最近の好局など

すこし前の話題になるのですが、今月のA級順位戦、久保ー行方戦の最後の詰みは本当にすごかったですね。
これが実戦で現れ、そして実際に詰まし上げるとは。さすがトッププロです。
まだの方は絶対見たほうが良いです。強くオススメしておきます。

最近出たこんな記事でも、取り上げられていました。
秒読み、極限の一手 過酷すぎる棋士のラスト60秒

僕もかつて、ごく短い間だけですが村山先生に何度か10秒将棋を教われた時期がありました。
奨励会の二段ぐらいだったはずです。
それはそれは強く、ほとんど勝てなかったことを思い出します。

他、最近の両者1分将棋の好局として、C1の阿部ー宮田戦をオススメしておきます。
相横歩取りと似たような出だしから、手将棋になり、難解な終盤戦で、何度も大技が飛び出しました。
最後の最後は、▲7四銀と王手で6五に利かしておけば、先手が勝ちだったですかね。
名人戦棋譜速報のキャプションに「両者、興奮している様子」とあって、無理からぬことと思いました。

↑でご紹介した記事に、「30秒将棋」はさらに過酷だ、ともあって、まったくその通りですね。
すこし前の記事で取り上げた三枚堂ー藤井戦も、後から見ればミスはいくつかあったみたいです。
ただし、だからと言って名局としての価値が下がることはないと思います。
過酷な条件の中で、観る人たちを熱狂させる将棋というのは、そうあるものではないですので。

日曜日の加古川青流戦の2局も、どちらも好局でした。
稲葉さんはちょっとアマチュア離れしていますね。
特に秒読みに入ってからが安定して強い印象です。

かつての瀬川さんや今泉さんに匹敵する勝ちっぷり、実力だと思いますが、プロを目指してはいないとのこと。
女流棋戦で活躍している小野さん(土曜日もマイナビの一斉予選を抜けていました)も、同様のようですね。
それがマジョリティになってしまうと困る、とも思いますが、いろんな考えのプレイヤーがいることは、将棋界にとっては良いことでしょう。
しかし、プロも負けずに技術を磨いて、頑張らなくてはいけません。

実は明日、僕も銀河戦予選の対局があります。
棋譜が出ることは基本的にないのですが、結果や対戦相手も含め、表は後日公表されることになっていますので、それまでは書きません。

良い結果になるよう、頑張りたいと思います。

池田修一先生

久々の出張から帰りました。
八戸の皆さまには温かく迎えていただき、ありがとうございました。
おかげさまで、楽しく過ごした2日間でした。

八戸といえば、池田修一先生のお名前を忘れるわけにはいきません。
長年、地元に腰を落ち着けた棋士で、大変な名士だったそうです。
以前先崎九段のエッセイで読んだ「将棋の池田と言えば分かる」の話が好きで、印象に残っています。
地元の方に聞いたら、あれはやっぱり本当の話らしいですね。すごいものです。

今回お邪魔したのはNHK八戸支局で毎年開催していただいている子ども大会でしたが、これもその当時から、ずっと続いている大会で、そういう催しが数多くあります。
運営されている世話役の方々も皆さん、池田先生のお弟子さんでいわば「同門」にあたる間柄なのだとか。
人間関係が長く続くのはプロの世界も同じですが、それ以上に強い結びつきを感じました。
これからも末永く将棋界をよろしくお願い致します。

 

現役棋士として活動しながら、東京・大阪以外の土地に住むというのは対局への影響を考えるとなかなか大変で、かくいう自分も地元(広島)への気持ちもありながら、現実にはなかなか戻ることは難しそうです。
そんな中、今年から阿部健治郎七段が地元(山形県酒田市)に帰ると聞いて、思い切った決断に感心しました。
自分より後輩で、まだ30前なのでかなりの勝負手ですが、この先の人生のことも考えた上での決断でしょう。
どうか、応援してあげてください。

棋士が地方に住むのは、普及面でのことを考えると将棋界にとっては明らかにプラスなので、連盟としても何か支援できないものかという思いは以前から持っています。
これもなかなか言うは易し、なのですがその時々で、考えていくべきことと思います。
とりわけ東北は、将棋の盛んな地域が多く(なんとなくですが寒い土地のほうが将棋人口は多い印象があります)、棋士もよく出かけているので、在住棋士がいるのは何かとメリットが大きそうです。

 

昨日は夕方の新幹線で帰ってきて、特に自分に影響はなかったのですがところどころ大雨、車窓から見える川はどこも増水していました。
秋田県など、かなり大きな被害が出た地域もあるようで、その中には以前お伺いしたところもあり、とても心配しています。
心よりお見舞いを申し上げます。

先週は九州で大雨が降ったばかりですし、自然は怖いですね。
日々の備えが大切、それと、自分自身が健康でいられるようにと思います。

大山康晴賞

昨日も書いた通り、棋士派遣のお仕事で八戸に来ていますので、今朝は予約投稿です。

毎年この時期になると、大山賞の発表があります。
「第24回大山康晴賞」受賞者のお知らせ

授賞式は例年9月8日頃と決まっていて、何の日かというと、「日本将棋連盟」の前身である「東京将棋連盟」の誕生日、つまり我が団体の創立記念日です。
将棋界にとって特に大切な方への感謝を表す日ということで、以前からこの日に設定されていると教わりました。

他に秋には、「将棋の日」の表彰・感謝の式典が行われ、普及関係の感謝状の贈呈や、棋道師範・棋道指導員の方々への資格証書をお渡しする場になっています。
こちらは11月17日前後に行われるのが通例で、ご存じの方も多いと思いますが、八代将軍徳川吉宗が、御城将棋の日をこの日に定めたのが由来です。
以上、将棋界マメ知識でした。

