名人戦

名人戦はかなり激しい進行になりました。
封じ手の局面は、僕の感覚では角桂交換で駒得の先手が、すでに優勢に見えます。
しかし現代将棋では、角の価値が下がり気味で、歩切れは重視する傾向にあり、このあたりをどう見るか。
これで形勢のバランスが取れているとしたら、すごいことという気がします。
両対局者はどう感じているのでしょうか?

前例を外れたのがこの局面。
この局面は昨日も書いた「間を空けて登場する将棋」になるのかどうか?
ここに至るまでに先後双方に変化する手がいくつかあるので、流行形になるというよりは、押さえておくべき変化のひとつ、という感じになるのではという気がします。

実戦例を調べてみたところ3局で、昨年6・7・10月にそれぞれ1局ずつでした。
前例で△8二飛がなかった理由としては、△2四飛のほうが、次の▲4五桂に対応している(△3四銀と逃げることができるので)ということだと思っていました。
△8二飛が意外な新手なのは、本譜のように駒損になる手順が見えているのに、あえてそれを受け入れようとする点にあります。

ちなみに、こうやって理由づけをしながら局面を把握していかないと、人間は(僕は、と言うべきか)定跡を覚えられません。
なので、こうやって新しい考え方の手が出てきて、それが正しいと考えられる場合には前の考え方を、捨ててかかる必要があります。
このときが一番、記憶がぶつかって混線しやすく、その局面を正しく認識しておくという観点から、危険な状態と言えます。
前例そのものを記憶していて、判断がついていない、あるいは間違って認識している、という状態になりやすいからです。

過去の実戦例を無限に記憶していられて、かつ、いらなくなった棋譜は捨てて、必要になったらまた引き出せて、という作業が脳の中で自由にできたら、どんなに便利かと思います。
実際はまったく「自由に」はできず、ものすごく不自由で、ものすごく負荷をかけながら、やっています。
トッププロの情報整理力はすごいと、いつも思っています。

たとえばこの△8二飛の局面が、対局前の2人の脳内にはどういう形で認識されていて、対局後にどういう形でアップデートされるのか。という点に僕は興味があります。
ただ、それは(たぶん)解明されることのない疑問でもあります。
我々にできることは、この局面は実際のところどうなの?(どちらが優勢なのか)ということを、突き詰めて考えることだけだからです。

今日は土曜日なので、いつも以上にじっくりご覧になれる方が多いかと思います。
主催紙の新聞紙面やウェブに加えて、現地や将棋会館の解説会、日本将棋連盟モバイルや名人戦棋譜速報の中継、各種映像メディア、たくさんありますのでぜひお楽しみください。

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