棋聖戦とか

GW前半を挟んで、棋聖戦の準決勝と決勝(挑戦者決定戦)が続けて行われました。
もしかしたらA級順位戦のプレーオフで日程が詰まったことで、多少影響があったのかもしれませんね。

結果またしても豊島八段が挑戦権獲得。
内容はどちらも苦しい場面があったように見えてそうでもなかった、という感じがしました。
決定的に悪くならないようにうまく持ちこたえるのは難しい技術です。

特に昨日の挑決は、激しく攻められて後手番の苦しさが出た、と思ったんですがどうだったんでしょう。
さすがにこれだけ強くてタイトルに手が届かないのはおかしいという気がするんですが、相手は羽生棋聖ですから、どうなりますか。

その棋聖戦主催紙の産経ニュースで面白い記事を見ました。
園遊会で並んだ羽生と羽生 どっちの「羽生」が珍しい?

この記事によると、「はにゅう」さんのほうが「はぶ」さんよりも多く、どちらもそこまで珍しい名字ではないそうで。へえ。
けっこう珍しいイメージでしたけど、世の中にはもっと珍しいお名前がたくさんあるということなのですね。

名字と言えば、僕は子供の頃から現在に至るまで「片山」として何度も新聞や雑誌等に登場しています。
直接呼ぶ(読む)ときに間違われることは比較的少ないのですが、なぜか文字を書くと誰もが間違えてしまうみたいで、人間の錯覚というのは不思議だなあと実感しますね。

「かたがみ」という名字は合計わずか7画の簡単な2文字で、しかもどちらもよく見かける字なのでこの名字が珍しいというのもこれまた意外な話ではないでしょうか。
親類以外で片上さんにはまだ会ったことがないのですが、大学教授で人狼AIの研究をしておられる同姓同名の方がいるみたいで、いつか機会があればお目にかかってみたいものですね。

すこし前になりますが先週末は叡王戦の第2局があり、高見六段が勝って初タイトルに大きく前進。
この将棋は出張から帰京後にファンの感想などを読んだのですが二転三転、終盤が乱れたのではという声が多かったのが意外でした。
中継で観ているときはそういう印象はなく、どちらが勝つか分からない競り合いに見えましたけどね。

もっとも自分が拾ってるのがマジョリティというわけではないでしょうし、逆に自分の印象がマジョリティということもないし、そしてどれが正しいというものでもないので、時にこういうことはあります。
このブログにもよく観戦した将棋の感想を一言、ふた言書くわけですがそれは正しいこと、とかプロの一般的な見方、を書いているというよりはあくまで自分なりの見方を示しているつもりです。
それが観戦の一助になっていれば幸いです。

では今日はこのあたりで。

順位戦抽選

例年よりやや遅れて、1週間ほど前に今期順位戦の表が届きました。
名人戦・順位戦(連盟HP)
日程は年内まで決まっています。

ただ実は関西遠征がどうなるかがまだ決まっておらず、自分の場合10局中5局(しかも出だし3局連続)が関西所属棋士との対戦になったので、それが決まると本格的に年間のスケジュールが決まる、という感じがしますね。
決定はGW明けになるみたいです。

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ところで、順位戦の抽選ルールで、たぶん多くの棋士が知らないのではないかと思われることがあります。
かつてC1(B2も)には、こんなルールがありました。

「過去2年間同じクラスに在籍していて、2年とも対戦がなかった相手とは対戦する」

たとえば1回戦の宮本五段は、2期前の第75期からC1に参加して、75・76期と自分との対戦がなかったので、今期は対戦する。といった具合です。
ただこのルールを厳格に適用していくと、たとえば自分のように(今期で12期目)長く同じクラスにいる棋士は、抽選が不可能になってしまいます。

自分の手で調べた限りでは、上記のルールに該当する棋士は下記の通り、なんと15名もいました。
島・杉本・安用寺・豊川・高橋・北島・村田・高崎・平藤・小林・宮田・塚田・阪口・宮本・青嶋
(第75期の順位順・敬称略)
手作業なので過不足があるかもしれませんが、いずれにせよ全員と対戦することが不可能なのはお分かりいただけるでしょう。

そこで上記のルールは現在、「ルールとしては」撤廃されているそうです。
順位戦抽選の規約はこちらに記載されています。
対局規定(抄録)

さて、しかし毎年の抽選を見る限りではこのルールが撤廃されているようには見えないので、僕はてっきりこのルールはずっと続いているものだと思っていました。
ではそれはなぜかというと、抽選プログラムがこのルール(?)を「なるべく配慮する」ようにもともと設計されているからだそうです。
たとえば今期の自分の場合、上記に該当しない棋士との対戦が1局だけあるのですが、もちろんルール上はそれで問題なく、なるべく配慮した結果こうなった、ということみたいです。
いつの間にかルールとしてはなくなったけれど、コンピュータは配慮してくれている。というのはなんとも微妙ですしそれがいつからなのかは僕にもよく分からないのですが、一応事情が分かって納得しました。

