新王位とか

王位戦第5局、菅井七段が快勝で新王位誕生。
本局もまた、見事な指し回し。
玉側から離れた金銀が次々にさばけていく様子は圧巻でした。

「堅さ重視」だった現代将棋の価値観が、変わってきているのを最近実感しています。
角交換振り飛車は、いわゆる「勝ちやすい」戦法というよりは、工夫しやすい、色を出せる戦法という印象があります。
その工夫を駆使して、タイトルを取ったという結果は、棋史に非常に大きなインパクトを残したと思いました。

一昨日から昨日にかけて、最近指された将棋を並べ返していたのですが、棋王戦の佐藤九段ー増田四段戦が、特に興味深くまた面白い内容だったように思いました。

図は中盤の局面で、先手は四枚穴熊で堅さ重視、後手は最近流行の雁木に似た陣形で広さや攻撃布陣重視。
ひと昔前ならば、先手が現代的ととらえられていたと思うのですがいまはむしろ逆なんでしょう。

僕の学んできた将棋の価値観から言えば、ここまで囲えれば先手は満足、あとは攻めるだけ。
いっぽうこれが40年ぐらい前ならば、先手の陣形は偏りすぎ、後手の陣形のほうが本筋と、とらえられていたかもしれません。
現代では、後手にも十分主張があって戦える、という感じでしょうか。

やはり将棋というのは異なる価値観や主張がぶつかるのが面白いんだなと感じる場面でした。
もちろんその上で、高度な読みがあってこそということになりますが。

「玉の守りは金銀3枚」「攻めは飛角銀桂」という有名で大切な格言があります。
駒をバランスよく配置するための教え、ととらえると良いでしょう。
しかし、実際にはこの先手陣のように金銀4枚で玉を囲うこともよくあります。
(と言うか、この20年ぐらい、実はそのほうが良いのではと考えられてきた)
それが原点回帰というのか、再び変わってきていますね。

将棋は相手があるゲームで、何が良いかは本当は常にケースバイケース。
なのでこういう感じで、元の価値観が復権してきたかのように見えることは、これからもたくさんあるでしょう。
異なる多様な価値観を、うまく吸収して、自分の将棋に役立てていきたいものと思います。

今日の中継は叡王戦と朝日杯。
スピーディーな対局を数多く楽しめる一日です。

弟弟子と妹弟子

王位戦第5局、菅井七段がまたやってくれました。
3一銀・3二飛・3三金の並びはかなりの珍プレーでしょう。
この泉のようなアイデアの数々はいったいどこから湧き出てくるんでしょうか。

関係者用のDBで軽く調べてみたところ、類型としては平成5年に森安秀光九段が指しているのが見つかりました。
(△3三同金までは本譜と同じで、次に△3五歩と突いてから12手目に△3二飛)
ちなみに、もしタイトルを取ると岡山県出身棋士としてはその森安棋聖以来だそうですね。

封じ手までの進行は、振り飛車に不満がないように見えました。
美濃囲いにしっかり囲えているのは大きいと思います。
序盤は独特でもその後の駒の使い方は基本に忠実で、見ていていつも参考になります。

 

表題は最近の棋戦の動きについて。
昨日の加古川青流戦で、弟弟子の西田君が三段陣を相手に連勝して、決勝進出。
昨年は井出四段が年齢制限ギリギリのプロ入りから1年目での優勝で、状況がすこし似ています。

反対の山からはその井出四段が出てくるか、あるいは藤井四段か、それとも三段かアマチュアか。
いまの若手棋士は棋戦が多くてうらやましいです。
チャンスを生かして頑張ってもらいたいですね。

今週日曜日のヤマダ杯では、妹弟子の石本さんが優勝。
こちらもプロ入り1年目で、大きな結果はさぞ自信になったことと思います。
ただ決勝戦の終盤は何度か形勢が大きく揺れ動いていて、30秒将棋なので仕方ないとはいえ、満足できる内容ではなかったでしょう。
強くなっている途上だと思うので、これからも頑張ってもらいたいです。

ちなみに男子のほうは、三枚堂五段が高見五段に勝って初優勝。
藤井四段に勝った星を生かしました。
決勝戦は流行の雁木模様で、早指しの公開対局という舞台で、ああいう超急戦でバランスの取れた内容になるのはすごいなと思いました。

 

今日の中継は王位戦2日目のほかに、A級順位戦が1局。
王座戦では妹弟子の室谷さん、叡王戦では弟弟子の糸谷君が登場です。
室谷さんの将棋は、序盤早々に角交換して打ち合う形に。
この将棋は数年前からずっと興味を持っているので、この後の進行が楽しみです。

勝ち

昨日の対局は、先手番で中飛車を採用し、流行の左美濃を穴熊で迎え撃つ形に。
序盤はまずまずのワカレだったものの、中盤で自然に指した手がおそらく疑問で、その後は激戦に。
終盤は何度も詰むや詰まざるやの局面になり、非常に難解でしたが指運良く幸いしました。

指しているときは難しくて読み切れない変化が多すぎて頭が痛くなりましたが、振り返ってみればとても面白い終盤戦で、こういう将棋が指せたのは良かったです。
またあとでじっくり検討してみようと思います。

8月は対抗形4局、居飛車と振り飛車を交互に持ってどちらも1勝1敗でした。
まだ前局のトン死の痛みが癒えませんが、それまでの4か月でわずか2勝(5敗)だったことを考えると、上昇傾向でしょう。
来月も一生懸命頑張ります。

FBやtwitter等で誕生日へのメッセージをいただいた方々には、どうもありがとうございました。
個別の返信は失礼させていただきますが、いつも感謝しております。
次の一年も、有意義で充実した日々になるよう、努力したいと思います。

今日明日は王位戦第5局、舞台は徳島。

誕生日

予約投稿です。

今日で36になりました。
つまり今年は人生3度目の年男です。

30になったんだなあ、全然実感がないなあと思っていたらもう36です。
さすがに30代の自覚は出てきました。
1年が過ぎるのも年々早くなってきました。
この調子であっという間に40になるんだろうなあ、でも不惑の域にはほど遠いなあ、そんな心境です。

平均寿命を考えると、いまは人生の折り返し地点に、ほど近いところにいるのでしょう。
良くも悪くも、いままで一生懸命、楽しんでやってきました。
これからもいろいろなことを楽しんで生きていきたいと、平凡ですが思っています。

将棋は勝とうとすると大変だし苦しいですが、本来は楽しいものだし、良い将棋が指せたときの喜びは、やはり何物にも代えがたいものがあります。

棋士になって14年目、これまで誕生日の対局は記憶になく、たぶん初めてではないかと思います。
今日は良い将棋が指せますように。

明日対局

王位戦で相手は飯塚七段。

飯塚さんとは、デビューの年度に棋王戦で当たって以来、王将戦、竜王戦、NHK杯予選、朝日杯と当たっていて、今回で6局目、6棋戦目の対戦。
順位戦で同じクラスになったことがない先輩棋士の中では、たぶん一番たくさん教わっている相手だと思います。
戦型や結果を問わず、いつも手厚く指されている印象です。

こないだの対局で自分がとても弱いということはよくわかりました。
ただ、悪いものはすべて出た、いわゆる「底を打った」状態なのではないかという気もしています。

明日は開き直って、思い切ってぶつかっていきたいと思います。