8/28 飯塚七段戦

やっと勝局が書けます。
勝っても負けても必ず反省はするわけですが、負けてばかりで振り返るのはつらいものです。
良いことがあるから次また頑張れる。
ひとつでも多く勝ちたい気持ちは、若い頃と同じかそれ以上です。

この将棋は終盤に入ってから、相手玉が詰みそうできわどく詰まない、という場面が2回ありました。
それはそれは必死に読みましたが、どうしても詰みません。

こういう場合、どこまで詰みを追いかけるか、それ以外の手をどういう割合や優先順位で読んでいくか、という難問があります。
持時間という制約がある中で、これは本当に究極の選択で、当然ながらその将棋においては勝敗を分ける場面にもなります。

ちなみに、後日柿木将棋にかけてみたところ、2回の「詰みなし」と読んだ場面のうち、最初のは実際には詰んでいたことが判明しました。
詰みを逃したということなので、判断ミスと言えなくもないのですが、見切り発車して失敗するよりは良いですし、本譜が正しく勝ちだったとすれば、どちらが正解だったかというのはかなり微妙な問題です。

「長い詰みより短い必至」という有名な格言がありますが、「超難解な詰みか、難しい勝ち筋か」のどちらを選ぶか、セオリーはないのでその時々で一生懸命読むしかないのでしょうね。
逃した詰み筋は、柿木が30秒近くかけて教えてくれたほどなので、実戦で読み切れなかったことは残念とは言え、仕方なかった気がします。
(下に載せた図は、3秒と1秒)

さてその場面はスルーして、最後の最後、本当に詰まさないといけない場面。
これを無事読み切って、勝つことができました。
せっかくなので、昨日に続いて、実力者の方は後手玉を詰ましてみてください。
ただ昨日よりはだいぶ難しいと思います。
答えは帰ってきたらコメント欄に書きます。

ちなみに直前の手は△1四馬(歩を払った)でしたが、代えて△3一桂と打つ手もけっこう強敵で、これに対しても詰みを読み切らないと勝てません。
さらにこちらも、良かったらどうぞ。

毎回こういう面白い終盤に出会えるわけではないのが難しいところですが、やはり終盤のどちらが勝つか分からない場面が将棋の醍醐味なので、自分の実戦でもこういう場面に出会いたいですし、そこでミスなく指せるようにしたいものだと思います。

本局は↑の2つの詰みをきちんと読むことができたので、それなりに満足のいく一局になりました。

8/22 村田五段戦

対局翌日にも大いにボヤいてしまった通り、この将棋は反省点が多すぎる一局でした。
勝つチャンスも何回あったのかという感じで、全部言ってたら図面がいくつあっても足りません。

図は件のトン死した場面。

せっかくなので(?)実力者の方は、後手玉の詰みをお考えください。
答えは帰ってきてからコメント欄に書きます。

ちなみに△1七角の王手に▲2八香合△2七歩の局面なのですが、このやり取りがミソで、▲1三飛の王手に、△2三歩合が利きません。
もっともそれは承知の上で、大丈夫と読んだのですが全然大丈夫じゃなかったと。

もし詰みに気が付いていれば、仕方なく△2七桂▲4八玉△2六角成とするところで、それでは負けそうなんですがトン死することはなかった。
対局中はギリギリ詰まないと読んでいたので、△2七歩でも同様に進んでくれるものだと思っていました。

人間が甘い。
棋士人生の中でも何本かの指には入るであろう、猛省の一局です。

お知らせ

予定通りであれば昨日あたり、連盟HPの「まいにち詰将棋」のコーナーに、自作が採用されているかと思います。
このコーナーは、土日祝は棋士の新作が掲載される仕様で、僕もたまに投稿させていただいています。
日々のトレーニングに、ぜひ活用してみてください。

今日は対局の振り返りはお休みで、明日からまた再開します。
以前も書いた通り、将棋に関してのご質問は基本的に必ずお答えしますので、何かありましたらコメント欄にお寄せください。
コメントについて
あとでまとめて読ませていただきます。