僕はこの事実をすこし前に山村記者に聞いて初めて知ったのですが、そのとき「片上さんが知らないということは、皆さんご存じないかもしれませんね」と言われました。
たしかに、たぶん知らない人が大半ではないかと僕も思いました。

上記ルールの副作用として、「3期以上在籍の棋士は対戦相手が徐々に固定化」→「参加2期以内の棋士同士の対戦が増える」というのは一部詳しい方の間ではよく知られた事実のようですが、これも知らない棋士が多いと思います。
今期C1でも新参加の棋士同士はほぼもれなく対戦が組まれているようです。
(ただし師弟はB2以下では対戦しないので、杉本ー藤井戦はありません)

他にも3年周期で対戦する相手が出てきたり(自分の場合3期ぶりの対戦は今期は4名)、理屈は分からないのですがやけに2回戦で兄弟弟子と対戦があったり(たぶん3期連続4回目)といった緩やかな法則が生まれています。

以上、おそらくあまり知られていないであろうお話。

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より根本的なことを言えば、現行の仕組み上C1に人数がたまっていく設計になっていて、それが具体化した結果過去のルールが制度疲労を起こしている。
というのが実態ではないかというのが私の考えです。
かつてはC2の人数が膨らんだ時代もありましたが、フリークラス制度(降級だけでなく転出もあることが大きい)によりいまはそこまで多くなっていません。

現在を20年前頃と比較すると人数固定のA・B1は当然のこと、実はB2・C2も人数の増減はそれほどなく、その間C1だけが人数を増やし続けて1.5倍程度に膨らんでいます。
9-1の頭ハネが起きない年のほうが珍しくなくなってきたこと等も、人数の変化によって説明がつきそうです。

だからこうすべきだ、と良い代案が出せるわけではないのですが、自分の知っている範囲のことを書いてみました。
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もちろん一棋士としては、今期も一生懸命指そうと、その一心です。
順位戦は名人戦棋譜速報ですべての棋譜をご覧いただくことができますし、一局でも多く良い将棋を指して、注目してもらえるように頑張ります。

来場御礼

2泊3日のお仕事を終えて昨夜、帰宅しました。
地元喜多方市の方々、武蔵会長はじめ福島県各支部・連合会の皆様方には本当にお世話になりました。
深く感謝申し上げます。

初日は席上プログラム中心、2日目は大会メインで、指導対局はのべ2~30名、ぐるぐる将棋では2日目は50名以上!(おそらく初日も3~40名)と指せたようです。
おかげさまで本当に楽しく過ごさせていただきました。

イベント中ふと会場を見渡すと、けっこう大きなホールが満員御礼になってました。
街の人口規模や、また東京等からの遠征がおそらく少なかったことなども考えると相当な数の来場者と言えそうで、将棋熱の高まりを感じました。
数年前の名人戦がきっかけとのことで、やはり棋士が出かけていくことや、タイトル戦の開催というのは普及に大きな効果があるのだなと実感します。
まだ始まって数年ですので、これからも長く続いていってほしいと願っていますし、またお招きいただければ嬉しく思います。

こちらは主催に加わっていただいている地元福島民報社の記事。
人気女流棋士激突 28、29日に喜多方将棋まつり
しだれ桜女王杯 甲斐女流五段制す 喜多方将棋まつり
多数のご来場誠にありがとうございました。

 

たまには自分でも写真を少々。
スタッフの方々も多く、こうしたこともお願いできて本当にありがたいことでした。
女性スタッフや女の子の参加者がけっこういらしたのも印象に残りました。

指導対局風景。

トークショー。当初は予定になかったのですが飛び入り参加、この後島九段も。

途中で加藤先生に関する質問が出たのですが、翌朝の新聞に叙勲のニュースが出ていて、タイミングにびっくり。
おめでとうございます。
加藤一二三九段が旭日小綬章を受章(連盟HP)

メインイベントの「しだれ桜女王杯」決勝戦。
前日には対局検分もあり、記録・読み上げ、そしてスクリーンも2台完備で万全の体制でした。

ラーメンピザ、ラーメンプリン、そして喜多方ラーメン(2杯目)。
そのほか名物の「こづゆ」や山の幸や湖の幸や。3日間歓迎していただきっぱなしでした。

本当にどうもありがとうございました。

 

それと、土曜日には栃木県連主催で長谷部新四段の祝賀会がありました。
「強い覚悟で一手一手」 長谷部四段、昇段記念の祝賀会で決意(下野新聞)

