本日対局

いつも通り、予約投稿です。

今日は王将戦で大平六段と。
相手は早指しなので、3時間の持ち時間がかなり短く感じてしまうかもしれません。
ペースを崩さないように気をつけて、良い将棋が指せるよう頑張ります。

叡王戦、金井六段がタイトル戦初登場ですか。
正直言って今回の快進撃には驚かされました。
四段昇段のときや順位戦昇級のときを思い出してみても、波に乗せたら誰にも止められない勢いと、天性の勝負強さを感じます。

金井君は僕がまだ学生の頃(彼が、ではない)、一人暮らしの狭いアパートに将棋を指しに来てくれていたこともあるぐらいで、東京所属の後輩の中では、一番付き合いの長い棋士の一人です。
良い個性を多く持っているので、ニコ生というメディアを通じて彼に注目が集まるのは楽しみです。

当然のことながら、タイトル戦に出られる棋士はごく一部、一握り、わずかです。
自分もその一人になりたい。
そういう気持ちを常に持って、対局に臨みたいと思います。

1/9 日浦八段戦

明日対局なのでその前に、こないだの対局を簡単に振り返っておきます。

勝負どころはこの図。
名人戦棋譜速報の画面キャプチャー)

棋譜コメントにもある通り、この△6四角はなかなかに決断を要する一手でした。
こういう一方通行の角は、いままで打たれてびっくりすることはあっても、自分で打つことはあまりなかった気がします。
読んでみて、簡単に悪くなることはなさそうなので、自信はなかったですが思い切ってやってみることにしました。
良い精神状態で指せていたのだろうと思います。

実戦はここから▲4八金△4五歩▲同桂△同桂(1)▲6六歩に△3七桂成!▲同金△4五桂と進んで技あり。
桂馬をタダで成り捨てて、同じ場所にまた桂馬を打つというのはちょっと珍しい筋かもしれません。
何人かの棋士やファンの方からほめられました( ̄ー ̄)

ただ、本当の敗着はそこで▲4八角と受けた手で、代えて▲3八金△5七桂成に▲4五桂のような手なら、技がかかったようでもまだまだ難しいと思っていました。

手順途中の(1)▲6六歩は、△6五桂と打つ手を防いだものですが、代えて(2)▲6六銀と受ける手も有力でした。
これなら5七の地点にも利くので、本譜の攻めはなく、そこで△3五歩▲同歩△3二飛のような感じで揺さぶってどうかと考えていました。
あるいは、受けずに(3)▲3三角と打っておく手も有力でした。

さらに最初の図で、▲6六角と打つ手も警戒していました。
これは△4五歩に▲3三角成と取る手を見せた牽制球のような手で、もしこうやって角を打ち合ったらなかなか珍しい手順だなあと思ったのですが実戦には現れず。
でもいつかこういう筋が出ることもあるかもしれません?

ということでいろいろと見た目よりは手の広い局面だったのですが、ある程度きちんと読めていたようで、満足のいく一局になりました。
明日の対局も、良い内容の将棋が指せるように頑張ります。

温故知新

最近の序盤戦術における流行の変遷を見ていると、「温故知新」という言葉が浮かぶことが多く、このブログでもすでに何度か書いたと思います。
先日読み終えた古い本(末尾に貼ります)の中に、こんな一節があって、目を引きました。

振り飛車と決まれば互いに玉の移動は当然で▲6八玉に私も△6二玉と囲いにつく。つづく▲7八玉も自然な囲い方。ここ玉の移動を保留し▲5八金右から▲5七銀、そして▲7八銀から▲7九玉と左美濃に囲う指し方もあるところ。いずれもいわゆる一局の指し方で優劣は断じ難い。

