昨日の三段リーグの結果を受けて、里見さんの退会が決まったことを各紙のニュースで知りました。
決まったときにニュースが出るものなのかは、ちょっと気になっていたのですがやはり注目されていたのですね。
三段リーグというのは、実力上位の本命と目されるような三段であっても一回のリーグで見れば上がれない可能性のほうが高いので、それを乗り越えて四段になるには当然に高い技術と精神力と運を必要とします。
女性四段の可能性について、僕もこれまで記者やファンなど多くの方から質問される機会があったのですが基本的には確率の問題だと思っていて、実際いつもそう答えています。
つまり男性三十数人のリーグの中に女性数人だけが参戦して、その数人が結果を出すのは相当に困難です。
もちろん本人に飛びぬけた才能や実力があれば別なのでしょうけど、現実にそうなる可能性は高くないという意味です。
可能性は高くないというだけで、可能性がないとも思いません。
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僕が里見さんを初めて見たのは第1回の村山聖杯将棋怪童戦で、まだ僕自身も棋士になる前のことでした。
その年、伊藤沙恵さん(現女流二段)も東京から参戦していて、女の子の活躍は珍しいので注目したことをよく覚えています。
その後棋士になって、島根に仕事に行ったとき、車で一緒になったことがありました。
僕はお母さんとたくさん話して、本人はとてもおとなしかった記憶があります。
隣の県の出身で、彼女を教えたアマチュアの方々の中にも知っている人がいたりするので、当時から注目はしていましたがその後の大活躍はもちろん想像はつきませんでした。
三段リーグに入ってからの、これまでの結果は本人にとって残念だったと思いますが、さまざまな障害や軋轢を顧みず、自分が挑戦したいことに挑戦したという点において悔いはないのではとも思います。
挑戦するという決断自体に高いハードルがあり、実際に挑戦してからも必要以上に注目を集めてしまうという意味で、他の棋士や奨励会員には知りえない葛藤を抱えていた数年間だったと想像しています。
今後はまた楽しく将棋を指せるようになることで、さらに棋力が伸びることもあるかもしれません。
注目の集まる最高峰の晴れ舞台と、陽の当たらないはずの場所。
楽しい将棋と、苦しい将棋。
その両方を同時に知っているプロはいないので、そこは彼女の大きな強みになるのだろうと思います。
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最近は情報の深化で、奨励会員の中にもファンに知られた存在がいたりもしますが基本的には奨励会は陽の当たらない場所ですし、またそうであるべきです。
存在そのものが苦しい場所で、そこで指す将棋は苦しいものと決まっています。
だからこのニュースに本人のコメントがなかったのは良かったのではないかなと、記事を読んで思いました。
語るべき言葉や指し手は今後タイトル戦や棋士との公式戦で示してくれると思うので。
女性四段がいつ誕生するかは自分には分かりませんが、可能性は低い一方でいつかは必ず起きるはずのことなので、ファンの方にはどうかその日まで応援していただけたらと思います。(もちろん里見さんや西山さんに限らず)
ファンとしては、休場されたときの体調不良から、完全に回復されているのかどうかも、気にかかっています。
復帰されたとは言え、「回復した」と明言された記事は見たことがないので、回復の程度と年齢制限、女流棋戦との兼ね合いで、苦渋の選択だったのかなと心配していました。
もし既に完全に回復・治癒(?)しているなら、または今後そうなることがあったなら、安心する・うれしいニュースとしてなんらかの形で知りたいなと思います。
片上先生、いつもブログを拝見しております。ご本人の心境が分からないので何も言えないのですが、プロ棋士の方がコメントを出してもらえると、ファンとしては少し救われるような思いです。ありがとうございました。