純粋なるもの

昨日は大熱戦の興奮が収まらないまま、一日が過ぎていきました。
改めて考えても、奇跡的な終盤戦でした。

この1年ほどの広瀬竜王は、羽生九段のタイトル100期を目前で止め、藤井七段の最年少タイトル挑戦を目前で止め、と世間の期待を背中ではなく正面から受け止め、跳ね返しました。
自分にとっても大きなものが懸かっているのだから一生懸命やるのは当然なのですが、そこでいつも通りの将棋を指して結果を残すというのはやはり大変なことで、超一流はすごいものだと改めて思いました。
今日からは早くも竜王戦第4局、移動日・前夜祭を考えると休みなしのハードスケジュールです。

お隣の囲碁界ではこの数か月ほどで、やはりトップ棋士の一力さんが、竜星戦で女性初の優勝を止め、名人戦では女性初のリーグ入りを止めています。
不思議とこういうことは重なるのかもしれません。
ちなみに広瀬竜王と一力さんは、偶然にも早稲田の同窓ですね。

本当に純粋に一生懸命やった結果、世間の期待通りに物事が進むことがあれば、それを上回ってさえくることもあれば、そうはいかないこともある。
だからこそ勝負の結果は尊いし、そこに将棋界の価値があるのかなと思います。

表題はこういう場面を見るたびに思い出す、名著のタイトルです。素敵なフレーズだと思います。

昨日は女流名人リーグの最終一斉対局が行われ、妹弟子の谷口さんが挑戦者に。
年明けからの仕事を断って、この女流名人戦に懸けているという話も人づてに聞きました。
力はつけているのだと思うので、里見さんは強いですが健闘以上の結果を期待したいです。

トン死

注目の王将リーグ、既報の通り広瀬竜王が勝って挑戦権。
写真で見る限りではかなりの数の報道陣で、もしかしたら29連勝のとき以来でしょうか。

昨日の棋譜はこちら(主催紙・毎日新聞)のサイトで観ることができます。
ということでたまにはすこし解説してみます。
一応図面は載せないようにしますので、関心のある方はお手元で並べながら読んでください。


このツイートが72手目あたりのこと。
どうやっても一手違いなのですがその一手が埋まりそうもない、相矢倉戦特有の展開。この時点では藤井七段の挑戦はなさそうと思っていました。

ところが進んで91手目▲4三金の王手に△同金と応じられないようでは大変なことになったと思いました。
ここ△4三同金は▲7二飛成△4二金(引)に▲4三銀成!△同玉▲5四馬!というきれいな捨駒で詰むんですね・・・と思いきや、そこで△3三玉で詰まない。しかし△4三同金には▲同銀成△同玉▲5五銀で▲5四馬以下の詰めろが受けにくい。なんとも複雑で難解な変化です。

感想戦コメントによれば直後の△6六馬が手順前後で先に△8七歩成が正しかったとのこと。
結果が逆ならここが勝敗を分けたポイントとなっていた可能性が高そうです。

107手目▲3二金まで、後手玉は(一見)受けなし、先手玉は(一見)上部が厚く詰みはなさそう。はっきりしたと思いました。


しかしこれはあまりに甘い読みで、実際は先手玉は危険な上に、後手玉は△3三銀打でまだ受けの利く形でした。
将棋の終盤は本当に難しい。

特に109手目は▲7七桂のほうがはっきり詰まないと思ったのですが、それは△8五▲6七玉△6九飛成▲6八歩△7六打▲同金△同金▲同玉△8七銀という順で詰みます。
最終的に△5六と打つ形になると詰む、というのが見えるだけにその過程で「金金銀」とある持ち駒を金、金と打っていくのはかなり盲点になりやすい気がします。
ここを乗り越えて、次の関門で二択を誤ったのは1分将棋ではやむを得ない気がしますが、とはいえ藤井七段だけにめったにない出来事、それがこの大舞台で起きてしまうことには驚きました。

最後は7二の歩が働いて奇跡的な詰み。
思えばこの将棋は中盤の▲7二歩(51手目)がやや珍しい手で藤井七段がペースを握るも、その後▲7二とを逃して広瀬竜王ペースに。
郷田九段の解説
終盤は△7二歩の中合(88手目)が感想戦コメントによれば疑問だったものの、その歩が最後に詰みに働いて終局。
ということで7二をめぐる物語に終始した一局だったかもしれません。

終盤は自分自身もリアルタイムで観ていて本当に手に汗握りました。
特に最後の詰む・詰まないは難解で、他の変化も含めて非常に難しい終盤戦でした。
本当に良いものを見せていただきました。

