12/22 杉本四段戦

先日の王座戦の対局、最後に詰みを逃れて勝ったのは対局翌日に書いた通りですが、中盤にも印象的な場面がありました。

図は53手目の局面で、この6五歩の向きが何よりも重要と考えての着手。
善悪は分かりませんが人間の将棋は、こういう思想を持って指すことが大事かなと思います。

もちろん△同桂と取れますがそれは▲6六銀△6四銀▲6七金右という感じで難しい。
実戦は△6一飛で、杉本四段はこの手を後悔していたようですがそれはそれでいい勝負、といったところだと思います。
以下は中盤の難しいねじり合いです。

実は僕は、以前にこれと似た局面を経験していました。
それが下の図で、違いは後手陣の△1四歩と△7三桂のみ。
対局中は確信まではなかったのですが、調べてみるとやっぱり思った通りでした。

1年半前の棋王戦の将棋で、相手は杉本昌隆七段。
杉本姓のお二人と、これほど似た局面を迎えるとはなんとも奇遇です。
以下は△7三桂▲5五歩△同歩▲6六銀・・と進行、この後自分なりにうまく指せたこともあって、印象に残っています。

上の図で△1四歩とは指さないので、理論的に考えると上の図はこちらが悪いか、もしくは下の図はこちらが良いか、いずれかはっきりしそうなものですがよく分かりません。
当時も難しいと思ったし、先日も(前例より損なので)自信はなかったものの、やっぱり難しいと感じていました。
こういう場面に出くわすとき、将棋は難しいものだとつくづく思いますね。

 

対局前のエントリで久々に枠抜けの一番、と書いたのですが実は王座戦では、前期も予選決勝まで行ってそこで完敗したことを、後で思い出しました。
その将棋は阿部光瑠六段に珍しい序盤を指され、それなりに意義のある内容だったものの、当時はとても振り返る余裕などなくて、すっかり忘れていました。
最近は内容や結果はともかくとして、一生懸命指せていると思います。

それともうひとつ、大事なことを書いていませんでした。
本局は近藤六段による観戦記が日経新聞に出ますので、ぜひそちらもご覧いただけると嬉しく思います。
観戦記で勝局も久々のことで、たしか1年半ぶりだと思います。

また王座戦一次予選の枠抜けは、新四段の年以来なので、なんと13年ぶりのこと。
過去予選決勝で4回負けていたはずで、久々にチャンスをモノにすることができました。
次も良い将棋が指せるように、頑張ります。

年末年始のこととか

昨日に続いて、渡辺明ブログより。
すこし前の記事なんですが、こちらを読んで思ったことを少々。
予定とか。

個人的には大晦日というと、どうしても電王戦関連のイベントを思い出しますね。
初めてのリベンジマッチ(船江六段がリベンジに成功)、あの仕掛け自体は無理なんでしょうけど、攻め筋としてはいまでも生きているし、いろんな意味で意義のある対局でした。

「森下ルール」の対局は決着がつかないまま年越しとなり、いまをときめく中村王座・金井六段と解説室でカウントダウンしたのは忘れられません。
佐藤康光九段がなぜか応援に戻って来て下さるという超サプライズもあったり。

と思い出話はさておき、ここにもある通りたしかに、年末年始に公式戦の対局が1週間以上も空くというのは、観る側の都合を考えるともったいないかもしれませんね。
そもそも近年は棋士数・棋戦数ともに増えて対局日程も大変になっているので、この1週間を活用する手はもっと検討されても良さそうです。
触れられているNHK・Abemaのお正月番組も、おそらくは収録なので、かえってスター棋士の過密日程に拍車をかけているのではと思いますし。

僕自身は今年は28日(将棋連盟事務局は例年この日が仕事納め)に対局がついているのですが、もっと後でも個人的には歓迎です。
対局を30日まで普通にやって、31日と1日と2日は非公式戦やイベントの放映、あとは3日と4日に何か入れられれば毎日将棋を観られる環境になりますね。

それとサッカーと同じように、将棋も天皇杯がいただけないかなあと常々思っています。
最近は国技であるところの相撲界が不祥事に揺れているみたいですが、相撲にも賜杯があります。
競馬にもありますし、他にもいろいろな世界にあります。
将棋も日本の伝統文化として、こうしたスポーツに負けないぐらい、国の内外にアピールする力を持っていると思いますので。
そういえば今年は、陛下のご挨拶でも将棋の話題がありました。
千載一遇のチャンスではないですかね。

 

しばらく前の記事をもう一つご紹介。
いままでありそうでなかった良記事と思います。
女流棋士に聞いた、美しく指すコツとは? 綺麗な駒の持ち方を動画でマスターしよう(連盟HP)

