棋聖戦

前のエントリにも書いた通り、昨日は準々決勝最後の1局が行われていました。
4強出そろう
前の3局もどれも熱戦でしたが、それと同じかそれ以上の大熱戦で、面白い将棋でした。

終盤はすこし後手良しかなと思っていて見ていたところ、最後は詰むや詰まざるやの形に。
ここも、ギリギリ詰まないかと見えましたが、結果は長手数の見事な即詰みに。
後で改めて考えてみたら、やっぱり詰まなかったようで、自分の直感は正しかったみたいです。
ただ、1分将棋の実戦ではどちらに転んでもおかしくない、指運の勝負だったと思います。

この将棋は序盤の後手の切り込みと、その後すこし流れが落ち着いていく展開、そして終盤になだれ込んでからのねじり合いと、見どころたっぷりでした。
個人的には、111手目に▲6七角と受けた手が、特に印象に残りました。
この角がこの後ずっとよく働いて、逆転勝利のきっかけになったような気がします。

今日は図面はナシにします。
将棋連盟ライブ中継と、産経新聞の観戦記でご覧ください。

 

ブログを再開してから、これまで毎日休まず、10本ほどの記事を上げてきました。
特に朝は必ず10時ぐらいまでに、30分ぐらいで書いて、そこから将棋の勉強という生活のサイクルを作ろうと考えています。
まだ思った通りにはうまくいってませんが、徐々にリズムはつかめてきている気がするので、良い習慣として続けていきたいと思います。

理事時代は、月にだいたい150時間ぐらいを、仕事に充てていました。
もちろん時間で測れる仕事ではないので、あくまで目安ですが、週5日×7時間と同じぐらいにはと考えた結果でした。
これを1日に直すと5時間なので、このうち1~2時間をブログを書いたり、ウェブやその他自分の興味のあることの勉強に充てて、残りの3~4時間を将棋の勉強にと考えています。
日々行われている対局の紹介や解説をすることは、一生懸命将棋を考えることにもつながるので、将棋の勉強再開には最適だと思いました。

将棋の勉強といっても、その世界はあまりに奥深くて、壁が高すぎて、どうしていいか分からなくなることがよくあります。
自分ももう30年続けてきて、この先急に強くなったり、革命的な変化が起きることは考えにくいです。
ただ、将棋に触れている時間は(一人であれ、練習将棋であれ、公式戦であれ)楽しいもので、かつ、新たな発見が日々あるものなので、これからも楽しむ心を忘れず、勉強を続けていきたいです。

 

今日のNHK杯は中村(修)-佐々木(勇)戦。
解説は佐藤(康)会長ということで、偶然にも同姓に棋士のいる方がそろいました。
いまTVをつけたら、ちょっと意外な戦型になっていますね。

夜はAbemaで炎の七番勝負第5局、ここからはA級棋士が3人続けて登場します。

スマートニュース

名人戦は、稲葉八段がキレ味するどい攻めで先勝。
佐藤名人が、封じ手のあたりで指しにくさを感じていたというのは、ちょっとレベルの高すぎる話で、僕には理解できませんでした。
観戦記や将棋世界での解説待ちですね。

早い終局はいささか残念でしたが、第2局以降の熱戦に期待しましょう。
昨年のこの時期、佐藤八段は大きな連敗中だったところから、第2局を境に羽生名人を4タテしたのは記憶に新しいところです。

 

昨日の中継局では、棋聖戦の2局がいずれも両者1分将棋の大熱戦で、見ごたえある好局でした。
こちらは決勝トーナメントなので、後日産経新聞に観戦記が掲載されるはずです。
ちなみに、今日も土曜日ながら同じく棋聖戦の中継があり、この1局で、ベスト4が出そろうようです。

ところで、どういう内容の将棋が観ていて一番面白いか?ということはよく考えます。
やはり、序盤の早い段階で戦いになり、そこから形勢がずっと揺れ動きながらも均衡が取れている、どちらが勝つか分からない、そんな展開が一番観る側にとっては面白いでしょう。
また、指している方からしても、こういう展開は一番気が抜けず、苦しみながらもどこか楽しんで指せていると思います。
昨日の郷田ー永瀬戦は矢倉、斎藤ー木村戦は横歩取りで、いずれも早い段階で前例のない戦いになり、そこから長手数のねじり合いが展開され、観戦者にとっては一番面白い展開だったように感じました。

 

リンクを3つ。
先日の電王戦の観戦記が公開されました。
佐藤慎一五段は、4年前の電王戦で、初めてponanzaに敗れた棋士です。
彼らしさのよく出た、思いの詰まった文章だと思いました。

合わせて、ponanzaの山本一成君の連載もご紹介。
AIが人智を「どうやって」「どのように」超えていくのか、は言うまでもなく、今後の人間社会の大きなテーマです。

