注目の王将リーグ、既報の通り広瀬竜王が勝って挑戦権。
写真で見る限りではかなりの数の報道陣で、もしかしたら29連勝のとき以来でしょうか。
昨日の棋譜はこちら(主催紙・毎日新聞)のサイトで観ることができます。
ということでたまにはすこし解説してみます。
一応図面は載せないようにしますので、関心のある方はお手元で並べながら読んでください。
注目の一戦、広瀬竜王が優勢ですね。
— Daisuke Katagami (@shogidaichan) November 19, 2019
このツイートが72手目あたりのこと。
どうやっても一手違いなのですがその一手が埋まりそうもない、相矢倉戦特有の展開。この時点では藤井七段の挑戦はなさそうと思っていました。
ところが進んで91手目▲4三金の王手に△同金と応じられないようでは大変なことになったと思いました。
ここ△4三同金は▲7二飛成△4二金(引)に▲4三銀成!△同玉▲5四馬!というきれいな捨駒で詰むんですね・・・と思いきや、そこで△3三玉で詰まない。しかし△4三同金には▲同銀成△同玉▲5五銀で▲5四馬以下の詰めろが受けにくい。なんとも複雑で難解な変化です。
感想戦コメントによれば直後の△6六馬が手順前後で先に△8七歩成が正しかったとのこと。
結果が逆ならここが勝敗を分けたポイントとなっていた可能性が高そうです。
107手目▲3二金まで、後手玉は(一見)受けなし、先手玉は(一見)上部が厚く詰みはなさそう。はっきりしたと思いました。
マイナビルームの大盤解説会、羽生佐藤のW解説なのですね。まさに歴史的な一日。って今年何度目かは分からないけど。どうやらはっきりしたと思います。
— Daisuke Katagami (@shogidaichan) November 19, 2019
しかしこれはあまりに甘い読みで、実際は先手玉は危険な上に、後手玉は△3三銀打でまだ受けの利く形でした。
将棋の終盤は本当に難しい。
特に109手目は▲7七桂のほうがはっきり詰まないと思ったのですが、それは△8五金▲6七玉△6九飛成▲6八歩△7六金打▲同金△同金▲同玉△8七銀という順で詰みます。
最終的に△5六金と打つ形になると詰む、というのが見えるだけにその過程で「金金銀」とある持ち駒を金、金と打っていくのはかなり盲点になりやすい気がします。
ここを乗り越えて、次の関門で二択を誤ったのは1分将棋ではやむを得ない気がしますが、とはいえ藤井七段だけにめったにない出来事、それがこの大舞台で起きてしまうことには驚きました。
最後は7二の歩が働いて奇跡的な詰み。
思えばこの将棋は中盤の▲7二歩(51手目)がやや珍しい手で藤井七段がペースを握るも、その後▲7二とを逃して広瀬竜王ペースに。
(郷田九段の解説)
終盤は△7二歩の中合(88手目)が感想戦コメントによれば疑問だったものの、その歩が最後に詰みに働いて終局。
ということで7二をめぐる物語に終始した一局だったかもしれません。
終盤は自分自身もリアルタイムで観ていて本当に手に汗握りました。
特に最後の詰む・詰まないは難解で、他の変化も含めて非常に難しい終盤戦でした。
本当に良いものを見せていただきました。
それと昨日の王将リーグ、三浦―久保戦は完全な消化試合だったにも関わらず、しかも序盤でかなり差がついていたにも関わらず久保九段が粘って逆転勝ち。
また途中はっきり逆転してからは今度は三浦九段が粘りに粘り、再逆転はなかったものの大熱戦の広瀬ー藤井戦よりもさらに遅い終局でした。
こういう一番に、将棋界の価値があるような気がします。
こちらも、良いものを見せていただきました。