手つきを見ると、だいたいの棋力が分かる。
とまでは言いませんが覚えて間もないか、そうでないかはすぐ分かります。
観る将専門の皆さんもぜひ、指す前にまずは手つきから入ってみてはいかがでしょうか。

 

 

昨日は日中ずっと年賀状書き、ちょっと印刷が足りず追加が必要そうですが、8割方は終わりました。
引っ越してまだ半年なので大掃除はそれほど必要ないし、これで無事年が越せそうでひと安心です。

最近の棋界ニュース

昨日は中継局をまとめてご紹介しましたので、今日は盤外のニュースを。
ここ数日だけでもいろいろありました。

まずはこちら。
佐藤康光九段・森内俊之九段 紫綬褒章受賞記念祝賀会のお知らせ

会長・専務ともご自分が主役のパーティーは久々ですかね。
当たり前ですが紫綬褒章のお祝いが重なった例は過去にないでしょうし、今後もまずないのではと思います。
なお何日か違いで羽生竜王就位式のお知らせも出たのですが、こちらはすでに〆切になったみたいです。

2017年日本の10大ニュース(読売新聞)
読者投票で、「藤井四段29連勝」のニュースが1位とのこと。

棋界ニュースではなく、「日本の10大ニュース」の1位です。
皇室や政治やスポーツのニュースを押さえての1位です。
本当にすごいことですね。

羽生永世七冠と囲碁の井山七冠の対談記事が出ていました。
リンクがいくつかに分かれているので、ここでは動画を貼っておきます。
毎日新聞

AIへのスタンスなど、興味深く読みました。
国民栄誉賞は明日正式決定の見込みだそうですね。

佐藤天彦名人の「お城」を特別取材(家庭画報)
自宅インテリアの写真がすごいインパクトです。
こだわる気持ち自体は誰しも理解できるけれど、実際にここまで情熱を注げるというのがすごいですよね。

 

昨日の叡王戦はその佐藤名人(叡王)が敗れ、これで6人いるうちの現タイトルホルダーのうち、残るはなんと渡辺棋王ただ一人に。
これはちょっと珍しいことですが、今年はタイトル戦のたびに挑戦者が違うという状態が続いているし、戦国時代ということなんでしょうね。
年内にもう一局あってベスト8が出そろい、その先が年明けというスケジュールのようです。

叡王戦。(渡辺明ブログ)
よく見ている方は気づかれたかもしれませんが、普段と図面のデザインが違います。

これはこないだたまたま夕休で一緒になったときに「図面ってどうやって貼ってるんですか?」と聞かれたので、お教えしたのですがさっそく使ってくれたようで。
shogi io(将棋アイオー)

これとgoogle chromeのスクリーンショットを活用すれば、ブラウザのままで作業できるので便利です。
お世話になっているので、以前から紹介しようと思っていたのですが、機会がないままになっていました。

あと叡王戦といえば、ドワンゴの川上会長が代表退任というニュースがあって驚きました。
何度かお話させていただいたこともあり、著書もたくさん読んで、個人的にもいろいろと感銘を受けていました。
今後もきっと、社会に目を向けてまた違った活躍をされるのでしょうね。

最近の中継

自分の対局があったのでしばらく触れていませんでした。
ここ数日も好カード、好局ぞろいでしたのでまとめてご紹介したいと思います。
昨日は対局の疲れで完全オフモード、でもそんな日でも将棋観戦だけはしています。
つくづく、いい時代になったものだと思います。

昨日の叡王戦は深浦九段の逆転勝ち。
藤井四段の悔しがり方は、ファンの間でも話題になったみたいですね。
たしかにこれだけ勝ってて一つの負けを悔しがれる闘志はすごい。
内容的にはずっと藤井君が押していたでしょうからね。
勝っても負けてもニュースになる藤井四段、今回は「A級の壁」という言葉が見出しなどに多く使われていて、3月のライオンに出てくる「A級ナメんなよ」の名シーンを思い出しました。

朝日杯は二次予選が全局終了、本戦進出者が決定。
菅井王位は昨日の2局と、その2日前のB1でも中飛車舟囲い(?)を連投して3連勝。
またまた菅井流の新戦法でしょうか。あの独創力は本当にすごいです。

それと朝日杯は21日の佐藤ー中尾戦がすごかったですね。
やはり将棋の終盤は入玉と寄せ、攻めと守り、そして秒読みがからむと特に難しい。

そして、本戦1・2回戦の半分は名古屋での公開対局が行われるそうで。
なんか反則級の超豪華メンバー集結ですね。
これまでタイトル戦以外では、将棋会館以外での対局は稀でしたが、今後はテレビ・ネットでの中継とともに、こうして観ていただく機会が増えていくのが理想でしょう。
もっとも実現はなかなか大変とは思います。警備もきちんとしないといけないでしょうし。

