師弟

最近は、将棋系の読み物が充実していますが、中でもこれは本当にすごい一冊でした。


圧倒的な取材力。それに応えて、棋士も本音で語る。たとえばp49とか、p70とか、ここまで話すのかと驚いた部分がたくさんあった。

著者の本業はカメラマンとのこと。私はお会いしたこともなく、おそらくこれまでに将棋界の仕事を数多くこなしているというわけでもないのに、これだけの取材をできたことは驚嘆に値すると思う。

当たり前だが師弟の形はさまざまで、その中には余人には知られていない話もたくさんあり、そのひとつひとつをとても興味深く読んだ。
棋士同士、お互いの話は意外なほどしないものなので、実は知らない話はとても多いのである。
自分の師匠や弟弟子の話でさえ、知らないことがあった。

 

誰に特に目を引かれるか、人それぞれと思うが自分の場合、東京に出てきたのち三段リーグで長く苦労したので、都成君のところは特に重ね合わせて読んだ。
そういえば登場人物の中に、東京出身者は少ない。
印象深い師弟関係というのは地方出身者が多いのかもしれない。

自分もちょっと変わった形ではあるけれど弟子を持つことになり、思うことは「師匠として、弟子のためにしてやれることは、限られている」。本書でも何人かの師匠が、違った形でそう述べている。
でも弟子のほうは師匠のことを、それぞれの形で、とてもありがたい存在だと思っている。

そういう絆というものは、人間にとって貴重なものだと思うし、まして他の世界にはそうそうないものだから、将棋界に独特の文化の中でも、特に続いてほしいと思っているもののひとつである。
ただ、してやれることが少ないわりには、責任はあって、師匠は本当に大変なのだけれど。

 

僕自身は一局も将棋を指していただいたことがないのだが、それでいて師匠から得たもの、受けた影響は他の弟子以上ではないかと勝手に思っている。
それは将棋界や棋士に対する考え方であったりとか、仕事への取り組み方とか、いろんなところに表れている。と思う。
本書の表現を借りると、「精神的な信頼」はたしかに大きい。

先日は久々に宝塚に行って、師匠に昇段の報告ができて、本当に良かった。
この本の取材の話も、いろいろと聞くことができた。
いまも一門に関する取材は、ちょくちょくあるそうで、また形になってくれたらいいなと思っている。

 

紹介しようと思っていて、できてなかった本の紹介でした。
他にもいろいろとあるので、また機を見て書きます。

2件のコメント

  1. 「師弟」。中継などで触れていらっしゃる先生もいて気になってはいたのですが、片上先生も絶賛されているということで買ってみました。著者の方、名前に見覚えあると思ったら海パン一丁でグラビア撮影する事で有名な方ですよね。振り幅にびっくりです。

    1. そうみたいですね。僕も検索して知りました。
      取材力はそちらで培われたのだと思いますが文章力のほうも素晴らしいと思いました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です