り行われていたので、夜はずっと名人戦棋譜速報で観戦していました。
長期戦・大熱戦が多く、確実に秒読みに入っている、23時半の時点でも過半数の対局が残っていたのには驚きました。
自分も頑張ろう、とそれだけを強く思いました。

地震

既報の通り、地震の影響で今日予定されていた東西交流の対局は延期になりました。
対局延期につきまして

交通網だけでなくライフラインにも大きな影響が出ている状況で、ひとまずの延期は妥当な判断と思います。
朝早い時間帯でしたから、手段を尽くして移動すればおそらく全員が対局場に到着すること自体は可能だったでしょうが、この状況では延期すべきだろうとニュースを見ていて感じていました。

近年特によく思うことですが、やはりまず平穏な暮らしがあって、平和な世の中があって、その上で将棋が生活の片隅にあって、それでこそ対局を観て楽しんでいただけるというものです。
異例の措置には違いないですが非常時に際しこうした判断がなされたことは良かったと思いました。

代替日程はまだ未定で、自分の場合はおそらく来月のどこかで、もう1局大阪遠征が入る形になると思います。
それまでにすこしでも大阪の都市機能そして暮らしが元通りになっていればと願います。

被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
余震等にもどうぞお気をつけください。
もちろん自分自身も、身の周りの備えをしておかないといけませんね。