リコー杯は里見さんの逆転防衛。
中飛車からの似た形が続いたシリーズ、第5局の序盤は居飛車がまずまずのワカレに見えましたが、中盤以降の指し回しが見事でした。
全冠制覇がいよいよ現実のものになってきた感があります。
これで年内のタイトル戦はすべて終了となりました。

また順位戦も一昨日のA級、久保ー広瀬戦で年内の対局はすべて終了。
同じ日に対局していたので昨日観たのですが、すごい終盤でした。
この将棋は最後の△5二飛という華麗な決め手がクローズアップされそうな気がしますが、そこに至るまでの組み立て、粘り方が参考になる一局だったように思います。

その前日のB1は谷川ー糸谷戦が特に面白い将棋でした。
糸谷玉は常に旅をしていないといけない運命なんですかね。
ちょっとマネできないし、マネしたいとも思わない豪快な勝ち方でした。

この日は全体的に力戦が多く、棋界全体の傾向を反映している気がしました。
順位戦はこれでB1は糸谷八段が全勝ターン、A級は久保王将と豊島八段が2敗で首位、ということで今期も関西勢の活躍が目立っています。

まだまだあるのですが長くなってきたのでなってきたのでこのあたりで。
今日も叡王戦本戦の中継(放映)があります。
15時からの対局開始は、平日だと家に帰ってから観られるのが良いですし、日曜日だとNHKと重ならないのも利点かもしれませんね。

勝ち

昨日の対局は、中終盤いろいろなことがあった末に深夜10時半頃、はっきり勝ちの局面になったのですがそこからドラマがありました。
面白い将棋ではあったと思うので、モバイル中継をご覧いただけると嬉しいです。

まず135手目、▲5五同歩が波乱の呼び水でした。
王手をうっかりして、ここで一度、軽く血の気が引きました。

ただ局面は、冷静に見ればまだ勝勢。
そこに140手目△7一馬、再び思いもよらぬ手が飛んできてびっくり。

ここで残り3分から、ちゃんと1分使ってるんですよね。
自玉はZに近い・・ことを確認したつもりだったのですが、詰み筋に気づけば▲5四金ととりあえず王手したことでしょう。(実際それが最善で勝ち筋)

△7七銀と打たれて、今度こそ本当に血の気が引きました。
その瞬間、周囲の全ての音が止まったような気がしました。

▲同玉は一番詰みそうなので(実際詰んでいた)、▲同金か▲同桂かを指そうとしていました。
(ちなみに▲同桂は△8九飛▲7七玉△8八銀▲8六玉△7七銀不成という順で詰み)
呆然としながら秒に追われて指したら、なぜか玉が7七に動いていました。
予定と違う手を指した、という経験は、もしかしたらあったかもしれませんが記憶にはないです。

△7七銀に▲同金の変化は、△8九角成▲同玉△6九竜に▲7九金合だと△9八銀!▲同玉△9七飛!という順でぴったり詰みます。
(以下▲同玉△8五桂▲8六玉△7四桂▲7五玉△8四金まで、竜がちょうど6五に利いている)


でも▲7九角合が△9七飛に▲同角を用意して詰まないのでは?と終局後すぐに杉本君に指摘され、なるほどと納得。
これが145手目の感想戦コメントに載っています。
しかしさっき柿木にかけたら以下△9八金▲同玉△7八飛!で8八に合駒をさせて△9七銀で詰み、と指摘されました。
(7九角の利きをさえぎるのがポイント)

また本譜151手目▲7九香合の局面は、△7七桂▲9八玉△8八金▲同玉△8九飛▲9七玉△9九飛成▲9八合△同竜▲同玉△6八竜という筋で、これも難解ながら詰んでいたようです。


両者呆然自失、なので仕方ないですが感想戦で調べて詰みなしと結論づけたのに詰んでいた、というのも珍しいことです。
結論としては、最初の△7七銀の図の時点で詰んでいて、最終的な敗着は152手目の△8八金、ということになるようです。

実戦の結末はこの後、杉本四段が詰みを逃しての逆転勝ち。
いままで何度もトン死負けは経験していますが(今期もやらかした)、相手が詰みを逃して勝ったのは初めてではないかと思います。
いくつかあった詰み筋も、本譜の不詰めも、どれもけっこう奇跡的な順で、本当に驚きました。
ちゃんと毎日詰将棋解いてるんですけどね。実戦の終盤で正しく読んで正しく指すことは難しいです。

ともあれこれで久々の二次予選進出です。
今年は本当に苦しい年でしたが、頑張ってきたご褒美と、もっと頑張りなよという激励を、将棋の神様からいただいたような気がします。
見ての通りで、とても弱い自分ですが、次も一生懸命指したいと思います。