昨日たまたまtwitterで見かけたんですが、対局後に対戦相手と握手を交わすシーンが、放映されたんでしょうか?
未確認なのですが、今日はその情報を見て思い出した話を。
将棋には3つの挨拶があります、と我々プロはよく学校などで教えています。
「おねがいします」「まけました」「ありがとうございました」です。
このうち「まけました」は将棋に特有のもので、「自分で負けを認める」競技は他にはないとよく言われます。
幼少期の将棋の経験が、その後の成長に役立つと言われるゆえんでもあります。
いっぽう「ありがとうございました」は多くの競技にあります。
ボードゲームではきちんと声に出すことも多いと思いますし、スポーツなどでも、試合終了後に「礼」をするのが一般的でしょう。
これは相手への敬意を示す、という精神文化の顕れだと思います。
「ありがとうございました」を英語にすると、当然ながら「thank you」です。
将棋がこの先もっとグローバルな競技になったら、終了時の挨拶は「ありがとうございました」ではなく「thank you」になるかもしれません。
では「おねがいします」はどうかと考えると、やはり一礼したり、なんらかの声を掛け合うことがボードゲームでは多いように思いますが、これに当たる外国語はたぶん存在しません。
僕が趣味としているバックギャモンでは、代わりに「good match」(良い試合を)と声を掛け合うのが一般的です。
これはこれで良いと思いますが、「お願いします」という独特の言い回しは、日本的でとても良いもので、これからも残したい、あるいは広めていきたい精神文化であると思っています。
代わりに、日本には存在しない習慣もあって、これが冒頭の「握手」です。
欧米など日本以外の多くの国では、ゲームの終了時に相手と握手を交わすことが一般的で、開始時にも交わすことがよくあります。
また敗れた側が「thank you」と言いながら握手を求めることが、試合終了の合図になったりもします。
僕はバックギャモンでしか知りませんが、おそらくチェスとか、他のゲームも同じではないかと思います。
これはこれで良い習慣だと思うので、多くの将棋勢にも、知ってもらいたいなと以前から思っていました。
将来、将棋がshogiになったら、駒を片付けたあとにshake handsで対局を終えることが、一般的になるかもしれません。
それはそれで、面白い未来ではないでしょうか。
柔道は礼に始まり礼に終わりますよね。ありがとうございましたで悪い理由はないと思います。本将棋は日本の文化ですから。フェンシングもフランス語ですよね。
「お願いします」「負けました」「ありがとうございました」は、それぞれ剣道の試合で対応する言葉があるように思います。
剣道をやっていたのはウン十年前なので記憶が定かでないですが、
(1) 向き合って、「お願いします」と一礼。竹刀を構える。
(2)審判が「始め」と発生して試合を始める。
(3)通常は試合の終了は審判が宣告しますが、圧倒的な差がついたような場合、負けた方が「参りました」と言うことはあるでしょう。
(4)最後に再び向き合って一礼し「ありがとうございました」。
現在の将棋の対局作法は、武道の試合作法と概ね共通しているものと思われます。
たしかに、武道と棋道には共通点がありますね。