叡王戦など

今期から新しくタイトル戦になった叡王戦は、先週まででベスト4が出そろいました。
ついうっかりしてしまいますが第1期はタイトルホルダーがいないので、次の準決勝は実質的な挑戦者決定戦です。

7つのタイトルを6人で分け合う時代にも関わらず、すでにその6人の名前はなく、タイトル経験者も丸山九段ただ一人、という波乱の展開。
新棋戦でニューヒーローが誕生、となるのかどうか。

金井六段・高見五段とは公式戦で何度も対戦している間柄なので、僕自身にとっても、彼らの活躍は良い刺激になります。
この一年は下位からの勝ち上がりが全体を通じて多く、自分にもタイトル戦に出るチャンスはあるんだ、と改めて思った棋士は多いことでしょう。
準決勝は24日と29日。注目しています。

 

先週は順位戦の対局が多かったですが、今週は竜王戦が比較的多いですね。
今日は3組の1回戦で中村王座が登場するなど、3棋戦5局の中継があります。
ランキング戦の1回戦は、ほとんどの棋士にとっては特に大きな勝負です。

その他は朝日杯が1ブロックと、王位戦のリーグ入りの一番が何局か。
週末には王将戦と女流名人戦、どちらも第2局があります。
対局予定を見て、今週も大一番が目白押しといった印象を受けました。

自分は木曜日に対局があります。

 

将棋関連の記事が多い、という話はちょくちょく書いていますが、最近だと日経の「わきあがる将棋熱」という連載が目を引きました。(リンク先は連載の1回目)
力を入れて特集を組んでいただく機会も、増えている気がします。
とてもありがたい限りで、これからも楽しみにしています。

先週は対局こそなかったものの、将棋に触れている時間が比較的多く、自分なりに充実した日々を過ごせた気がします。
この調子で今年一年間、ひとつの結果に一喜一憂することなく、長い目で見てすこしでも良い結果を残せるように、頑張っていきたいと思います。

昇段規定の話

昨日軽く触れた話題について。

しばらく前に「ワイドスクランブル」に生出演したときに、「藤井四段は最短でいつ昇段できるのか」ということを質問されました。
それでとっさに(フリートークに台本はない)「順位戦で昇級すると五段になります」と答えたのですが、放映が終わったあとで、日程的に「朝日杯で優勝したら昇段」のほうが先だったということに気がつきました。

失敗したなーと反省したのですが、その後さらに、順位戦はラス前で昇級が決まる可能性があるので、(たまたま)正解だったか。と再度思い直しました。
以前は順位戦昇級による昇段は、年度区切り(つまり4月1日)だったのですが現在は昇級決定日ということに改められています。

その後昇段規定を見直してみたのですが、藤井四段は
(1)もし2月の順位戦で昇級を決めるとその時点で五段昇段。で、その後もし朝日杯で優勝したら六段昇段。
(2)順位戦昇級か朝日杯優勝の、いずれか片方だけを満たした場合はその時点で五段。
(3)2月の順位戦を負け、朝日杯を優勝したらその時点で五段昇段。その後順位戦を昇級すると五段(のまま)。
(4)何もないと四段(のまま)。
ということになると思われます。

ちょっとややこしいですが、(1)と(3)は単なる手順前後で、しかもこの日程の前後は偶然です。
そもそも9回戦で昇級するか10回戦で昇級するかに本質的な違いはないので、ここで差が生じるというのは本来は妙な話なんですよね。
ただ、ともかく現行の規定では、このようになっています。
(※あくまで自分で調べた限りですので、万一間違いがあったらすみません)

 

なぜこのようなことが起きるのか、より本質的な理由を考えてみたところ、おそらく
「○段への昇段規定」
が原則である中に
「段がひとつ上がる規定」
を混在させてしまったからではないか。
というのが自分なりの結論なんですが、どうでしょうか。

ちなみにこのようなケースでより顕著な例は「竜王戦の連続昇級による昇段」で、たとえば今期だと、三枚堂四段が竜王戦で裏街道に回ってから昇級したことで、六段にジャンプアップというケースが生じました。

藤井四段の場合は(1)を満たしたうえでさらに竜王戦で4組に昇級すると、早ければ5月頃には七段に昇段することになります。(竜王戦連続昇級)
現時点でその可能性は低いわけですが、もうすでに何度も信じられないことを起こしているので、もしかしたらあるかもしれません。

