大山康晴賞

昨日も書いた通り、棋士派遣のお仕事で八戸に来ていますので、今朝は予約投稿です。

毎年この時期になると、大山賞の発表があります。
「第24回大山康晴賞」受賞者のお知らせ

授賞式は例年9月8日頃と決まっていて、何の日かというと、「日本将棋連盟」の前身である「東京将棋連盟」の誕生日、つまり我が団体の創立記念日です。
将棋界にとって特に大切な方への感謝を表す日ということで、以前からこの日に設定されていると教わりました。

他に秋には、「将棋の日」の表彰・感謝の式典が行われ、普及関係の感謝状の贈呈や、棋道師範・棋道指導員の方々への資格証書をお渡しする場になっています。
こちらは11月17日前後に行われるのが通例で、ご存じの方も多いと思いますが、八代将軍徳川吉宗が、御城将棋の日をこの日に定めたのが由来です。
以上、将棋界マメ知識でした。

 

先日コメントで「指導員の方は商売になるのでしょうか?」という質問がありました。
会費や授業料をいくらにするか等の特に定めはないはずですが、おそらく現実には、生業にされている方はごくごく少数で、大半は好意や熱意でやっておられる方ばかりだと思います。
そういう意味もあって、こうして将棋連盟としての感謝を表す場は、特に大切な機会となっています。

指導員や各地の支部の役員として普及に務めておられる方は、他に生業のある方や、リタイアされた方がほとんどで、その熱意の上に成り立っている世界といえます。
それはありがたいことでもある半面、個人的には、将棋を教えること、あるいは商品や教材の企画・販売などで生計を立てるような方も、もっと増えてほしい気持ちもあります。
ライバルが学習塾や、他のいろんな分野の習い事だと考えると、将棋も十分にチャンスはあるはずなので。
もちろん言うは易し、なんですがプロとしてやっていく覚悟を持って取り組んでおられる方もいて、尊敬していると同時に心の中でいつも応援しています。

実はここ八戸からすこし北に行った、おいらせ町(旧百石町)というところには「大山将棋記念館」があるぐらいで、大山先生とも非常に縁の深い土地です。

亡くなったのが平成4年の7月26日なので、没後もうすぐ四半世紀ということになりますね。
いまだに全国各地の世話役の方々からは大山先生の話を聞くことが多く、おそらく今回もそうでしょう。
先人への感謝の気持ちを忘れないようにしたいと思います。

昨日の三枚堂ー藤井戦など

ヤマダ杯、いやはやすごい将棋でした。
13時開始で、13時半頃モバイル中継を観始めて、ちょうど面白いところに来たなと思って観ていたら、まさかそこから1時間以上も続くとは。驚きました。

とても30秒将棋とは思えないハイレベルな攻防で、しかも大技連発。
名局賞の有力候補ではないでしょうか。
リアルタイムで観ることができて良かったと思いました。

終局からほどなくして、いつものようにニュースになっていました。
勝っても負けても、ニュースになる。この状況が、どこまで続くでしょうか。

モバイル中継のハッシュタグ「#ShogiLive」もかなりいいペースで伸びてましたね。
初めて使い方を学びました。
(使ったことのない方は右下にあるボタンの中にある「その他」の中の「twitter」を押してみてください)

うおー、とかひえー、とか言いながら観てる人がいたり、指し手や形勢のことをつぶやいてる人がいたりで、面白かったです。

僕のこのツイートはたしか190手ぐらいのときのものだったかと。

一局の流れとしては、形勢は絶えず小さく揺れていて、それでいてハッキリしたと感じた場面は少なく、↑のあとはそのまま押し切り、という内容でした。
感想戦のコメントによれば、△7九銀(これも妙手に見えた)に代えて△9六桂の妙手があったみたいですが、観戦しているときは見えなかったですね。

 

