興福寺での名人戦第3局は、羽生竜王が勝って白星先行。
ここまで先手番の勝ちが続いているものの、どの将棋もあまりに難解で、先手番の利を生かして、という感じには自分の目には見えません。
ただ本局に関しては、特にこってりしたねじり合いの一局だった中で佐藤名人に大きなチャンスはなかったように見えたので、そういう意味ではやはりこのレベルだと先後は大きいのかもしれません。
振り返ってみると、序盤の出だしは角換わり腰掛け銀模様でありながら、封じ手の時点ではお互い盤上に角を打ち合っていて、銀も腰掛けていない状況。
これでは解説もひと苦労ですがこれが現代の角換わりの一側面です。
戦型の枠を超えた指し手が、今後もしばらくは主流になることを示す場面と思いました。
女流王位戦は里見さんがまさかの詰み逃し。
詰みを逃してそれでも勝ちというケースは多いですし、わざわざ詰まさなくても勝ちの局面できちんと詰ますこともプロならば多いですが、本局のようなことはかなり珍しいです。
やはり将棋は何が起こるか分からないと改めて思わされました。
内容的に両者を称える声も多かったですが、中盤は見ていて不可解な手もありましたし二人ともこの将棋の内容には納得していないだろうと思いました。
女流王位戦は持時間が唯一4時間で、初挑戦の渡部さんにはこの点も初めてで体力的にも大変だったのではと想像します。
挑戦者がひとつ先行したことで、タイトル戦としては面白くなったと言えそうです。
昨日は他に竜王戦と王座戦の大きな一番が中継されていました。
竜王戦は稲葉八段の強靭な粘りに感動を覚えました。
序盤の早い段階で松尾八段が大優勢になって、結局そのリードが大きかったという結果でしたが将棋とはあんなにも頑張れるものなのですね。
いっぽうで王座戦は谷川九段の潔い投了にこれもまた感動を覚えました。
人間はなぜこうも相反する二つの事象のどちらにも感動できるのか、不思議と言えば不思議です。
あの局面で投了できるプロがいったいどれぐらいいるものなのでしょうか。
少なくとも自分にはたぶん一生無理です。
むしろ自分が渡辺棋王の側を持っていたら、普通に逆転されてもおかしくない気がするので、そう思われない実力を身に付けることが大切と改めて思いました。