趣味と言葉の話

こないだの話(BMAB)の続きなんですが、僕自身は、バックギャモンというゲームを趣味としていて、基本的には競技として、つまり大会に参加することを主として取り組んでいます。
将棋で言えば純然たる「指す将」で、あとはすこしだけ「旅将」という感じです。「観る」とかはあんまりないし「指導を受ける」とかもありません。

ただこれはどちらかと言えばたぶん少数派で、当然ながら将棋を生業としたことと無関係ではないでしょう。
基本的にはもうすこしライトに、取り組んだほうが趣味としては楽しいというか、手軽だと思います。

いっぽうで大会に出るということは、そのこと自体がかなりモチベーションにつながるというのが実感です。逆に自分の実力を試したり、勝ったり負けたりという機会が少ないと、プレイヤーとしてその趣味を長く続けることは難しそうな気もします。
最近ギャモン界でも初級戦や、手軽に参加できるイベントが増えていたり、将棋界でも「級位者大会」のようなものが増えているのは、とても良い傾向だと思います。

大会に出ると、誰もがもうすこし勝ちたいとか、もうすこし強くなりたいと思うのが普通です。実力には違いがあったとしても、その気持ちに変わりはあまりありません。
ただ、そのために何をすれば良いかは、本当に難しいものです。

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私のパフォーマンス理論vol.22-言葉について
また為末さんのブログなんですが、自分の足りない部分や劣っている部分を言葉にすることが、その欠点を克服する第一歩ということはよく思います。
自分自身、たとえば将棋や勉強においては、心がけてきたことでもあります。
ギャモンではいままであんまり真剣にはやってこなかったので、今後は(棋譜を残すので)しっかりやって、技術向上につなげたいなと思っています。

これもいろんなレベルがあると思うのですが、たとえば将棋の級位者の方の場合でも、自分自身でこの部分を改善したい、となんとなくでも言葉にすることが第一歩で、それができればその時点で問題は解決しているということもよくあります。
またそこまでいかなくても、たとえばその言葉を口にしてみることで、周りの上級者やあるいは指導者の方から良いアドバイスが得られやすくなるということもありそうです。
なので自分なりに考えて、言葉にしてみて、それを身近な指導者に相談してみる。というのはごく平凡なようでいて、とても大切な上達法なのではないかと思います。
ただあまりに真剣になりすぎても大変なので、趣味の範囲で続けられる程度に、ほどほどにやってみるのが良いと思います。

叡王戦など

昨日は将棋連盟の総会でしたが、その夜には来期叡王戦の組み合わせ発表会が行われていました。
そこで「叡王戦がアベマでも放映される」旨の発表があったようで、まったく知らなかったのでびっくりしました。
すこし前に協業が発表されたものの、その後将棋界で具体的な話は聞いていなかったのでその第一弾という感じなんでしょうか。

叡王戦はクラウドファンディングとか、最近も新たな取り組みがあったりして注目はしているところですが、将棋連盟サイドから何の発表もないのは、ちょっと心配になるところです。
あまり知られていないかあるいは関心を持たれていないかもしれませんが、「日本将棋連盟」もまた、すべての棋戦において主催者なので。
一棋士としては、やはり良い将棋を観ていただけるように頑張ることが一番ですね。

将棋会館の移転に関することも、各紙で報じられており、今後将棋連盟からもリリースがあることと思います。
千駄ヶ谷にある現在の会館は、手狭になってしまって久しく、問題を先延ばしにしてしまううちに老朽化が進んできているので、議論の俎上に出たことはまず良かったと思います。
今後さまざまな困難が予想される中で、なんとか良い形で実現することを期待しています。

名局再び

昨日の王位戦挑戦者決定戦は、木村九段が勝って挑戦権を獲得。
羽生九段のタイトル100期挑戦は持ち越し。
リアルタイムで観てなかったのが残念でしたが、またしてもすごい名局が誕生したようです。
毎局のようにこんな死闘を繰り広げながら勝ち上がるというのは、本当に大変なことですね。

昨日の将棋は飛車を切って自陣に金を埋めた(71手目)あたりが、なんとなく昨年の竜王戦第1局と雰囲気が似ている感じがしました。
横歩取りの将棋は特に形勢判断が難しく、大局観が大事になる印象で、ああいった手順で形勢のバランスが取れていたというのはさすがの一言です。

