応用

昨日は日曜日でしたが、日本将棋連盟モバイルでは加古川青流戦の中継が行われていました。
近年は対局が増えて部屋の都合がつかないようなこともありますし、今週のように土日とも公式戦の対局があるのは、いろいろな意味で好都合と言えます。

結果は稲葉聡アマ(陽八段のお兄さん)の勝ち。
優勝するぐらいだから当然ですが、いつも勝ち方が強いです。
世界で一番将棋の強い兄弟は、普通に考えれば畠山兄弟だと思いますが、稲葉兄弟も相当ですね。

先日の電王戦第2局で、ちょっとした話題になっていた局面を取り上げてみます。
(※公式サイトのキャプチャーです。←リンクをクリックすると棋譜が開きます)

△5一銀が角換わりでは見たことがない、斬新な一手でした。
(コンピュータ将棋ではある手、という話もウェブ上では目にしましたが、本当なんでしょうか?)
先崎さんの観戦記には

銀矢倉の形で受けの基本だ。それが見えにくい、というか意表なのは、序盤において金銀を引く手は悪手――おおげさにいえば論外という人間の先入観があるからである。

と書かれています。なるほど、たしかにその通りと思いました。

実はこの手を見たときに、連想した局面がありました。
同じことを思った人がどこかにいるだろうと思っているのですが、実際のところはわかりません。

それがこちら。
(※2010年、王位戦第3局←リンクをクリックすると棋譜が開きます)

この手は当時、なるほどこんなうまい指し方がと、斬新に感じた記憶があります。
「余分な歩を突かない」「最短ルートで囲いに金銀をくっつける」という意味で、かなり共通するものを感じたのですが、どうでしょうか。

実はいまから数年前に自分も横山六段との対局で、似た局面でこの銀引きを指されて、完敗したことがあります。
部分的にかなり有力な指し方なので、電王戦の△5一銀も、初めて見た手ながら直観的に有力だと思いました。

この手を人間が指したのであれば、この例のように全く別の形からの応用(連想、ぐらいのほうが正しいかもしれない)ということになりそうですが、コンピュータの場合は、たぶん膨大な読みの中からこの手を拾い上げただけで、応用だとかいうことはないのでしょう。
そこが面白いものだなあと思いました。

電王戦の番組は、最後の記者発表以降だけTSで観ました。
11時間半ぐらいのところから名シーン振り返りのようなコーナーがあって、つい最近のことなのに、いろんなことをとても懐かしく思い出しました。
今後は想い出にひたるのではなくて、コンピュータに教わったいろいろなことを、盤上ですこしでも応用していきたいと思います。

今日は例年よりすこし前倒しになった定時総会。

名人戦ほか

結果は佐藤名人の勝ちで、これで防衛に王手。
後手番の勝ちが続きましたがここで先手番ブレイク(?)
お互いの土俵の横歩取りで快勝という結果は、言うまでもなく大きそうです。
2日目は優勢になった名人が、終始手堅い、手厚い、盤石の指し回しだったように見えました。

感想戦によれば、初日の△4三金右(48手目)で△5四銀なら難しかった、とのことですがこれはかなり難易度の高い手と思えます。
代えて△4三銀なら自然なのですが、この△5四銀は▲4四角も、▲2一角も受けていない手で、しかも次に△5五銀と取れてもそこで▲8三歩成~▲6五角という筋が残るような状況なので。
そういう結論であればやはり、作戦的にはちょっと後手が大変な将棋だったかという印象を受けました。

最近コンピュータ将棋に関して「バランスを取るのがうまい」という表現を聞くことがあって、こういう局面がそれに該当するかもしれません。
第一感の手、とか指しやすい・指しにくいなどの感覚がないので、膨大な読みの量によっていろんな水面下の変化をケアして、その結果としてうまくバランスを保つ。という技術は、人間には負荷がかかりすぎて大変。
というような意味合いです。