日程が重なってしまい残念だったのですが、祝電等お送りしました。
地元の期待を一身に背負って、これから頑張ってもらいたいと願っています。

先週の好局など

出張中につき、予約投稿1本入れます。

こないだのエントリと同じく、先週中継された好局をご紹介。
先週は竜王戦の対局が多く、他にも持ち時間の長い将棋が多い1週間でした。

26日木曜日、飯塚ー千葉(竜王)戦は比較的穏やかな矢倉戦。
お互いが矢倉に囲っているというだけで、なんだか珍しい感じがする昨今です。
かつてはこういう将棋を盤に並べて勉強したものですが、いまはどうなんでしょうね。
こういう戦いは必ず1手違いの終盤になるので、上達にはうってつけだと思います。
最後の詰みが鮮やかでした。

24日火曜日は藤井ー大石(棋王)戦の他では、八代ー佐々木(竜王)戦と青嶋ー都成(王座)戦が面白かったです。
前者は角交換振り飛車で、プロ的には中盤のお互いの指し手がとても参考になる将棋でした。
終盤は余して勝つ振り飛車の勝ちパターンで、ああいうのは形勢は居飛車が良くても勝つのは大変なんですよね。

後者は相居飛車の流行形、いわゆる力戦。王座戦の本戦開幕局でもあったようです。
ちょうどハイライト(とそのときは思った)を電車でリアルタイムで観戦していて、読んでみるとなかなか面白くて気がついたら最寄り駅でした。

この局面、▲6六同歩だと△5六馬▲7九玉△7八銀▲同金△同馬▲同玉△6九銀▲同玉△5八成香・・と進んで頭金×2の形になって詰みます。
▲7九玉でも△7八銀▲同金△同桂成▲同玉△6九銀で、やはり同じことになります。
ということで▲同馬△4三金まで必然で、そこで▲3二飛成の詰み筋がない、というのがこの桂捨ての意味。

こうなると大変そうなので先手が(この局面の手前で)回避するのかなと思ったのですがそれも難しかったようで、実際に△4三金まで進んで以下も延々と面白い終盤が続きました。
ただこのあとの青嶋五段の指し回しが的確で、結果としては終始先手が押し切った一局だったと思います。

23日月曜日は稲葉ー広瀬(竜王)戦がすごい終盤でした。
ついこないだも思ったばかりなんですが、両者風前の灯みたいな玉が全然寄らないので驚かされます。
特に77手目▲4九金打~81手目▲5八桂の粘りには感心しました。
終わりそうで終わらないのが将棋というゲームなのですね。
この将棋は形勢自体は難解か揺れていたはずですが、それがいつ、どこでなのか観戦していてよく分からない好局でした。

金曜も好カードあり、土曜は叡王戦第2局でしたがそれらはまた帰京後に。

喜多方将棋まつり

表題のイベントにお招きいただき、昨日から福島県は喜多方市を初めて訪れています。
平成30年度「喜多方将棋まつり」開催について(喜多方市HP)

喜多方ラーメンなどで有名なこの地ですが、恥ずかしながら東京に出てきてからしばらくは、なぜか山形県だと思っていました。
逆に米沢牛などで知られる米沢市は、福島県だと思っていました。
両市がお隣同士で県境ではあるんですけど、正解は逆です。
たしか正しく認識したのは、お仕事でこれまたお隣の会津若松市を訪れたときだった気がします。
あのときは初めて磐越西線に乗ったのですが、今回は郡山から、雄大な磐梯山を横目に見ながらのバス移動でした。

東北はもともと将棋の盛んな地域の印象はありますが、特に近年は島九段が数多くの支部や自治体・地元メディア等を訪問されたことで、こうしたイベント等がいっそう増えています。
市を上げて将棋界を応援して下さるのは本当にありがたいことです。

 

島先生には理事時代をご一緒させていただき個人的にも多々お世話になりましたが、将棋界の応援者を増やしたいという熱意は大変なものがあり、在職中は本当に多くの自治体や企業等を回っておられました。
もちろん毎回必ずモノになるわけではないですし、なかなかできることではないと思って見ていました。

ファンの間ではあまり知られていないみたいですが、たとえばAbemaTVで将棋を取り上げていただけるようになったのも、島先生の大きな功績の一つです。
いまは当時とは状況がすっかり変わって、将棋界が周りからこんなにも注目していただけているので、ある意味こちらから行かなくても次々と話が来るような状況なのではと思います。
現体制の渉外部にも頑張って当時以上に新たな応援者・支援者を増やしていただきたいと願っています。

それと島先生といえば、ちょっと前のことなんですが4/7のモバイル中継「好局振り返り」は必見です。
島研時代の話をはじめ、内容豊富で非常に興味深く読みました。

実は在職中はあまり外のお仕事でご一緒することはなく、そういえば同じ場所で指導対局をしたこともなかったような気がするので、そういう意味でも今回のお仕事はとても楽しみです。

「しだれ桜女王杯」と銘打った大会の解説が最初のお仕事なんですが、ちょっと残念ながら桜は先週の土日が一番の見ごろだったとのこと。
いまは緑とピンクが半々といった感じでした。これはこれで良いものです。
穏やかで過ごしやすい気候に恵まれ、楽しくお仕事できそうな気がします。