それと昨日の王将リーグ、三浦―久保戦は完全な消化試合だったにも関わらず、しかも序盤でかなり差がついていたにも関わらず久保九段が粘って逆転勝ち。
また途中はっきり逆転してからは今度は三浦九段が粘りに粘り、再逆転はなかったものの大熱戦の広瀬ー藤井戦よりもさらに遅い終局でした。
こういう一番に、将棋界の価値があるような気がします。
こちらも、良いものを見せていただきました。

注目の最終日

今日は王将リーグの最終一斉対局。
広瀬竜王ー藤井七段戦が実質的な挑戦者決定戦というシンプルな状況でこの日を迎えました。
大注目の一戦ということで、急遽大盤解説会が開催されることになったそうです。

緊急決定!第69期大阪王将杯王将戦 広瀬章人竜王VS藤井聡太七段 特別大盤解説会のお知らせ

会長自ら登板、という場面をこのところよく見かけている気がしますが、それだけ急な需要や要望が多いということなのでしょうね。
もし藤井七段が最年少挑戦となればまた大ニュースになるでしょう。会見とかも大変なことになりそうです。

楽しみな一戦、解説会のほか、将棋プレミアムの生放送やモバイル中継等でお楽しみください。

帰京

2泊3日の出張から昨夜、帰京しました。
お世話になった皆様方には、どうもありがとうございました。
実は栃木には次の週末もまた行く予定です。
昨日が県中支部、今度は日光支部で、その次は年明けになります。

昨日の日本シリーズは渡辺三冠が勝って2連覇。
後手番で竜王相手に圧勝に近い内容、ちょっと強すぎますね。
豊島名人以外に負けてない記録、いったい誰が止めるのでしょうか。

今週は銀河戦の対局がありますが、対戦相手や日程等は書かないでおきます。
放映が近づいた頃にまた改めてお知らせする予定です。
その他は練習将棋の予定があるくらいで、すこしまとまった時間も取れそうなのでなるべく勉強に時間を充てたいと思います。

記事紹介など

今日、11月17日は将棋の日。
今年は日曜日に当たり、JT東京大会がちょうどこの記念日に重なりました。
全国最大規模の子ども大会、今年は何人が集まるでしょうか。
決勝は広瀬竜王ー渡辺三冠戦です。

出張中の予約投稿につき、いくつか記事を紹介します。

AI時代、人はどう生きるか 羽生九段に東大生が聞く
仮釈放の判断をAIにさせるという話、たまたま最近弁護士さんの将棋会に行く機会があったので、ちょうど聞いたばかりでした。
この話の後にATMの例えが出てくるあたりが、いかにも羽生九段らしく当意即妙です。

納得、というキーワードがまさにぴったりで羽生九段の対談記事はなんとなく読者を納得させる力を持っています。
AIがこの先さらに進化して人間を超える知性を手に入れても、さすがにこの能力は超えられないのでは、とさえ思わされますね。
それはさておき、AIが間違えることを人は受け入れられるか、というのはこの先本当に大切になってきます。
受け入れられるような制度設計にしていく、という部分が法律家の大切な仕事になっていくのだろうと思います。

将棋アプリの「ひよこ」と対戦するのが第一歩
(3分で分かる将棋入門)
前にたしか同じサイト・同じコンセプトで囲碁の記事がありました。
囲碁のルールに比べると将棋のルールは明らかに簡単だと思いますし、大人の方の「難しい」を吹き飛ばすような内容になると良いですね。
内容は読んでいただくとして、筆者がブログのほうで書いていた

今まで自分が思っていた「将棋は難しい」と初心者の方が思う「将棋は難しい」に乖離があった

というのはなるほどと思いました。
これは本題ではないですが自分の場合、将棋に限らず他のことでも「難しい」と感じる要因や内容に他の多くの人と隔たりが大きいらしいので、何かと気をつけたいものです。

奨励会に挑戦し続けた経験が自信に
タイトル長いので後半省略。石本さんは、一門の妹弟子に当たります。
たしかに5回奨励会を受験した人はまずいないでしょう。
そのときがあっていまがある、と思えればそれがどんな失敗や挫折であれ、素晴らしいことです。
妹弟子とはいえ接点はほぼないので、いろいろと知らないことが多くて興味深く読みました。

昨夜は高校の先生方と一献、となっている予定。
今日は近くの支部例会に顔を出してから夕方帰京します。