名局賞・熱局プレイバック

将棋世界6月号が発売中です。

2018年度が始まってはやひと月半ですが、昨年度の話題。
棋士が投票する「熱局プレイバック」は、毎年楽しみにしている企画です。

1位の牧野ー中尾戦は納得、以下ももちろん選ばれるにふさわしい将棋ばかりでしたが、自分の投票した王位戦第5局がランキング外だったのにはびっくりしました。
10手目△3二飛の新戦法に始まり、中盤の流れも見事で、平成生まれ初のタイトルホルダーという大きな結果をもたらした一局なので、例年なら上位間違いなしと思うのですが。
羽生竜王をあれほど驚かせたというのはそれだけでもすごいことです。

もっとも自分の場合、ファン投票1位の竜王戦第4局(△8八金!~△6八飛!の鮮烈な寄せの一局)を外していたので、3局(棋士は1位~3位まで投票する)では選ぶに足りなかったという棋士がほとんどだったのでしょうね。
今回に限っては羽生竜王の勝局から5局、藤井六段の勝局から5局、それ以外でベスト10ぐらいでも良かったかもしれません。
それぐらい例外的な一年でした。

同世代の横山六段や伊藤五段が、カロリーナー清水戦に言及してくれていたのは嬉しかったです。
女流名局賞の新設はとても良いと思いますね。

将棋大賞の選考経過も今回ほど興味深い年はなかなか今後もないでしょう。
意見が割れるのはこれもまたすごい一年だったことの証明のようなもので、本当に多くの棋士が活躍して、多くの名局が誕生しました。
こういう議事が記事として形になるのは専門誌ならではで、価値のあることと思います。

新手年鑑(恒例の勝又六段の付録)も面白かったです。
新手だけでこんなにもたくさんあったので、妙手や珍手は今年は取り上げる必要がなかったということなんでしょう。
これもまた例外的な一年だった気がします。

いろいろありすぎて、理解できたものもあり、いまだに理解できないものもあり、自分で採用したものはほとんどなし、という現状なんですが「大局観の新手」というフレーズは印象に残りました。
これは重要な指摘で、手としては昔からあるけれどそこに「評価」が加わったことが近年の大きな変化です。

人間は流されやすい生き物で、そして棋士はプロといえども人間なので、流行戦法の多くはトップ棋士が多く採用するかどうかに左右されるところが大きかったのがこれまでの将棋界でした。
今後は既存の定跡や指し手はすべて好むと好まざるとに関わらずコンピュータの評価を受けざるを得ないので、コンピュータが良いと言っているという理由でトップ棋士が違和感を覚えるような手でも流行する可能性があります。
その兆しがはっきり顕著になったという点でも2017年度は特筆すべき年だったと後世からも評価されることになると思います。

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