電王戦

既報の通り、佐藤名人は敗れました。
当然ながら将棋界にとっての一大事ですし、大きなニュースにもなっています。

そのことについてはまた改めて考えていくとして、今夜は序盤の話を。
午前10時、ponanzaの初手は▲3八金!?でした。

この手は、プロ棋士の公式戦ではまずお目にかかれない手、はっきり言って、ちょっと悪い手だと思います。
一昔前ならただの挑発ですが、いまのコンピュータ将棋は、特に先手番だと出だしをかなり自由に指してくるらしいです。
そのほうが的を絞られにくく、また、さほど局面が不利になるわけではない(統計的にも、そこまで勝率を下げない)という考えなのでしょう。

続く佐藤叡王の指し手は△8四歩、対してponanzaの3手目は▲7八金!

まあ角頭を守るのは将棋の基本だし、この3手目は(初手▲3八金とは違って)実は普通と言えば普通なんですが、どこか人をおちょくったような印象も受ける、そんな局面です。

結局この将棋はわりと普通の相掛かりになりました。見た目は奇抜でも、なんとなく自然な駒組みで、なんとなく見たことあるような局面に落ち着いていくのは、コンピュータ将棋ならではです。
というのも人間の場合、強くなっていく過程である程度、形と手順をセットで身に付けていくものなので、3手目にして変な手を指す人というのは、その先普通の局面に持っていけないのです。

なので、この出だしは良い子はマネするべきではないし、強い人ほどマネしません。
結果的にこのあと勝ったのはponanzaが強かっただけで、▲3八金や▲7八金が良い手ということにはなりません。


さて、僕だったら初手▲3八金に対しては、まず振り飛車を考えます。
というのも本譜のように相掛かりになったら、▲3八金と上がる手は全く不自然ではないですし、一方振り飛車にして、普通の対抗形になったら、4九の金は本来5八に上がるべきものなので。

たとえばこんな感じになったら成功(振り飛車作戦勝ち)でしょう。

これをふまえて、自分がもし(人間に)初手▲3八金とやられたら、2手目は△4四歩か△4二飛と指すような気がします。
△3四歩とか△8四歩だと、あまりに普通すぎて、なんとなく気合負けだと思うかもしれませんし。

その場合、先手は糸谷流を目指してくるんでしょうか?
たぶん▲3八金が損にならない駒組みを目指すのだと思います。
(この「損にならない」というのも、別に良いという意味ではない。特に悪くはない、というだけのこと)

振り飛車側としては、もっと早めに△4五歩と突いてしまうタイミングがあるかどうか。
そうすると見たこともない乱戦になるのかもしれません。

実際の対局に役に立つ可能性は極めて低いのですが、今朝はこんなことを考えていたので書いてみました。

電王戦はタイムシフトでも観られますので、後からじっくりご覧になりたい方はこちらへ。

日本将棋連盟モバイルでももちろん棋譜を見ることができます。

リニューアル

年度替わりの本日より、ブログ再開します。

振り返ってみると、2006年11月からなので、もう10年以上ブログを続けてきたことになります。(旧館はこちら

十年一昔と言うぐらいで、もちろんこの間には自分の身の上にも本当にいろんなことがありました。
ただ、ことブログに限って言えばデザインは一度も変えることなく、スタンスもそれほど大きくは変わらず、やってきたように思います。

今後も同じように続けていこうと思えば、難しいことではなかったのですが、何か変えるのであればこのタイミングと思ったのが、リニューアルのきっかけの一つです。
他にもいろいろと理由はあり、それはおいおい書いていきたいと思います。

 

十年前はウェブ上に何かを書いている棋士はまだ珍しく、SNSはmixiが流行していた頃だったと記憶しています。

その後ブログを書いたり、twitterアカウントを持つ棋士もかなり多くなりました。

インターネットの世界もずいぶん変化してきました。
自分自身、この数年は本当にまったくフォローできておらず、特にスマホアプリとかは全く分かりません。これを機会に少しでもいろいろやってみようと思っています。

将棋界は近年、ニコ生やAbemaTVなど、ネット動画の世界と深くお付き合いできるようになってきました。
十年前に、いまの状況は想定できなかったと思うので、今後も時代にキャッチアップして、想定外の良い変化をつかめる将棋界でありたいと思っています。

 

このブログでは、いままで通り自分の日常のことももちろんですが、今後はより将棋(盤面)中心にして、注目の対局や将棋界の話題などを、取り上げていきたいと思っています。

当面はできる限り毎日更新を目標に、うまくリズムが作れればそれ以上の更新も考えています。

自分のブログを読んでもらうことで、将棋を観て楽しむ人がより増えてくれるように、また、楽しんでもらうための一助となれるようにというのが一番の願いです。

 

次の投稿では、電王戦第1局について書くつもりです。
注目の最終頂上決戦、佐藤天彦叡王(名人)がどんな準備をしているのか僕はまったく知らないのですが、いつも通り王道の、受けて立つ将棋で臨むのではと予想しています。