4/11 勝又六段戦

久々の勝局です。
この将棋も後手番になり、前局に続いて角交換振り飛車に。
ただ本局はこちらから目指したというよりは、駆け引きがあってそうなったという感じです。

振り飛車をよく指すようになって1年経ちましたがさばきの感覚が身についてきているのかどうか。
もちろんプロだから何でも指せるのは当然ですがプロとして通用するレベルなのかどうかが大事です。
結果から見る限りでは、ギリギリのところでしょうか。

図は馬作りの代償に飛車を飛び出した局面。
まあまあなのかなと思っていたのですが、ここで▲3八飛!とぶつける好手を完全に見落としていました。

ただ改めてこの局面を振り返ってみると、その手を見落としていなくても、ちょっとこれでさばけると判断するのは無理がありそうです。
つまりもともとの大局観に問題がありすぎました。

この将棋も完敗かと気落ちしていたのですが、そこから逆転するのですから勝負というのは分からないものです。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という名言を思い出しました。

竜王戦はここ数年ずっと特に不本意な将棋が続いていて、この将棋を順当に負けていれば再び降級の危機だったので、残留は喜ぶべき結果にはほど遠いですがホッとしています。
まずは再度の昇級を目指して、今期は巻き返していきたいです。

ところで、本局のしばらくあとに静岡で解説会のお仕事をいただいた際に、自戦から次の一手の問題をお願いしますと言われたので、本局の終盤の場面を取り上げました。
(↓後手番)

▲7一銀で後手玉はかなり受けにくい状況。
ただしまだ詰めろにはなっていないので、うまく先手玉に迫るか攻防の手がほしいところです。
正解は数日後にコメント欄に書きます。

実戦できちんと読み切ることができて、反省点の多い一局ではありましたが着地は良かったです。

3/22 千葉七段戦

千葉さんとは2月の順位戦で負かされたばかりだったので、続けて負けるわけにはいかないとかなり気合が入りました。

作戦に悩んだ末に、角交換振り飛車を採用。
中盤が一直線の流れになってしまい、すこし苦しいながらもけっこう大変な気もしていたのですが、そこからうまく指されてしまいました。

図は金と桂2枚の交換、ただしこちらは飛車が遊んでいる。玉形の評価はなんとも言えないところ。
という状況で、まず控えの▲8六桂が好タイミング。

これに△8四金打とかでは戦力不足になってしまうので△7三金と受けたのですが、そこで▲7五歩が角筋を通しながらの攻めで好感触。
こちらは△6五歩で、▲7四歩に△6四金のスペースを用意しつつの反撃。
対して▲5八歩!の請求書が「一歩千金」の妙手で、これで負けがはっきりしました。
(※太字が実戦の指し手)

▲5八歩を△同銀不成から清算してしまうと、▲7四歩~▲7三銀の打ち込みが厳しいし、かといって他に適当な手もありません。
実戦は△6六馬と玉砕したものの、以下は順当にやられました。

この将棋は作戦的なことを除けば自分の中でミスや不本意な手はなかったので、あまり悔いはないのですがそうは言っても負けが込んでいるので、なんとかしなくてはと思いました。
2月・3月でNHK予選の白星を(結局決勝で負けたので)無価値と考えるとノーチャンスと逆転負けを繰り返しての5連敗で、惨憺たる年度末になってしまいました。

3/13 佐々木勇六段戦

順位戦最終局、この将棋はだいたい翌日に振り返った通りなんですが追加で図面をひとつだけ。
(画像は名人戦棋譜速報より)

59手目▲5五銀に代えて▲4五歩と打ち、△4八歩成の王手に▲6九玉と逃げる手を感想戦で指摘されました。
たしかにこれは有力でした。つまり相手のほうがより正確に読んでいたということになります。
であれば敗戦もやむを得ません。

自分としては、と金を放置して逃げる手は発想になかったのですが、たしかにこれも藤井システムらしい指し回しです。
もっとも居玉のまま攻め切ろうとするのもまた藤井システムなので、これは何とも言えないところで、↑の解説コメントにも▲4八同金しか言及されていません。

あと実戦の▲5五銀△同歩▲5六銀が見るからに好手風で、実際その局面で「片上よしは間違いない」という解説もあったらしいので、本譜を選んだのも仕方なかったかなと思います。
ただ調べた限りではその後はっきりしたミスや、勝つチャンスはありませんでした。
作戦的にはまずまずうまくいったかと思ったのですが、勝率の高い若手の懐の深さを見せられてしまいました。