その後も終わりそうでなかなか終わらないという戦いが延々と続きました。
「難易度の高い局面や状況が多い」「手段を尽くせば簡単には終わらない」のがやはりトップの戦いなのですね。
玉そばの金2枚を次々にタダで取られて難しいとか、なかなかない状況だと思います。

豊島王位ー木村九段戦はトップ棋士同士の中ではまだ比較的対戦が少ないほうだと思うので、どんな戦いになるか非常に楽しみです。

今日は総会につき、中継のない一日。

新記録、会見

一昨日の興奮がまだ冷めやらない感じですが、あの王位リーグプレーオフを経て今日は中一日で挑戦者決定戦なのですね。
大変な日程でしかもあの激闘を思うと、本当に棋力だけでなく気力・体力が充実されていてすごいなと心底感じます。
また羽生ー木村戦はつい先日、竜王戦の本戦進出を懸けた大きな一番で対戦があったばかりでもあります。

昨日のブログを書いたあとで、改めて会見の様子を読みました。
羽生九段の記者会見(王位戦中継Blog)
その他、もちろん各紙・各局で大きく報じられています。

非常に難易度の高い局面や状況を迎えることが多くなりました。間違いやすい局面に出会うことが多くなっているということは、ここ1年くらいの大きな流れとしてはあるのかな、と思います。

これは最近よく言っておられる印象で、僕自身もたしかにそう感じます。
何度聞いても(書いても)、現代将棋の本質を突いた一言ですね。

今回のインタビューで印象に残ったのは、まずこの2つです。

手段を尽くせば簡単には終わらないという側面もある

将棋そのものを解明しようとは思っていなくて、限りなく不可能なことと思っています

これは将棋の難易度が上がってきた、という実感ともたぶん関連しているのだと思います。

僕の勝手なイメージですが羽生先生やいわゆる羽生世代のトップ棋士の方々は、将棋を解明しようという気概を持ってやっている、という側面が強くて、その点を前面に押し出しているように感じることもありました。
それから20年あまりが経って、こういう言葉が語られたというところに年月の重みと将棋の底知れぬ奥深さを感じます。

そういえばいまの若手棋士からは自分の世代と比べても、答えを突き詰めたいという気概のようなものはあまり感じなくて、より現実的というか、分からないなりに最善を尽くすことが大切、という風潮を感じています。

そして「分からないなりに最善を尽くす」ことは、もちろんとても難しいことです。
だからこそ、こんな一言が出てきたのだと思います。

ここ最近のほうがやるべきことが多い

こんなに短くて迫力のある言葉は、いつものことながら、さすがですね。

What a day!

昨日は本当にすごい一日でした。
昼間は練習将棋を指していたのですが、夕方帰ってきてからは、中継にくぎ付けになりました。
終わりそうでなかなか終わらない戦いが延々と続いて中断するタイミングもなく、食卓にまでタブレットとスマホを持ち込んでしまいました。

棋聖戦第1局は、渡辺挑戦者の有利な時間が長かったように見えましたが、終盤の逆転。最後の詰むや詰まざるやはまさに手に汗握りました。
駒を捨てていってギリギリ詰まない、という流れはだいたい負けとしたものですが感想戦コメントによればその先に(先手に)勝ち筋があったようで、最後は指運としか言いようがないでしょうね。
タイトル戦の渡辺さんはああいう流れで勝ちを引き寄せる場面を何度も目にしているだけに、豊島棋聖の充実ぶりを感じました。

羽生九段は最多勝の新記録達成、NHKをはじめニュース速報もたくさん入り、その後の報道量もすごかったですね。
そして将棋の内容が素晴らしかったと思います。
どうしても、すごいものを目にすると語彙が貧困になってしまいますが本当にすごかった。すごい記録です。すごい。

最後に残った木村ー菅井戦はまさに死闘でした。
こちらは延々と形勢のよくわからない長い戦いが続いているように見えましたが、基本的にはずっと後手が押している流れだったようです。
100手以上も延々と苦しい局面を粘り続けて最後にチャンスをモノにする、まさに百折不撓の逆転劇でした。

将棋はすこし不利なほうが良い粘りをすると、簡単には決着がつかず見ていてハラハラするような展開が続きます。
振り返ってみて、やはり3局ともそういう将棋だったのだと思いますね。
昨日の将棋のうち1局は来春の名局賞に選ばれる可能性が高そうですが、どうなるでしょうか。