夕方は名人就位式。
主役の天彦名人はじめ、皆さんのスピーチがどれも印象に残るものばかりでした。
康光会長の「私も将棋はそんなに弱くないと思うんですが・・」には場内大ウケでしたね。
パーティーに出席するのは久々でしたが、行ってよかったです。

そして夜はA級順位戦。
こちらも同じ角換わり腰掛け銀で、豊島八段の角切りがすごい手でした。

今日はこれから八戸に行ってきます。

理想を現実にする力

佐藤天彦名人の近刊です。
先日読んだので、名人就位式の日にご紹介しようと思っていました。

「読む将」の僕はこの類の新書はだいたい買っているんですが(谷川先生・羽生先生・佐藤康光先生など)、今回は特に、共感するところ多かったです。
自分自身がこういった他人の人生観により興味を持つ年齢になってきたこと、世代が比較的近いこと、それに加えて、地方都市出身で奨励会を関西から関東に移籍したなどの共通点があることも、理由かなと思います。

彼が2回目の次点でフリークラスに行かなかったときのことはよく覚えていて、自分も同じ立場なら同じ決断をすると思ったので、多くの棋士が驚いているというのを聞いて、そのことにとても驚いた記憶があります。
奨励会時代のことというのは誰にとっても重く、言葉にしてみると生々しく、当人にしか分からないことも当然あり、後に名人になる棋士にしてそれだけ苦労したという事実は、自分たちには当たり前に受け入れられますが一般の方にとってはどうなのか。

プロになるハードルが極めて厳しい世界だからこそ、その先には明るく輝かしい未来が広がっているよう、プロ棋士になれた我々はもっと頑張らなくてはいけない。
プロになって以来、いつも意識していることです。

 

そのいっぽうで個人としては、彼が書いているのと全く同じで、僕も基本的に自分のしたこと、努力や苦労に対する見返りは求めないようにと心がけているつもりです。
そうすることで生きやすくなり、また他人やモノやあるいは運命に対して理不尽に怒りをぶつけたり、不必要に悪い感情を持ったりすることがなくなるからです。
将棋に対しても、それ以外のことでも、自分のできる最善を尽くして、結果を受け入れる。というスタンスです。
当たり前といえば当たり前のことでもあるのですが、やはり名人が言うと重みが違います。

将棋界は「個」を大事にする世界、「個」の集まりで成り立っている世界だけあって、タイトルを取るような棋士も万人の中の頂点というよりは、他の誰にもない強烈な個性を持った存在であるように思います。
「プロ棋士になるだけが人生ではない」
「棋士として勝つことはとても大事だけれど、それだけが人生のすべてではない」
と思っていた、と時の第一人者が活字にしたことは案外大きくて、時代を表しているかもしれないなと思いました。

 

ところでまったく話は変わるのですが、最近色紙用に、「人生は一局の将棋なり」という菊池寛の名言を練習しています。
そんなこともあって、この一節はとても心に留まりました。

 はじまりがあって終わりがあるという意味では将棋はしばしば人生にたとえられますが、将棋の技術をそのまま生かせるほど人生は甘くも軽くもないでしょう。
ただし、まったく意味がないとも思いません。

現実的で、客観的で、つとめて抑制的でもあり、どことなく意外な面もありつつ、納得させられる一冊です。

 

梅雨明け宣言も出て、いよいよ夏本番です。
そろそろ都内の小学生は夏休みでしょうか。
この時期、千駄ヶ谷の連盟道場が満員になるのは、毎年の見慣れた光景。

今年は将棋ブームの影響で特にお客さんが多いようで、しばらく前から土日は混みすぎて、入場制限をせざるを得ないような日もあるようです。
ありがたいことですが、お知らせにご注意の上、新宿等の近隣の道場も合わせてご利用ください。

将棋連盟が手狭なのはいまに始まったことではないですが、ここまでそう感じたことは、近年記憶になかったですね。
新たな場所を借りる等の対策が、必要な気がします。
もちろんこれはお金の問題が大きいので、実際に乗り出すには相当な覚悟が必要ですし、それだけの収入、支えが得られるかどうかにかかっています。