昇段規定はある意味では業界の中のことと受け止められがちで(本来はそうではないのだけれど)、これまで世間からあまり大きな注目を集めてきたことは、なかったように思います。
ただ少なくとも、どちらの対局が先につくかによって結果が左右されないほうが、規定として合理的・合目的的だと思いますので、現行の規定は現行として、この点は今後改善されたほうが良いかなと整理してみて(改めて)思いました。

 

あと、規定の変更理由があとから分からないことがときどきあるのですが、たとえば↑に書いた「昇級決定日に即日昇段」という規定に変更された理由を、自分は思い出せません。
たぶんそのときには何か理由があったのだろうと思うのですが。

余談ですがもう10年ぐらい前のこと。
2月の順位戦で、競争相手だった僕が負けたことで戸辺君(現七段)のB2昇級が決まって、抜け番だった彼は別の対局をしている日付で六段昇段が決まった。というようなレアケースもありました。
たぶん、想定外だったはずで、その後もこういう例は他にないはずです。
規定を新たに作ると、不思議とこういうことが起きるんですよね。

そんなこんなで、規定はなかなか難しいところもあるんですが、おそらく世間から注目される機会でもあると思うので、問題提起しておきます。

連日の観戦

昨日も夕休から連盟で順位戦を観ていました。
一昨日はC2に関しては、比較的早い終局が多かったのですが昨日は一転して熱戦が多く、深夜まですっかり楽しませていただきました。

藤井四段は快勝でしたが、他の上位陣は軒並み大激戦。
中でも今泉ー牧野戦はすごい激闘、まさに「作ったような」変化ばかりで面白い将棋でした。
やはり玉頭戦は将棋の華ですね。
増田ー佐々木戦も終盤いろいろと難しい変化が潜んでいました。

結果としては上位陣がかなり崩れて、ただ一人全勝を守った藤井四段にマジック1が点灯。
なんだか彼の目の前の道だけが開いていくようで、スターはこういうものなのかと思う一方で、そんなに簡単でもないだろうなとも思っています。
少なくとも同じクラスで指していて、中学生に先に上がられて何も感じない若手プロはいないはずなので。
残り2戦の相手はいずれも新鋭、若手強豪なので内容も含めて大いに注目です。

 

自分はもちろん知らないのですが加藤先生が新四段のとき・・はあまりに時代が違いすぎるとして、谷川先生が中学生で順位戦デビューされたときは、どんな空気だったんでしょうね。
過去の記録をひもとくと、そのときは8-2で4人が並んで、谷川新四段は頭ハネを喫しています。
少なくとも、簡単にお通りくださいという空気でなかったようには見えます。
必ずしも世間の期待通りの結果にならないことは、逆にこの世界の良さを示すことでもあります。

ところで、もし藤井四段がこのまま順調に勝ち続けた場合、数ヵ月後には七段になっている可能性もありますね。
昇段に関することもどうやら注目を集め始めているようで、この話はまた明日改めて。

 

それと昨日はカロリーナが、女流名人戦予選で清水女流六段を破るという大金星を挙げました。
夕方、街を歩いているときに弟子からの電話があったわけですが、それがあまりはしゃいだ様子ではなかったので、師匠は大変感心しました。
順位戦の観戦前に棋譜を並べたのですが、内容も堂々たるものでしたよ。
将来彼女の実戦集が出ることがあれば(いつか英語で出てほしい)、必ず収録されるべき記念の譜です。

外国人が永世(クイーン)名人に勝つ、というのはどれほどのインパクトなのか。
個人的には、かなりの大ニュースかなと思ったのですが、どうやらそこまでではなかったようで。
ただ、こうして藤井四段の陰に隠れながら、いろんなニュースが業界内で生まれているのが、いまの将棋界だと思います。

藤井四段が実績を上げるたびに最年少記録であるように、カロリーナもそのたびに外国人初ですから、これからも強くなって良い結果を残してもらいたいです。

昨日の順位戦

昨日は久々に、所用の足で夜から連盟へ観戦に。
対局が多いので全部にくまなく目を通すことはなく、なぜか大阪の対局を中心に観戦。
比較的早めに帰ったあと、残りの対局もすべて観てから寝ました。
楽しい一日でした。

A級は豊島八段が勝って単独トップに。
序盤は失敗したように見えたのですが、そうでもなかったのですかね。
いま感想戦のコメントを読んだ限りでは、終盤はずいぶんぴったり勝ちの変化が多かったようです。
▲5三金~▲4二歩で攻めがうるさいというのは、手順としても形勢判断としても、ちょっと気がつかないなと思いました。

