昨日の対局は朝、ちょっと印象的な出来事がありました。
自分のほうが段位が上なので、駒箱を開けるわけですがその瞬間、それがいわゆる「加藤駒」であることに気がついたのです。
対局に使用する駒は、東京では日によって変わるのですが、例外的に加藤一二三先生だけは必ず毎回同じで、記録係や手合係の間ではかつてそれを「加藤駒」と呼んでいました。
もし係がうっかり違うものを出してしまったときには、必ず取り換えさせていたようです。
様々なこだわりで知られる、加藤先生の有名なエピソードの一つです。
(※ちなみに関西では駒に番号がついていて、最上席から1番、2番・・と出てくるので、トップ棋士だとけっこう毎回同じ駒で指していたりします。この東西の違いも面白い)
自分も加藤先生とは何度か対戦させていただいているので、当然その駒で対局したことがあります。
ただ最後に自分が触ったのはもう5年以上も前のことになるので、それでも覚えているものなのだなあと不思議な感慨にとらわれました。
そのとき駒箱を開けるのは大先輩である加藤先生の役目なので、自分が開けるのは初めてのことでした。
これはあまり知られていないことと思いますが、対局で使う駒箱の中面には、作者と書体が書かれた紙が貼られています。
その駒箱には「美水作 銀目」とありました。
美水作、は知っていましたが「銀目」というのは初めて聞きました。(※「杢」とか「虎斑」とかが多い)
加藤先生のこだわりが詰まった(?)美しい木目の逸品です。
王将の駒尻に書かれた文字は真ん中の「水」が取れて「美 作」になっていました。(岡山県みたいだ)
他に漆の取れたところは見たところなさそうで、もちろん使用には何の問題もなく、何万回にも及ぶであろう加藤先生の激しい空打ちに耐えてきた駒たちは、いかにも粘り強く戦ってくれそうな気がしました。
昼間に手合係の方に聞いたら、ここ2日間対局がとても多かったので、ピンチピッター的な感じで登場したとのこと。
日頃はあまり使われていないとのことなので、とても貴重な出来事でした。
本当は写真を撮っておきたかったのですがそういうわけにもいかず残念(笑)
ちなみに参考動画
最年少・藤井四段が最年長・加藤九段とデビュー戦(毎日新聞)
(※もうすこしはっきりしたものがあるかもしれませんが良いものが見つからず・・分かりやすいものがあれば教えてください)
対局のほうは熱戦になり、最後のほうははっきり優勢ながら決めきれない展開が続きましたが、なんとか逃げ切り。
相手の高野四段は、結果的に加藤先生の引退の一番を務めた棋士なので、よもやこの駒でこの将棋を負かされたら自分も・・とヒヤヒヤしましたがなんとか勝てて良かったです。
棋王戦本戦はこれで3度目の挑戦、そろそろ本戦でも白星を挙げられるよう頑張りたいです。
夕休のない対局だったので、感想戦終了後は中継記者2人を誘ってみろく庵で一杯やって帰りました。
高見叡王のサイン入りポスターが飾ってありました。
今日からまた次の対局に向けて頑張ります。