ニュースバリュー

昨夜のAbemaTV・炎の七番勝負は、既報の通り藤井四段の勝ち。
本局も、本当に強い勝ち方でした。
対戦相手の羽生三冠、放映に登場した佐藤名人、モバイル中継で解説した渡辺竜王、トップ棋士せいぞろいで、皆さん感心しきりだったようですね。
それも当然と思える将棋の内容でした。

あまり安易に「天才」という言葉を使うのはどうかと思いますが、さすがにここまで規格外だと仕方ないですね。
一部報道では「神の子」という表現を使っている記事もありました。
実は仲間内で、そう呼ばれていた後輩棋士が他にもいるので、ちょっとした違和感を覚えつつも、なるほどという感じです。
終盤の場面は、後手から△8七歩と打てず(二歩)、先手からは▲8七歩と合駒があってまさに「一歩千金」という状況で、まるで将棋の神に祝福されているかのような、美しい収束と感じました。

次の日曜夜に再放送があるようですので、改めてご覧になりたい方はぜひどうぞ。
【4/25 追記】期間限定で、オンデマンド配信の無料放送もあるようです。

終局後は、各社一斉にかなり報道していただいたようです。
この対局はあくまで非公式戦なので、ある意味では内輪の出来事でもあると思うのですが、もはやそういう感じではなかったですね。
もちろん、新四段が羽生先生に勝つというのはとんでもないことです。
ただし、別にタイトルが動いたとか、そういう話ではありません。
にも関わらず、将棋界だけではなく、社会に対して大きなニュースバリューがあると判断されたことが、本当に素晴らしいことだと思います。

この数年間で、将棋に関するニュース・報道は目に見えて増え続けてきました。
以前であれば将棋界内部の話題にとどまっていたようなことが、一般のニュースになったり、あるいは将棋の大きなニュースが、あれもこれもすぐにトップニュースになったりという変化を、日々実感していました。
そう仕掛けた面もあり、気が付いたらそうなっていたという面もあり。
後者のほうがはるかに大きいですが、努力がそれ以上の結果となって跳ね返ってくるのは、理事職を務める上でも大きな活力になっていました。

いまなお、その流れは続いていると思います。
僕が将棋界の未来は明るい、と繰り返し書いてきた一番の理由はここにあります。
「将棋」それ自体、そのものが大きなバリュー、価値のあるものに、なってきました。
もちろん、元々がそうだったのです。
でも、それが目に見えて具現化されてきた。素晴らしいことです。

ところで、藤井四段、14歳。
いま、奨励会員として棋士を目指している子の多く、おそらくは半数ぐらいかそれ以上は、彼より年上ということになります。
あまりに途方もなくてくじけそうにもなると思うけれど、将棋が好きで続けていきたいのであれば、どうかあきらめないで頑張ってほしいと願います。

自分の場合は三段リーグを抜けるのに10期かかって、22歳で四段になりました。
ひとつ一つの例を挙げるまでもなく、棋士人生もそれぞれです。
世間は誰かと誰かを比べたがるものだけれど、大事なことは、目の前の将棋を頑張ることです。
そこには何のニュースバリューもないかもしれない。でも、何よりも大切なことです。
僕もその気持ちだけは、これからも忘れないようにしたいと思っています。

3件のコメント

  1. 羽生先生は師子王戦で藤井四段に勝っていますがニュースにはなっていません。
    (三冠が四段に勝つのは当たり前ということでニュースにはならないとは思いますが)プロ同士の対局なのでタイトルホルダーやA級棋士がまけることもあります。しかし今回の対局はマスコミの取り上げ方がすごくて驚きです。
    私の地元(岐阜)では藤井さんへの期待はすごく、名古屋の栄道場でもその話題で持ちきりですし新聞やテレビでも大きく取り上げられています。
    岐阜出身の奨励会の二人(宮嶋健太初段、高田明浩1級)にも是非後に続いていただきたいと思います。

    1. 地元の応援は本当に励みになりますし、彼にとってもとてもありがたいことと思います。
      自分も広島出身なので、実感があります。
      これからも期待して応援してください。

  2.  藤井先生の話ばかりが盛り上がっていますが、どこかのテレビでやっていた新四段の杉本四段の涙は非常に印象的でした。
     西田四段もそうですが、苦労をしてやっと、というお二人なので印象に残りました。

     もちろん棋戦ではがんばっていただきたいですが、年齢とともに衰えが来るのは当たり前の話です。
     「天才」同士がぶつかり合っているのですから。

     私は45を超えた年から将棋を改めてやってみようと思いました。それはある先生の初心者講座のおかげです。

     将棋は小学生など若い人が多い。一方で囲碁は高齢者も多い。
     要するに将棋は一般の成人の参入障壁が高い上、参入してもフォローがないために退出者が多い。
     これが囲碁と将棋の違いかと思います。

     「ライトな層」をいかに取り込むかだと思います。そうでないと藤井先生の快進撃もメディアには取り上げられたものの、一般市民には「へぇ、すごいね」で終わって、将棋人口の増加につながらないと思うからです。

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