今日の話は、興味のある人にとっては、けっこう興味深いと思いますが、そうでない人にとっては、どうでもいい話かもしれません。
よく、将棋がとても奥が深く可能性が広い。あるいは数年前までであれば、それがゆえにコンピュータにとってとても難しい。ということを表す指標として、「10の220乗」という数字を、聞いたり目にしたことのある人は多いのではないかと思います。
この数字が、どういうわけか「将棋の可能性」の定説になっています。
しばらく前に仲間の棋士と飲んでいるときに、ふと、この話題になりました。
そのとき、「10の220乗という数字は、実は80の115乗らしい」と聞いたので、ほう。と思って家に帰って検索してみたら、たしかに出てきました。
将棋界では知られている、数学の先生の論文です。
将棋における実現可能局面数について(pdf)
この論文によると、実際の将棋の「場合の数」はだいたい10の69乗ぐらいみたいです。
ではなぜ、こんなにも「10の220乗」という数字が有名になっているのか。
というのが本題で、僕の疑問です。何か、きっかけがありそうな気もするのですが、よくわかりません。
もっと分からないのが囲碁で、こちらは「10の360乗」というのが定説になっています。これも、聞いたことのある人は多いと思います。
しかし。
囲碁の交点の数は、19×19=361個です。
一つの場所には、黒があるか、白があるか、空いているか、のどれかです。
よって盤面の場合の数は、「3の361乗」よりは、小さいはず。
ではないかと思うのですが(そこからどのぐらい減るかは僕には分からない)、どうしてそういう定説になったのか、これも僕には謎です。
局面ではなくて、棋譜のパターンの数だから、こういう数字になっている。
というのはまあ分かるとしても、囲碁の場合は、それにしてもあまりにも多すぎるし、その数字が、こんなにも定着している理由はよくわかりません。
誰かチコちゃんに聞いてくれないかなと思ってるんですが、5歳児にはちょっと難しいでしょうか。
ご存じの方がいたら、コメントで教えてください。
20年ほど前でしたか
公立はこだて未来大学教授の
松原仁先生が将棋世界誌に
そういう数字を書かれてた
気がします
ずばり『なぜ、こんなにも「10の220乗」という数字が有名になっているのか』について考察した文章を、ネットで見かけたような記憶はあります。
と思って改めてググってみたら、これかな・・・?
http://lfics81.techblog.jp/archives/2319578.html
ひょっとして片上先生の疑問は、この定説が「有名になった」理由ということですか。
AlphaZero論文で引用されている”Computer shogi”という論文によると(Iida, Sakuta, and Rollason, 2002)、局面数が10の71乗、ゲーム木の大きさ(すなわち、ありうる棋譜の組み合わせ)が10の226乗程度と推定されているそうです。
同じ論文に囲碁の推定値もあり、局面数は10の172乗、ゲーム木の大きさが10の360乗となっています。
続けてコメントすみません。同じ論文をよく確認したところ将棋は平均的な分岐数80くらい平均手数115くらいで80^115=10^226、囲碁は分岐数250手数150で250^150=10^360という非常に大雑把な推定手法のようです。
松原先生が本の中で、1990年頃にプロ対局の局面で平均分岐数が80くらいだと見出したと書かれていますので、そこが発端だと思われますが。。10の70乗以下で済むと言うことは、合流した分だけ減るってことなんですかね?数が大きすぎてすぐにはピンと来ませんが。囲碁の3の361乗はさらに確かにそうかなという気がしますね。チコちゃんじゃなくてチダちゃん(失礼)に聞けば分かりませんかね?または、そのツテで・・・
みなさまコメントありがとうございます。
ご教示いただいた内容はある程度聞きかじってはいたのですが、そんなにも大雑把な推定(計算以前に前提となる数字の根拠自体が不明)の結果がそこまで有名になっている理由が分からなかったので、書いてみました。
いまのところ、分からないままになりそうです。
アルファゼロの論文は当然読めないのですが、たぶんこれも似たような出典をもとにしているのではないかと推測しています。