久々に図面入りでブログ書きます。
竜王戦は2日目に入りましたが、昨日の序盤の話。
この△5三銀がなかなかに意外な一手でした。
というのも最近は6三銀と「ツノ銀」に構える形が、圧倒的に多かったので。
羽生棋聖の将棋は「柔軟」と称されることが多いように思うのですが、その柔軟な発想の一端がこの手に表れているような気がします。
この形こそが正式に「雁木」と呼ばれているという向きもあり(名称の謎については今月の将棋世界に詳しいです)、別になんてことない手なのですが。
でも誰しもつい流行にとらわれてしまうものなので、自然な手が研究からこぼれ落ちてしまっているということはよくあります。
この手が実際に盤上に現れた理由として、この局面までずっと△6三銀と上がっていなかった、という点が挙げられます。
そりゃそうだ、と言われそうな説明ですが、そこに「保留できる手は後回しに」という思想が表れていると思うのですね。
△6三銀と上がると、△5三銀とは上がれません。逆もまた然り。
どちらにするかの意思表示を保留して、選択肢を多く保つ、というのは現代将棋の極めて重要なコンセプトです。
この△5三銀のすこし前の局面がこちら。
この局面、後手は
・玉の位置(居玉か、普通に左に行くか、あるいは右玉にするか)
・角の使い方(△4五歩と攻めを見せるか、4二→6四と転換するか、このままか)
の2つを、目いっぱい保留しています。
代わりに、4三銀の形や、7三桂の形を早めに選択しています。
どこを決め打ちして、どこを保留するかに、いまの思想が出ていると思います。
その結果として、表れたのが最初の図の△5三銀という一手です。(というのが僕の解釈です)
ちょっと難しい話になったかもしれませんが、このエントリは今後観戦記や専門誌の解説を読むときにも、たぶん役に立つのではないかなと思って、書いてみました。
より深い興味のある方にも、ご参考になればと思います。
その後の羽生棋聖の仕掛けにはびっくりしました。
桂がちょっと早いと感じるタイミングで跳ねていくのはこれまた現代将棋の特徴ですが、いくらなんでも早すぎるのではないかと。
対して渡辺竜王の▲6七銀もまた意外な一手ですね。
形勢は難しそうです。
プロの将棋は相手に十分な陣形に組ませないようにお互いに気を遣うので、結果としてこういうギリギリの開戦になってしまう、ということなのでしょう。
このあとの戦いも、大盤解説やweb中継・放映でぜひお楽しみください。
AI等の現代将棋の風が吹く昨今、
一時代を築いてこられたお二方にも、
何か熟練の貫禄なるものが漂ってき
たようにお見受けします。
今後のより一層のご活躍を一ファン
として願うところです。
たしかに羽生棋聖の桂跳には驚きました。
子どもの頃から桂馬はそんなに簡単に跳ねるなと教わっていたので・・・
藤井四段もものかわ、という感じですが既成概念にとらわれない強さを感じます。
何故負けてしまったのかよくわからないがいつの間にかまかされた
というのは羽生棋聖の真骨頂ではないでしょうか
今期竜王戦は全体を通して、特に羽生先生の強さが目立っていましたね。
なかなか勉強になりました。
どうもありがとうございます。またこうした解説記事も上げたいと思います。