コロナ考

こないだの連ツイ、まとめて下さった方がいました。
わざわざどうもありがとうございました。

このところコロナのニュースを見ない、という人はまずいないと思いますが、自分の場合は専門家の発信を中心に、いろんな記事を読んで勉強しています。
これは、僕自身プロと呼ばれる職業ですので専門家の意見が一致することの意味を肌感覚で理解しているからです。
東京は極めて危険な状況だと思います。
3つの密を避ける、は大前提で、その上で行動をできる限り抑制すべき局面だと思います。

いまの状況は、自分が心がければ良いこと、自分自身でできること、が少ないのが特にやっかいなところで、僕自身の不安や心配の種でもあります。
専門家の試算によると、人の接触を8割減らさないと、ウイルスの拡散を食い止められないそうです。(日経の記事)
僕は騒ぐのを我慢して仕事を半分くらいに抑えれば、なんとかなるのではと思っていたのですが、それでは足りないかもしれないと。それでも、拡散のスピードを遅らせることはできるので、一人ひとりがなるべく行動を抑える努力をすべきことに変わりはないと思います。

この数日、人出はかなり少なくなっている、という報道も目にしています。
もしそうであれば、2週間後くらいにその効果が出るはずです。そうであることを祈っています。
最近よく聞く「非常事態宣言」なるもの、自分自身の考えとしては一刻も早く出してほしいと思いますが、これは自力でできることではありません。
苦境に陥っている業種・業界やそこに携わる方々への保障、こういったことも自分の力ではできないことです。

棋士や将棋関係者も何かできることはないか、と誰もが考えていると思いますが、とにかく今はひたすらじっとしているしかありません。
ただ、オンラインではいろんな動きがあります。良いことだと思います。
将棋界はこの10年くらい、ウェブ方面にはかなり力を注いできました。本格化はもうすこし落ち着いてからになるとは思いますが、その成果を発揮すべき局面がやってきた感じがします。

昨日は栃木の世話役の方からオンラインで支部例会をやります、というので顔を出して(?)すこし多面指しをしました。
こうした取り組みが、今後広がっていけばと思います。

あと、僕は東京に住んでいるのでかなり危機感が強いですが、東京圏・関西圏以外では現状、ごく普通に過ごしていれば大丈夫、というのが僕の理解です。
ただし3つの密を避ける、これはもう日常レベルの、当たり前の大前提になると思います。
東京は人が多いので、当分はいまの状況が続きそうです。

今後の社会がどうなっていくのか、ということも最近よく考えています。
価値観が180度変わるんだな、と感じることが、とてもたくさんあります。
たとえば、人がたくさん集まるのがほぼ無条件に良いことだったのが、そうではなくなりました。
他にもたくさんあるので、その話は、いずれまた。

多くの人に、呼びかけたいこと。
家の中で、楽しみをたくさん見つけましょう。将棋もその一つです。

では今日はこのあたりで。

竜王戦 奇跡がまたひとつ

この2日間は竜王戦が多く中継されていました。

1組の2局は木村王位と羽生九段が勝ち上がり。やはり上位陣は強い。
1組決勝は羽生九段と佐藤和七段の顔合わせになりました。和俊さんは順位戦で自分と同じC級1組の所属です。
そもそもCクラスの棋士が1組に在籍した例は数えるほどしかないはずなので、決勝を戦うのはおそらく初めてのことと思います。地味ながらけっこうとんでもない記録です。

注目の千田ー藤井戦は、千田君に誤算があったようで思わぬ早い終局でした。
3組決勝で杉本八段と藤井七段の師弟対決が実現したらすごい、という話は表ができた時点から巷ではありましたが、本当にそうなるとは驚きます。奇跡的、という表現を使うしかないと思います。

藤井七段は竜王ランキング戦でいまだ無敗(それもすごい、というかやばい、というかおかしい)。今期も危なげない将棋ばかりです。
いっぽうの杉本八段は決勝までの3局はどれも苦しい場面がありました。中でも準決勝の菅井八段戦は終盤はっきり負けだったと思います。

いろいろなハードルを乗り越えての、奇跡の邂逅と言えます。
決勝戦はまた大変な盛り上がりになりそうです。

負け

昨日は朝から、絶望的な気持ちになっていました。
将棋のことではありません。始まる前からの話です。
昨夜もちょっと書きましたが、後で連ツイします。

最近はネットに接する時間が明らかに増えすぎていて、それ以外にテレビのニュースを見る時間も増えています。
平時ならば気をつけるところなんですが、さすがに仕方ないかなと思います。
東京、やばいと思います。皆さん、行動を変えましょう。習慣を変えましょう。

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対局は集中力を欠いたまま始まりました。戦型は後手番で、四間飛車。
駒組みの途中で一度トイレに行って、戻ってきたら相手が指したところでした。