B1は弟弟子の糸谷八段が昇級決定。おめでとう。
まさか阪田流連投で昇級を勝ち取るとは、いやはや。
怪物、A級上陸。だそうです。言いえて妙。

昨日検討していた変化から、久々に図面をふたつ。
斎藤ー糸谷戦、65手目の変化に書いてある△6三玉まで進んで、▲6五歩と打った局面は(先手の攻めが)うるさいと見ていました。

本人の感想では一本▲4五歩△同桂を利かしておいたほうがさらに良い、ということのようで、なるほどです。
あとこの局面に至る手順中、△7三同銀のときに▲同角成でなく▲8五桂(△8四銀と角を取らせて、▲6四飛と金を取る)という手も有力だった気がします。
つまり後手快勝の流れに見えて、実際はそうでもなかったような?

 

もうひとつ、山崎ー橋本戦の▲3八歩(偶然にも同じ65手目)に代えて▲5三馬と攻めた場合の変化図。
△5八銀▲6八玉△4七銀不成(空き王手)▲7七玉と進んで、先手玉は詰まず、後手玉は詰めろ。

他にもあるかもしれませんがここで△4四角!と打つのがカッコイイ手で、後手勝ちになります。
(▲同馬は△5六銀成、▲8七玉は△5三角)

実戦はこういう派手な変化が水面下に眠ったまま、長い戦いになるというのはよくある話。
この将棋は終始後手がリードを保ったままゴールイン、という流れだったように思います。

余談ですがこういう変化図をもとにして、次の一手の問題が出来上がったりすることもあります。
僕も問題を考えるのはけっこう好きで、最近はあまりやってないですが以前はよく作ってました。

 

C2は上位陣の対局は今日に集中しているのですね。
全勝・1敗勢の将棋を中心に、今日も観戦に行こうと思っています。

A級とか

昨日のA級2局は、いずれも相居飛車の不定形から日をまたぐ大熱戦になり、難しい寄せを決めた、深浦九段と広瀬八段の勝ち。
特に深浦九段の△7三金は、これぞ寄せの決め手、華麗な一着でした。

今年に入ってから、どうも後手番が健闘する流れが続いているような気がします。
「先手番の難しい時代」なのでしょうね。

ところで、昨日の結果で、巷で噂されていた「全員5-5になって全員プレーオフ」という目は、なくなりました。
運営の方々は、もしかしたらホッとされているかもしれません。

順位戦で同星で並んだ場合、A級以外は常に順位で決めるのですが、A級の上位(つまり名人挑戦争い)だけはパラマス方式(銀河戦の各ブロックのような形式)による、という決まりがあります。
過去には最高で4人のプレーオフになったことがあったはずです。
(つまり挑戦者を決めるのに3局追加になった)

将棋界の歴史上、このルールによるドラマもあったので(大山先生が登場されたときとか)、もったいない意味もあるのですが現実問題として、本当に5人、6人、それ以上というたくさんのパラマス方式にもしなったら日程が困難ですし、6時間のA級順位戦を月に何局も指すのは、棋士のほうも体力的に厳しいでしょう。
忙しい時代に合わせて、何か変えたほうが良いのでは?と以前から思っていたので、この機会に書いてみます。

ちなみに王将リーグは上位2人によるプレーオフ、王位リーグは細かい規定が定められ、複数人のプレーオフをできるだけ避ける傾向にあります。
挑戦者が決まらないとタイトル戦の準備にも入れませんしね。

 

A級は今日も1局行われ、これが終わるといよいよ、いわゆるラス前と一番長い日を残すのみ、ということになります。
またC2の前半と、B1もあります。

C2を半分に分けたのは記録係不足への対応(長い対局を同時につけすぎない)だったと思うのですが、他の順位戦をこんなに重ねて大丈夫なんでしょうか。
よほど日程が大変なのかもしれません。(1月と2月は稼働日数が少ないので大変なんですよね)
と、つい心配になってしまいます。

ちなみにC2の後半は明日で、これもたぶん何かの事情による変則日程だと思いますが、詳しいことは分かりません。
そもそも曜日で区切るのにも、どこか無理が生じているのかもしれません。
いずれにせよ、状況に合わせて柔軟にやっていくしかないのでしょうね。

今日は順位戦以外にも叡王戦本戦など、中継がたくさんあって非常に豪華な一日です。

では今朝はこのあたりで。