順位戦は一局ごとの内容や結果ももちろん大事ですが、年間を通して評価されるものなので負け越しという結果は特に不本意です。
今期は巻き返したいと思っています。

3/8 屋敷九段戦

今日から3日間は3月の敗戦譜です。
この時期は負けが込んで、内容的にも大丈夫なのか悪いのか微妙なところで、モヤモヤした感じで苦しかったです。

振り駒で後手番になり、古来からある角道を止めた三間飛車を採用。
最近、プロ間でもひっそりと注目を集めているようで。
自分としては注目が集まるすこし前から指していたのですが、今後はどうするべきか、考えどころです。

三間飛車には大半の棋士が居飛穴を目指してきますが、▲5八金右の形と▲6六銀~▲5五銀の仕掛けはやや少数派で珍しい展開に。
左桂を活用したところではまずまずと思っていたのですが、この後がさすがトップ棋士という手順でした。

図から▲2四歩△同歩▲3三銀成△同飛にじっと▲6八金寄がうまい呼吸でした。
と言っても、どこがどううまいのか分かりにくいし説明が難しいのですが、とにかくこれで困りました。

そこで△7六銀と行くと▲3三角成△同角に▲7七歩と固める味が良い。
銀取り+角筋遮断の一石二鳥でこの銀を下がると▲3五飛の両取りがあります。

といってこちらは△7六銀よりやりたい手はなく、対する居飛車側は▲7九金~▲7八金と玉を固めたい。
次の手の価値が違いすぎるんですよね。
左桂が銀と替わっているので悪い理屈はないはずなんですが、この周辺の指し方には課題が残りました。

戻って最初の図の△3三桂では、先に△7六銀とすべきだったかもしれません。
難しいところなんですが全然違った展開にはなります。

ただし実戦の▲6八金寄まで進んだ局面は、形勢としてはいい勝負なはずで、負けたのはこの後の指し手で実力差が出てしまった結果と言えます。
良い手はなくとも、大きく形勢を損ねる手を避けることはできたはずなので、その点も反省材料になりました。

2/21(3) 佐々木慎六段戦

NHK杯予選決勝は15時からで、今度は2回戦とのインターバルがやや短く、前の対局が長くなると休む暇もそんなにない感じになります。
相手も決まっていないので、作戦も出たとこ勝負になりやすい印象なんですが、不思議といままでそれなりの将棋が指せてきました。
本局もそんなに悪い内容ではなかったので、そう思うと本当に残念です。

またしても先手番を引き当て、佐々木六段得意の角交換振り飛車に。
こちらは強引に穴熊に囲う作戦。振り返って気づきましたが3局とも穴熊ですね。
それほど多用していないつもりなんですが、無意識のうちに頼ってしまっていたのかもしれません。

図は中盤過ぎ、▲5五歩と合わせて△同歩に▲3五歩と補充した場面。
手の流れが良く、ここでは指せていると思っていました。

しかしここで△4二金!と外堀を埋めたのが生粋の振り飛車党らしい、鍛えの入った一着で難しくなりました。
「金底の歩」が有効であれば、歩の上の金も堅い。当然の理屈です。
感想戦ではこの局面のしばらく前にはっきり良くなるチャンスがあったことを指摘され、それに比べるとここでは難しくなっていたと納得しました。

この局面は竜と金・成桂の二枚替えでほぼ互角、囲いは振り飛車が堅く攻撃力は居飛車がまさっている。
総合的に見ていい勝負に近い局面でしょう。
このあともう一度大きなチャンスが来るのですがそれを見逃してしまい、悔しい敗戦でした。

予選を抜けた佐々木六段は、その後本戦で若手の増田五段を破っていました。
(棋譜はこちら
将棋を観ましたがこれも本局と同じで振り飛車らしい、粘り強い指し回しでした。
ご覧になった方は本局を見ると、4二飛・4一歩・5三金・5二馬という並びを思い出されたのではないかと思います。

コンピュータソフトの影響などもあって居飛車全盛の昨今ですが、こういう粘り強い振り飛車の指し回しを参考にして、自分に取り入れていきたいと思いました。

それにしても、久々の決勝進出で、勝つチャンスも大いにあっただけに、本戦に出られなくて本当に残念です。
1回戦から順に161手、157手、136手で、大変な一日でした。