続いてこちらのニュース。
人気ニュースアプリ「SmartNews」に将棋チャンネルが登場
これはたぶん、けっこう画期的なニュースだと思います。

と言っても、正直なところ自分もよくわかっていないので、とりあえずダウンロードしてみました。
僕もまあ、そういうレベルの人です。だから、勉強しています。
最近の将棋連盟のウェブ戦略を見ていると、まず第一にスマホ対応と、それに加えて各媒体で多く取り上げてもらう点を、重視しているように見えます。
(あくまで僕の理解なので、100%正しいかは分かりません)

たとえばヤフーニュースやヤフトピに、以前より将棋のニュースが多いなあと感じている人は多いと思います。
ひとつ一つは、小さな努力ですし、もちろん単純に話題が多いということもあるわけですが、トータルとして将棋の記事が増えることは、とても喜ばしいことです。
「将棋」というものを広報する(広く報じる)ことが、将棋の普及につながるはずだからです。

今回の連携で、またひとつ、将棋に興味のなかった層の新規参入のキッカケが増えたと、今後に期待しています。

 

封じ手とか

名人戦は2日目に入りました。
佐藤名人が封じ手で大長考。
30分以上封じ手時刻を過ぎるのは珍しいので、すこし話題になっていたようです。
かつては加藤先生が、封じ手で大長考して、休憩を挟んだということもあったそうですね。

本局の場合、ちょうど仕掛けの場面だったので、自然な長考と思いました。
解説されている通り、選択肢も多く、難しい局面です。
10時半現在、封じ手から6手進みました。
ここからはさらに濃厚な長考合戦になりそうです。

昨日の中継の話。
ブログを初めてから、連日いろいろな戦型があり、毎日楽しく観戦しています。

昨日の杉本ー千田戦。(王将戦)
感想戦コメントに「代えて▲4七銀は△5五金▲同角△同角▲同飛△3三角の強襲が気になる」と書いてあって、見たことない筋でびっくりしたので、取り上げました。
以下たとえば▲5八飛と逃げると、△9九角成▲7七角△同馬▲同桂に△5四香の田楽刺しが厳しくなります。

で、▲4八金だとどう違うのか?は書かれていなかったのですこし考えたのですが、そこで▲4五金と受けるということだと思われます。
以下△5五角▲同金と進むと

▲4五金でなく▲7七角だと△5五角▲同角に△5六飛と打たれて王手角取り。
▲4七銀の形だと△5七飛と打たれて王手金取り。
この図だと飛車を打つスペースがありません。

作り物みたいな手順で、びっくりです。
そもそも将棋の序盤で、こんなに早く中央に金が進出することは普通ないので。
ただ実際は、上記△3三角には▲2五飛△2四歩▲2六飛△9九角成▲7七角という対応もあり、自分の感覚では、ちょっと後手が無理している気がしました。

全棋譜は将棋連盟ライブ中継でご覧ください。
(※たしか30手目まで無料だったはずなので、取り上げた場面は購入しなくても見ることができると思います)

この将棋は終盤が面白く、感想戦もかなり詳しく取材されています。
感想戦の取材は記者によってかなり棋風の出るところで、変化を詳細に書く、ワンポイントを取り上げる、形勢の分かれ目だけ詳しく書く、その手を選んだ心情を多く盛り込む、等さまざまです。
総じて、関西の記者のほうが詳しく書いている印象です。
個人的には、形勢を分けた場面がはっきりしているのが良いと思います。
あとは長い変化手順よりも、そうなる理由が言語化されているとありがたいですね。

自分ぐらいのコアなファン(?)になると、誰が中継担当かは読めばだいたい分かります。
記者の方々も棋士と同じで、これからも技術と個性を磨いて、頑張ってほしいと思います。

今日の東京はあいにくのお天気ですが、昨夜からの雨は上がったみたいです。
皆様どうか、名人戦の解説会にお越しください。

名人戦開幕

今年もこの季節がやってきました。
第1局は恒例の椿山荘です。

戦型は大方の予想通り、横歩取り。
今期は横歩シリーズになることは間違いないでしょう。
ただ、いまは特に流行形が拡散している印象なので、たぶん毎局違った形になると思いますし、この名人戦で登場した形が、その後の流行を作っていくと予想しています。

名人戦は主催の朝日・毎日両新聞の観戦記や当日・翌日の紙面はもちろんのこと、両社のデジタル版でも詳報されます。

また連盟でも、モバイル中継と、名人戦棋譜速報。
ニコ生とAbemaTVでも生放送されています。

また関西将棋会館や、現地椿山荘でも大盤解説会が行われます。
ぜひお楽しみいただきたいと思います。
(※11時50分追記
東京・将棋会館での解説会はありませんでしたので、訂正します。
1日目の本日は現地・椿山荘のみ。
明日2日目は、関西将棋会館と、そのほかに新橋・SL広場でも解説会が行われます)

 