また東急・京急など恒例の将棋まつりも日程が発表になり、イベント参加の計画を立てておられる方も多いことでしょう。
夏休みはイベントも多く、また参加者も特に多いので、今年は大変なことになるのでは?とちょっと心配しています。
現場を担当したことがなく、出演させていただいたことも数えるほどなので分からないのですが、入場無料のところも多いので、そこは何らかの対策が必要なのではないかと・・

子ども大会も多数あります。
広島の怪童戦は今年は8/11(山の日の祝日)に行われることになりました。
いつもの通り、府中でお待ちしています。

 

昨日の中継の話題。
永瀬六段の要塞構築術がすごかったですね。
先手側から見ていたので、いくら攻撃してもまったくダメージを受けないロボットと戦っているような気分になりました。

A級の広瀬ー稲葉戦は、つい先週の羽生ー村山戦とまったく同じ形で、新工夫を披露した広瀬八段の勝ち。
以前は、特にこの横歩取りという戦型ではこういうことが多かったのが、最近は減っている印象だったのでびっくりしました。
まだまだこういう形があるんですね。
パッと見の印象だけで言うと、(5八でなく)6八に遠ざかっている先手玉に対して、2筋からと金を寄せていくというのが無理がある気がするんですが、どうなんでしょう。

今日もB1順位戦があります。(B2も延期分が1局)
ほか竜王戦、叡王戦、リコー杯(本戦開幕戦)とあり、豪華な一日です。
モバイル中継、名人戦棋譜速報、それとニコ生もどうぞ。

若手棋戦

昨日のモバイル中継は、加古川青流戦と、YAMADAチャレンジ杯が2局ずつでした。
前者は四段と三段、後者はプロ入り後一定年数の四段と五段が、参加資格のいわゆる若手棋戦です。
どちらも自分は指したことがなく、言っても仕方のないことですが残念な気持ちはあります。

僕はプロ入りが13年前、2004年のことで当時は早指しの棋戦がなくなったりして、いま思うと将棋界は右肩下がりの時代でした。
その数年後には時の新人王が「斜陽産業」と発言して物議をかもす、なんてこともありました。

その一方で羽生七冠を見てプロ入りを目指した世代が大挙して押し寄せ、競争は厳しくなるばかり。
このあたりがもしかしたら「底」だったかもしれません。
その後、米長会長や谷川会長の時代、いくつも新棋戦が誕生しています。
上記の2つはいずれもまだ創設から10年未満の歴史の新しい棋戦なので、今後も末永く続いてほしいと思いますし、若手棋士には限られたチャンスを生かして頑張ってほしいと思います。

全棋士参加棋戦の叡王戦も新設されましたし、ここ数年の将棋界は明らかに右肩上がりだと思います。
ただ以前とは違うこともあって、週刊将棋の休刊等で、対局に関する記事が出ないままの将棋の割合が、多くなっている印象もあります。
そこはモバイル中継の会員数が増えることで、新たな受け皿になればいいですね。

 

ということで久々に図面貼ります。
井出四段ー甲斐三段戦で、四間飛車vs急戦から、玉頭銀が登場。
公式戦で観られるのは久々なので、心躍りました。

この将棋は、▲郷田ー△羽生のタイトル戦で観た印象が強く、いま調べてみたらもう22年も前の王位戦でした。
そんなに経ってるのかと思わずにはいられません。
やっぱり修業時代に勉強したことはよく覚えているのですかね。

いまのコンピュータ時代から見て、こういう古い定跡形というのはどのような評価を受けるのか、というのは勝負を離れて一人の将棋マニアとして、興味深いところです。
井出四段の振り飛車は、こういう形のきれいな将棋から、なかなかお目にかかれないような力戦までいろいろあって、いつも観ていて面白いです。
次の藤井四段戦にどんな作戦をぶつけるのか、注目しています。

今日はA級順位戦と、王将戦が2局。