この▲7八銀~▲7九玉という指し方は、銀冠穴熊が流行するまではほとんどなかったのかと思っていたので(実際2年前ぐらいから急に増えている)、40年以上も前からそういう発想があったというのはよく知りませんでした。
昭和49年の▲加藤ー△熊谷戦なんですが、当時はおそらく位取り全盛の時代だし、時代が下って僕が子どもの頃に勉強した「左美濃」というのは天守閣美濃だったので。

いまのコンピュータ将棋は決して昔の将棋を勉強したわけではなく、自力で考えてこうした戦術にたどりついているはずなのに、こうやってずっと昔にあった発想と重なり合う部分があるというのは面白いです。

あとこの自戦記にはこんな一節があって、これも驚きました。

加藤君(※一二三九段のこと)の対振り飛車作戦にはどちらかといえば早仕掛けの急戦が多くその場合ほとんど自分の方から▲9六歩と端歩を突いていることがない。

ちょっと調べた限りでは、たしかにそういう傾向があるようでした。もちろん僕は知りませんでした。

データベースはおろか、コピー機もないような時代に、よくそんな細かいところまで見ていたものと思います。
当時の棋士は、どうやって相手の研究をしていたのですかね。
いまは便利になりすぎてしまって、昔のことは想像がつきません。

こうやって昔の棋譜や解説を見るのは面白いですね。
勉強というよりは趣味の面が強いのですが、いろいろと発見もあるし、できることなら毎日こうやって過ごしていたいぐらいです。

 

昨日の谷川ー大橋戦、光速流発動に興奮したファンの方も多かったのではないでしょうか。
あまりに鮮やかな詰みで、感動しました。
途中は谷川先生のほうが苦しいように見えたのですが、あの形は詰みありと見切っていたのでしょうね。
読みの正確さとともに、角換わりの経験値を感じる終盤戦で、印象に残りました。

 

【王手報知】引退決めた蛸島女流六段の願い…女流棋界をもう一度一つに
いろいろと思うところ、なしとはいかない記事です。

あれから10年以上が経ち、当時のことをまったく知らない若手女流棋士も多くなりました。
特にここ数年はかなりのペースで女流棋士が増えています。
今後自分たちがどういう世界を作っていくのか、そのために過去を振り返り、未来を考える機会があると、良いのかもしれないなと思いました。

 

叡王戦など

今期から新しくタイトル戦になった叡王戦は、先週まででベスト4が出そろいました。
ついうっかりしてしまいますが第1期はタイトルホルダーがいないので、次の準決勝は実質的な挑戦者決定戦です。

7つのタイトルを6人で分け合う時代にも関わらず、すでにその6人の名前はなく、タイトル経験者も丸山九段ただ一人、という波乱の展開。
新棋戦でニューヒーローが誕生、となるのかどうか。

金井六段・高見五段とは公式戦で何度も対戦している間柄なので、僕自身にとっても、彼らの活躍は良い刺激になります。
この一年は下位からの勝ち上がりが全体を通じて多く、自分にもタイトル戦に出るチャンスはあるんだ、と改めて思った棋士は多いことでしょう。
準決勝は24日と29日。注目しています。

 

先週は順位戦の対局が多かったですが、今週は竜王戦が比較的多いですね。
今日は3組の1回戦で中村王座が登場するなど、3棋戦5局の中継があります。
ランキング戦の1回戦は、ほとんどの棋士にとっては特に大きな勝負です。

その他は朝日杯が1ブロックと、王位戦のリーグ入りの一番が何局か。
週末には王将戦と女流名人戦、どちらも第2局があります。
対局予定を見て、今週も大一番が目白押しといった印象を受けました。

自分は木曜日に対局があります。

 

将棋関連の記事が多い、という話はちょくちょく書いていますが、最近だと日経の「わきあがる将棋熱」という連載が目を引きました。(リンク先は連載の1回目)
力を入れて特集を組んでいただく機会も、増えている気がします。
とてもありがたい限りで、これからも楽しみにしています。

