将棋世界

6月号が発売中です。

前にも書いた通り、熱局プレイバックを楽しみにしていましたが、そういう結果でしたか。
もちろん大変な熱戦だったとは思うのですが、詰みを逃すという結末になった将棋が1位というのは、ちょっと意外でした。
名人戦の一斉解説会で、多くの棋士がリアルタイムで観戦していたことも、影響があったような気がします。
そういうわけで、2017はこないだの名人戦第3局が、かなり有力かもしれません。と預言しておきます。

あとはどの将棋も自分も候補に考えていた将棋ばかりで、意外なものはなく、全体としては棋戦がよくばらけた印象です。
NHK杯や銀河戦が1局もなかったのは意外でした。
それだけ、候補が多かったということかもしれません。

藤井四段の自戦記、見た目通り、しっかりした文章で中学生離れしています。
彼の文章が読めるのはいまのところ将棋世界だけ、でしょうか。

升田幸三賞の選考経過、
「いまのプロの将棋はなんらかの形でソフトの影響を受けており、明確な線引きは難しい」
というのはたしかにその通りで、考えさせられました。
なかなか「創造」が難しい世界になってきました。
その中でどう個性を生かして戦っていくか、自分もいつも悩んでいます。
息苦しさも感じる中で、なんとか自由に、新鮮な気持ちで指していきたいです。

棋王戦第4局の記事、第9図から△8六角成▲7七金打というのはなんとまあ、すごい攻防。
こんな手順が落ちているとは驚きで、ぜひ実戦で見てみたかったです。
ちなみに△8六Xは、桂以外にも香とか銀とか、過去の公式戦でも現れているので、ソフトの影響はないと思われます。

電王戦の記事は、妹弟子の連載とどことなく似ているなと途中から思っていたら、案の定「チャンク」という言葉が出てきてやはりと膝を打ちました。
この記事の真ん中からすこし下あたりを参照)
面白い記述なので、すこし長いですが引用します。

 認知科学では、知覚される情報の単位のことを「チャンク」と呼ぶ。将棋におけるチャンクとは、初級者にとっては一駒一駒のことを指し、中級者にとっては囲いや戦型など部分的な駒の集合のことを指す。そして、棋士などの上級者にとっては盤面全体を指し、1つの塊として素早く認知する。
棋士は記憶力がよいと思われがちだが、決してそういうことはなく、複数の部分的なチャンクを1つに統合することで限られた記憶容量を効率的に扱っているとされている。

思考の言語化は、もう10年以上ずっと考えているテーマなのですが、最近は世の中に出ているこうした文章から、教えられることが多い気がします。
この「チャンク」というのはこれから、注目のキーワードになる、かもしれません。

たとえば本で「手筋」や「格言」などを勉強することは多いと思います。
この部分的な形のひとつ一つが「チャンク」であり、上級者ほどそのつながりや組み合わせの善し悪しを、広く深く、そして正確に理解しているということになるかと思います。

ソフトの影響で、プロがいままで知らなかった、あるいは正しく評価してこなかった「チャンク」がたくさん登場しているのが、いまの将棋界の大きな流れだと自分は理解しています。
それが今回の升田賞の「矢倉相手の左美濃」であったり、角換わりの「2八飛・5八金ではなく、4八金・2九飛」であったりということなのではないかと。
ではそれをこの先どう自分に取り入れていったら良いのか、というのが難しいところです。

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