それとテレビ出演のお知らせです。
9/27(水)に有名なクイズ番組の「タイムショック」(テレビ朝日系列)に出させていただいています。
良かったら、ご覧ください。

すでに収録は終わっています。
放映されたら、改めて感想を書こうと思っています。

8/15 高見五段戦

朝日杯の1回戦。
持時間は40分で切れたら1分将棋、この設定は朝日杯だけです。
他に叡王戦と棋聖戦一次予選が1時間の切れたら1分で、下位クラスの棋士は特に、最近は1分将棋を指す機会が多くなりました。

この将棋は先手番の三間飛車から、角を右側に転回する将棋。
古めかしいようでも、現代でも十分通用する作戦だと思います。
ただ堅い堅い居飛穴を相手にしないといけないので、勝ちづらさはあるかもしれません。
そこがカバーできるだけの力を身につけたいと思っているのですが。

図は4六にいた角を2四に逃げた局面なのですが、なぜかこの手が見えておらず激しく動揺。
角を逃げるなら△6五歩(飛車取り)▲同馬に7三(あるいは8二や9一)に逃げるしかないものと思い込んでいました。
その手順はそれほどイヤではないので、本命は角を逃げずに△4五歩とヒモをつける手でした。

この局面では▲3八金上とでもしておけばいい勝負なのですが、実戦は▲7三桂成と強烈な自爆。
ちょっと将棋が崩れているのを感じました。
渡辺戦の▲4四角もそうですが、指してすぐそうと分かるあからさまな大悪手はいただけません。

▲7三桂成以下は△同桂▲9三馬△6五歩▲同銀△同桂▲8四馬△5七桂成とキレイにさばかれて大敗。
居飛穴党の初段~三段ぐらいの方には、参考になる手順かなと思います。
逆に振り飛車側の視点で言うと、△6五歩と相手から桂を取ってもらって、▲同馬~▲7五馬と押さえ込みを目指さないといけない形です。

本来であればかなり長手数の、こってりした戦いになっていたはずなので、そうならなかったことは勝ち負けは別にしても、とりわけ残念なことでした。

7/26 渡辺(正)五段戦

指し直し局は先手番になったので、久々に藤井システムを採用。
この戦法は先後の差が大きく、特に先手番ではいまでもかなり有力だと思っています。
指し直し局に続いて、相手に前例の少ない対応をされて、千日手局はまずまずだったのですが本局ではすこし失敗してしまいました。

そういえば、渡辺五段はこの正和君と、もうひとり大夢(ひろむ)君がいて、大夢君は受け将棋で有名なんですが正和君も比較的受け将棋ですね。
プロ棋士も多くの人は攻めるほうが好きなので、珍しい偶然だなあと指してみて思いました。
(正和君とはこれが初手合、大夢君とはまだ指したことがない)

図は中盤の勝負所で、いま▲5六銀(飛車道を通す)△5五歩(反撃)▲6四飛(手抜いて勝負と飛車を走る)△5六歩(当然銀を取る)と進んだ場面。
相手はすこし前から、自分はちょうどここから30秒将棋。

先手を取るのが何より大事なこの場面、どう見ても▲4四飛(金取りなので手抜けない)の一手なんですが自分の指した手はなぜか▲4四角。
当然手抜きで△4五桂と打たれて、一手で敗勢に。
ちょっと理解不能な悪手で、呆れました。

大きな悪手が出るときにはそれなりの理由があることも多いですが、いっぽうで「なぜそう指したか分からない」という不思議なことも多くて、この場合ははっきり後者です。
こういうのがなくならないと、勝率は上がりません。

中盤以降では、他にこれという反省する手はなかったので、あまりにももったいない一手でした。

銀河戦は前期は久々に本戦で2番勝てたので、今期もぜひ出たかったのですが残念。
過去一番良いところ(ベスト8)まで行った棋戦でもあります。
今後また決勝トーナメントに出られるように頑張りたいと思います。