先週は対局こそなかったものの、将棋に触れている時間が比較的多く、自分なりに充実した日々を過ごせた気がします。
この調子で今年一年間、ひとつの結果に一喜一憂することなく、長い目で見てすこしでも良い結果を残せるように、頑張っていきたいと思います。

昇段規定の話

昨日軽く触れた話題について。

しばらく前に「ワイドスクランブル」に生出演したときに、「藤井四段は最短でいつ昇段できるのか」ということを質問されました。
それでとっさに(フリートークに台本はない)「順位戦で昇級すると五段になります」と答えたのですが、放映が終わったあとで、日程的に「朝日杯で優勝したら昇段」のほうが先だったということに気がつきました。

失敗したなーと反省したのですが、その後さらに、順位戦はラス前で昇級が決まる可能性があるので、(たまたま)正解だったか。と再度思い直しました。
以前は順位戦昇級による昇段は、年度区切り(つまり4月1日)だったのですが現在は昇級決定日ということに改められています。

その後昇段規定を見直してみたのですが、藤井四段は
(1)もし2月の順位戦で昇級を決めるとその時点で五段昇段。で、その後もし朝日杯で優勝したら六段昇段。
(2)順位戦昇級か朝日杯優勝の、いずれか片方だけを満たした場合はその時点で五段。
(3)2月の順位戦を負け、朝日杯を優勝したらその時点で五段昇段。その後順位戦を昇級すると五段(のまま)。
(4)何もないと四段(のまま)。
ということになると思われます。

ちょっとややこしいですが、(1)と(3)は単なる手順前後で、しかもこの日程の前後は偶然です。
そもそも9回戦で昇級するか10回戦で昇級するかに本質的な違いはないので、ここで差が生じるというのは本来は妙な話なんですよね。
ただ、ともかく現行の規定では、このようになっています。
(※あくまで自分で調べた限りですので、万一間違いがあったらすみません)

 

なぜこのようなことが起きるのか、より本質的な理由を考えてみたところ、おそらく
「○段への昇段規定」
が原則である中に
「段がひとつ上がる規定」
を混在させてしまったからではないか。
というのが自分なりの結論なんですが、どうでしょうか。

ちなみにこのようなケースでより顕著な例は「竜王戦の連続昇級による昇段」で、たとえば今期だと、三枚堂四段が竜王戦で裏街道に回ってから昇級したことで、六段にジャンプアップというケースが生じました。

藤井四段の場合は(1)を満たしたうえでさらに竜王戦で4組に昇級すると、早ければ5月頃には七段に昇段することになります。(竜王戦連続昇級)
現時点でその可能性は低いわけですが、もうすでに何度も信じられないことを起こしているので、もしかしたらあるかもしれません。

昇段規定はある意味では業界の中のことと受け止められがちで(本来はそうではないのだけれど)、これまで世間からあまり大きな注目を集めてきたことは、なかったように思います。
ただ少なくとも、どちらの対局が先につくかによって結果が左右されないほうが、規定として合理的・合目的的だと思いますので、現行の規定は現行として、この点は今後改善されたほうが良いかなと整理してみて(改めて)思いました。

 

あと、規定の変更理由があとから分からないことがときどきあるのですが、たとえば↑に書いた「昇級決定日に即日昇段」という規定に変更された理由を、自分は思い出せません。
たぶんそのときには何か理由があったのだろうと思うのですが。

余談ですがもう10年ぐらい前のこと。
2月の順位戦で、競争相手だった僕が負けたことで戸辺君(現七段)のB2昇級が決まって、抜け番だった彼は別の対局をしている日付で六段昇段が決まった。というようなレアケースもありました。
たぶん、想定外だったはずで、その後もこういう例は他にないはずです。
規定を新たに作ると、不思議とこういうことが起きるんですよね。

そんなこんなで、規定はなかなか難しいところもあるんですが、おそらく世間から注目される機会でもあると思うので、問題提起しておきます。