そういえば電王戦第2局の記者会見の様子とか、その前のNHK杯などの録画は先週のうちに見終えて、感想とかも書きたいのですが時間がなく、ほったらかしになっています。
このまま時機を逸してしまいそうです^^;

叡王戦のタイトル戦昇格はビッグニュースで、本当に良かったと思います。

あと今週は囲碁のほうでもトップ棋士とAIの対戦があり、アルファ碁の3連勝に終わったそうで。
将棋と囲碁、似て非なるゲーム、似て非なる業界で、ソフトとの取り組みも全く違った展開になってどちらが良かった、とかは簡単には言えないと思います。
ただ将棋の場合は電王戦というイベントを通じてかなり多くのプロ、かなりの多くの将棋ファンがある程度の期間、ある程度強い関心を持って見守ったと思うので、その点はとても良かったと思います。

先日公開された先崎九段の観戦記も読みました。
棋士らしい、そして先崎さんらしい、深みのある内容だと思いました。

しばらく前に「将棋観戦記コレクション」という本も紹介しました。
将棋はいろんな楽しみ方があり、しかしその中で将棋「文化」と、観戦記とは、切っても切り離せない関係だと思うので、観戦記を読む(それはちょっとコアな、ということになるかもしれない)将棋ファンが、もっと増えてくれたらと願っています。

なんだかとりとめなくなったまま、今日はこのあたりで。

名人戦

名人戦はかなり激しい進行になりました。
封じ手の局面は、僕の感覚では角桂交換で駒得の先手が、すでに優勢に見えます。
しかし現代将棋では、角の価値が下がり気味で、歩切れは重視する傾向にあり、このあたりをどう見るか。
これで形勢のバランスが取れているとしたら、すごいことという気がします。
両対局者はどう感じているのでしょうか?

前例を外れたのがこの局面。
この局面は昨日も書いた「間を空けて登場する将棋」になるのかどうか?
ここに至るまでに先後双方に変化する手がいくつかあるので、流行形になるというよりは、押さえておくべき変化のひとつ、という感じになるのではという気がします。

実戦例を調べてみたところ3局で、昨年6・7・10月にそれぞれ1局ずつでした。
前例で△8二飛がなかった理由としては、△2四飛のほうが、次の▲4五桂に対応している(△3四銀と逃げることができるので)ということだと思っていました。
△8二飛が意外な新手なのは、本譜のように駒損になる手順が見えているのに、あえてそれを受け入れようとする点にあります。

ちなみに、こうやって理由づけをしながら局面を把握していかないと、人間は(僕は、と言うべきか)定跡を覚えられません。
なので、こうやって新しい考え方の手が出てきて、それが正しいと考えられる場合には前の考え方を、捨ててかかる必要があります。
このときが一番、記憶がぶつかって混線しやすく、その局面を正しく認識しておくという観点から、危険な状態と言えます。
前例そのものを記憶していて、判断がついていない、あるいは間違って認識している、という状態になりやすいからです。

過去の実戦例を無限に記憶していられて、かつ、いらなくなった棋譜は捨てて、必要になったらまた引き出せて、という作業が脳の中で自由にできたら、どんなに便利かと思います。
実際はまったく「自由に」はできず、ものすごく不自由で、ものすごく負荷をかけながら、やっています。
トッププロの情報整理力はすごいと、いつも思っています。

たとえばこの△8二飛の局面が、対局前の2人の脳内にはどういう形で認識されていて、対局後にどういう形でアップデートされるのか。という点に僕は興味があります。
ただ、それは(たぶん)解明されることのない疑問でもあります。
我々にできることは、この局面は実際のところどうなの?(どちらが優勢なのか)ということを、突き詰めて考えることだけだからです。

今日は土曜日なので、いつも以上にじっくりご覧になれる方が多いかと思います。
主催紙の新聞紙面やウェブに加えて、現地や将棋会館の解説会、日本将棋連盟モバイルや名人戦棋譜速報の中継、各種映像メディア、たくさんありますのでぜひお楽しみください。