昨日の中継4局も、面白く観戦しました。
東京の2局、5時間の将棋は意外な夕休前の終局だったものの、内容は見ごたえがあったと思います。

三枚堂ー勝又戦は、△4四銀と上がったタイミングで▲4五桂というのが、類型の少ない組み合わせだったのではないでしょうか。
最近は早い桂跳ねがトレンドですが、ああいうタイミングもあるのだなあと勉強になりました。
△4四歩だと▲4五歩の仕掛けを与えるし、突かないといきなり桂馬を跳ねてくるし、困ったものです。

畠山ー阿部戦は衝撃の駒組みでした。
論より証拠、百聞は一見に如かず、なのでぜひご覧ください。
図面を載せようかなと思ったんですがひとつ、ふたつでは済まなくなりそうなので、やめておきます。
(※逆に楽しみを奪ってしまうことになってはいけないですし、権利への配慮もあるので、数多くは載せない方針です)
特に序盤の早い△3三桂や、その後しばらく進んで△5二玉と寄った手はインパクトがありました。

最近のプロ将棋を観戦していると、もともとの予定だったとは考えにくいけれど、指されてみると場合の好手。
という指し手が、序盤から増えている印象を受けます。
全体の流れよりも、その場の最善を追求する姿勢が(ゲームの性質上本来はそれが正しい)、大切な時代になったと感じます。

大阪の2局は、超急戦と、角交換振り飛車。
一昨日に引き続き、戦型がうまく分かれてくれて、観戦には楽しい一日でした。

 

盤面の話ばかりも何なので、日常の話もすこしだけ。

最近は大半の時間を家で過ごしていますが、昨日は大学時代の友人たちと飲んでました。
僕のことを心配して誘ってくれたみたいで、ありがたいことです。
おかげさまで元気にやっていますし(それが一番大事)、将棋に対するモチベーションがあるので、大丈夫です。

30代半ばというのは、会社や組織の中にいると、何かと難しい年齢のようで、それぞれの悩みを感じました。
世の中の大半の人は、仕事をしていればときにはイヤな思いもするし、本当はやりたくなくてもやらざるを得ないこともあるのでしょう。
自分が将棋をこれからもずっと続けていけるのは、とてもありがたいことだと、今日も感謝して過ごしたいと思います。

週末は花見に出かけたいと思っています。
そういえば今年の名人戦は、特にいい時期の開幕になりましたね。

昨日の中継など

昨日は、なんだかたくさん将棋を観た気がしたのですが、実際は3局。
どうしてだろうと思って考えてみたところ、王将戦(3時間)、棋聖戦(4時間)、王座戦(5時間)とそれぞれ持時間が異なり、かつ、戦型も角換わり、矢倉、横歩取りとバラけたからかなと思いました。

ちなみに今日の中継は4局で、2局が3時間、2局が5時間の将棋です。
だいたい最近は、平均して1日4局ぐらいでしょうか。
全棋譜は将棋連盟ライブ中継で。

持時間3時間だと昨日のように、おやつの時間ぐらいには勝負どころを迎えます。
4時間だとちょうど夕方の帰宅ラッシュの時間帯ぐらい。
5時間だと夕休すぎ。
という印象です。

もちろん将棋の内容や時間の使い方によっても変わってきます。
時間いっぱいまで使い切ると、3時間で5時台、4時間で7時台、5時間だと10時頃の終局が見込まれます。
観戦のご参考まで。

昨日の対局から図面をひとつ。

この感想がなかなかに意外で、面白く感じました。
というのもこの局面のすこし前、先手が▲5三歩成と行ったのも意外で、それは5筋に歩が利くようになるからなんですよね。
そう考えると、△5七歩は思わず指したくなる一手です。

そして、▲7九玉のタイミングで△8七歩も至って自然です。
むしろ6九玉の形で△8七歩のほうが珍しいと思います。

ということで、本譜が先手ペースならば、自分なら代えてこの局面で△8八歩を考えます。
8八の角が7七に動いたタイミングなので、そこで△8八歩は「筋」でもあります。
▲同金にもう一本△8七歩か、あるいは△5六銀打と攻めてどうでしょうか。
有力だったのではと思いました。

 

ところで、今日は熱局セレクション2016(将棋世界来月号の企画)の投票〆切です。
まだの方は忘れないように投票しましょう。(以上、棋士向けです笑)
昨年度は、特に熱戦が多かった印象で、どんな結果になるのかとても楽しみにしています。

そういうわけで、昨日は2016年度の熱戦をいろいろ見返していたところ、当然のように糸谷八段の将棋もたくさん自分の候補に上がりました。
彼の将棋はいつも混沌としていて面白いです。
本局も持ち味全開で、この前にも後にもいろんなことがあった末に勝ち切っていました。

自分の投票のことは、また将棋世界が発売される頃に、書く予定です。
本当に、最後まで悩みました。

昨日のもう1局の飯塚ー橋本戦も見ごたえがありました。
横歩取りは研究勝負で好きになれないという方も多いと思いますが、飛び道具がアクロバティックに乱舞するのは、自分は見ていてとても楽しいと感じます。
この将棋は序盤から終盤まで、ハラハラドキドキの面白い将棋だったと思いました。