そのとき僕は美濃囲いを建設中でした。だからすぐ次の手を指そうとして、本当に指が出かかって、そこで直前の相手の手が▲2五歩だったことに初めて気づいて、慌てて△3三角と指しました。危ないところでした。

それでいて、午後からは会心の指し回しでした。
急戦を相手に、お手本としか言いようがないさばきで優勢を築きました。
アマチュアの方の参考になる将棋が指せました。

そして大差でのゴール目前で、突然転倒しました。
遠く離れたところから相手がフラフラになりながらも追いかけてきて、僕も起き上がってその後は必死で並走したんですが、結局あと一歩及ばず、負けました。
つらく、悲しい一日でした。

もう30年以上将棋をやってきているわけで、このレベルのミス、ポカ、逆転負けは何度も経験しています。
人の行動は、簡単には変わらないんだなと身をもって思いました。
でも、変えなくてはいけません。次こそはこういうことのないようにします。

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将棋会館の中は、相当な厳戒態勢でした。
誰もがお互いに距離を取り、口数も少なく、食事中も誰も話さず、みんなで気をつけようという意識が共有されていたように見えました。
自分自身は1時間に1回程度は、うがいと、手指の消毒をしながら、対局しました。

何事もなかったと思いますし、これまでも今後も、そうであればと願うばかりです。
次の対局は来週で同じく木曜日、その次はまた翌週です。

新年度に思うこと

今日から令和2年度の幕開けです。
これほど重苦しい気持ちの新年度は過去に記憶になく、自分の体感としては震災や911のとき以上です。
とにかくいまはじっと耐えて、家の中でできるストレス発散に努めて、あとはすこしでも将棋という、誰にも迷惑をかけることのない平和な世界に潜りたいと思います。

女流王位戦の日程変更(TOKYO Web)
第1局が中止、とtwitterで誰かが書いているのを見て、なんて質の悪いエイプリルフールと思いきや、そういうことではありませんでした。
過去のタイトル戦でも不測の事態による日程変更や、2日制→1日制への変更等はあったと思います。ただ、感染症が理由というケースはおそらく初めてのことでしょう。
東京圏⇔関西圏の大きな移動を避ける方針は時宜にかなっていると思います。

これを見て思ったことが2つ。ひとつは藤井聡太君のこと。
彼はいま、名古屋と大阪もしくは東京を往復する日々です。
どうか何事もないように、あと電車内や街で見かけても声をかけたりとかは、くれぐれも控えてほしいと願います。
将棋界全体としても、不急(不要はありえないけど、日程的に余裕のあるケースは考えられるので)の東西交流の対局を一時延期する等の措置はどこかで必要な気がします。
ただ藤井君(と師匠の杉本さん)だけは東海道を反復横跳びする以外に対局を継続するすべがありません。

最近の藤井七段の対局風景を見ていると、以前ほど大勢の報道陣に囲まれる姿は目にしておらず、ある程度はおなじみの方々が中心と思われます。
ただ最近は芸能界やテレビ関係の方々にも感染が確認されています。
この先も快挙が期待されますし、そうなればまた盛り上がって将棋界にとってはありがたいことと思いますが、大きく報道していただきつつも取り囲まれるようなことのないよう、あとはマイクを除菌するなど、最大限の配慮をお願いしたいです。

なぜ、こんなことを思うかというと安倍さんや小池さんを見ていて日々そう感じるからです。
自分より何十も年長なのに大変な体力と精神力、つくづく感服しますが周りも本人も、少しでも安全に努めてもらいたいです。

もうひとつ、4月1日というのは異動や新入(学・社)などがある日です。
当然ながら多くの人が長距離を移動する可能性が高いです。
今、大切なことはそれぞれの人が交流する人の範囲を、社会的にも物理的にも、できるだけ小さくすることです。なので移動したばかりの人は、特に注意が必要です。
当面は誰もが限られた人の輪の中だけで生活を成り立たせることが重要です。

自分も明日は対局なので、家を出ることになります。
さすがに家を出るというだけで恐怖を感じることはないですが、将棋を指すために電車に乗って出かける、という行為には疑問も感じます。
ただ対局は棋士にとっては生きることの次に大切なことなので、もちろん一生懸命指します。
幸い、今日も平熱です。最近は毎日の検温を欠かさないようにしています。
自分の安心のためにも、周りの人を守るためにも、老若男女問わず、やってほしいと思います。

最近はとにかく医療・救急や薬局で頑張って下さっている方々に、ひっそりと心の中で感謝する日々です。
世の中の人々すべてが医療関係者の一次発信に耳を傾け、最大限の努力をしてこの危機を乗り越える、そんな令和2年度になることを心から願っています。