注目の局面

藤井四段は昨日も快勝だったようです。
近藤五段は、中盤の▲2五歩がちょっと力みすぎだったように見えました。
それにしても、いったい誰が止めるんでしょうか。
強いのは間違いないものの、強いからと言って絶対勝てるゲームではないはずなんですが・・・

図面は昨日の別の中継局、糸谷ー広瀬戦(王座戦)より。
最近急によく見るようになった、注目の局面です。
糸谷八段が表裏(先後両方、の意)を持ってテーマ図を指すのはかなり珍しい気がするので、角換わり党にとってよほど気になる形ということなのだと思います。
また、見るからにいい勝負、というのも大きそうです。

初出が12日の竜王戦、▲丸山ー△糸谷戦(竜王戦)でこのときは△4四歩とは仕掛けず。
次が棋譜コメントにもある通り名人戦第4局で、対局日は16日。
その後18日に▲三枚堂ー△木村戦(王将戦)、22日に▲木村ー△澤田戦(王位戦)で続けて登場。
前者は△4四歩、後者は△4二金の待機作戦。
そして本局は玉の位置が変化。

微妙に展開は違うものの、今月だけですでに5局、これだけ同じ形が続けて登場するのは、久々のような気がします。
すこし前だと、研究テーマになると立て続けに登場したものですが、最近だとすこし間を空けて、登場していたような印象があったので。
優劣の結論がしばらく出なさそうなのが、続けて指される理由になっているのではと推測しています。

なお、5局すべて日本将棋連盟モバイルで中継された将棋です。
それだけ、大きな勝負で登場しているということです。

さて今日から名人戦第5局、舞台は倉敷。
後手番の勝ちが続いていよいよ残り3番勝負になりました。
最高峰の戦い、藤井四段や、AIに負けない注目が集まってほしいと、心から願っています。

戦型は横歩取りの「勇気流」と呼ばれる形。
これもまた、注目の局面です。
やはり名人戦に登場した戦型というのはその後も注目度が違ってくるので、今後指される機会もいっそう増えてくると思います。

無料中継

先日、ちょうど旅行中のことだったのですが、LPSA10周年パーティーが開催されたとのこと。
あれから10年かと思うと、時の流れの速さにびっくりしてしまいます。
LPSAに関する過去のいろいろなことに関しては、なかなか感情をうまく言葉にできないのですが、十数人の所属女流棋士たちには、それぞれの役割を頑張って将棋界を盛り上げていただきたいと願っています。

佐藤会長をはじめ、棋士も多く出席されたそうで、これはごく普通のことでもあり、しばらく前なら考えられないことでもあり。
いまの状態になるのに、時間がかかりましたし、今後どうなるかも、分かりません。
多少、昨日のことにも関連しますが、大きな出来事のあとには、どうしても時間が必要になることもあります。
不断の努力を、続けることが大切と思いました。

さて今日は、竜王戦6組決勝。
大きな一番とは言え、普通ならここまでの扱いになることはないこの一局に、連盟としてもかなりの特別シフトを敷いたみたいです。
【無料】将棋連盟ライブ中継で、5月25日(木)竜王戦6組ランキング戦決勝・近藤誠五段-藤井聡四段戦を無料中継!

日本将棋連盟モバイルでの特別無料中継に加えて、ニコ生・アベマ・将棋プレミアムと映像メディアによる中継そろい踏み。
そして読売新聞社での解説会。

ちょっと見たことがない状況ですが、むしろ、注目の一番であればこういうことが当たり前にならなくては。とも思います。
将棋もパブリックビューイングが日常になるぐらいでなくては。
それと、当日のスポーツニュース等で、野球やサッカーのように将棋の結果が報じられるようでなくては。
どちらも前々からアイデアや夢としてはある話で、最近ちょっとそんな未来に近づいている感じもします。

そして、藤井四段以外にも、スターはたくさんいるので、多くの個性ある棋士たちに、もっと注目が集まるようになってほしいと思います。

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