 

先日コメントで「指導員の方は商売になるのでしょうか?」という質問がありました。
会費や授業料をいくらにするか等の特に定めはないはずですが、おそらく現実には、生業にされている方はごくごく少数で、大半は好意や熱意でやっておられる方ばかりだと思います。
そういう意味もあって、こうして将棋連盟としての感謝を表す場は、特に大切な機会となっています。

指導員や各地の支部の役員として普及に務めておられる方は、他に生業のある方や、リタイアされた方がほとんどで、その熱意の上に成り立っている世界といえます。
それはありがたいことでもある半面、個人的には、将棋を教えること、あるいは商品や教材の企画・販売などで生計を立てるような方も、もっと増えてほしい気持ちもあります。
ライバルが学習塾や、他のいろんな分野の習い事だと考えると、将棋も十分にチャンスはあるはずなので。
もちろん言うは易し、なんですがプロとしてやっていく覚悟を持って取り組んでおられる方もいて、尊敬していると同時に心の中でいつも応援しています。

実はここ八戸からすこし北に行った、おいらせ町(旧百石町)というところには「大山将棋記念館」があるぐらいで、大山先生とも非常に縁の深い土地です。

亡くなったのが平成4年の7月26日なので、没後もうすぐ四半世紀ということになりますね。
いまだに全国各地の世話役の方々からは大山先生の話を聞くことが多く、おそらく今回もそうでしょう。
先人への感謝の気持ちを忘れないようにしたいと思います。

昨日の三枚堂ー藤井戦など

ヤマダ杯、いやはやすごい将棋でした。
13時開始で、13時半頃モバイル中継を観始めて、ちょうど面白いところに来たなと思って観ていたら、まさかそこから1時間以上も続くとは。驚きました。

とても30秒将棋とは思えないハイレベルな攻防で、しかも大技連発。
名局賞の有力候補ではないでしょうか。
リアルタイムで観ることができて良かったと思いました。

終局からほどなくして、いつものようにニュースになっていました。
勝っても負けても、ニュースになる。この状況が、どこまで続くでしょうか。

モバイル中継のハッシュタグ「#ShogiLive」もかなりいいペースで伸びてましたね。
初めて使い方を学びました。
(使ったことのない方は右下にあるボタンの中にある「その他」の中の「twitter」を押してみてください)

うおー、とかひえー、とか言いながら観てる人がいたり、指し手や形勢のことをつぶやいてる人がいたりで、面白かったです。

僕のこのツイートはたしか190手ぐらいのときのものだったかと。

一局の流れとしては、形勢は絶えず小さく揺れていて、それでいてハッキリしたと感じた場面は少なく、↑のあとはそのまま押し切り、という内容でした。
感想戦のコメントによれば、△7九銀(これも妙手に見えた)に代えて△9六桂の妙手があったみたいですが、観戦しているときは見えなかったですね。

 

夕方は名人就位式。
主役の天彦名人はじめ、皆さんのスピーチがどれも印象に残るものばかりでした。
康光会長の「私も将棋はそんなに弱くないと思うんですが・・」には場内大ウケでしたね。
パーティーに出席するのは久々でしたが、行ってよかったです。

そして夜はA級順位戦。
こちらも同じ角換わり腰掛け銀で、豊島八段の角切りがすごい手でした。

今日はこれから八戸に行ってきます。

理想を現実にする力

佐藤天彦名人の近刊です。
先日読んだので、名人就位式の日にご紹介しようと思っていました。

「読む将」の僕はこの類の新書はだいたい買っているんですが(谷川先生・羽生先生・佐藤康光先生など)、今回は特に、共感するところ多かったです。
自分自身がこういった他人の人生観により興味を持つ年齢になってきたこと、世代が比較的近いこと、それに加えて、地方都市出身で奨励会を関西から関東に移籍したなどの共通点があることも、理由かなと思います。

彼が2回目の次点でフリークラスに行かなかったときのことはよく覚えていて、自分も同じ立場なら同じ決断をすると思ったので、多くの棋士が驚いているというのを聞いて、そのことにとても驚いた記憶があります。
奨励会時代のことというのは誰にとっても重く、言葉にしてみると生々しく、当人にしか分からないことも当然あり、後に名人になる棋士にしてそれだけ苦労したという事実は、自分たちには当たり前に受け入れられますが一般の方にとってはどうなのか。

プロになるハードルが極めて厳しい世界だからこそ、その先には明るく輝かしい未来が広がっているよう、プロ棋士になれた我々はもっと頑張らなくてはいけない。
プロになって以来、いつも意識していることです。

 

そのいっぽうで個人としては、彼が書いているのと全く同じで、僕も基本的に自分のしたこと、努力や苦労に対する見返りは求めないようにと心がけているつもりです。
そうすることで生きやすくなり、また他人やモノやあるいは運命に対して理不尽に怒りをぶつけたり、不必要に悪い感情を持ったりすることがなくなるからです。
将棋に対しても、それ以外のことでも、自分のできる最善を尽くして、結果を受け入れる。というスタンスです。
当たり前といえば当たり前のことでもあるのですが、やはり名人が言うと重みが違います。

将棋界は「個」を大事にする世界、「個」の集まりで成り立っている世界だけあって、タイトルを取るような棋士も万人の中の頂点というよりは、他の誰にもない強烈な個性を持った存在であるように思います。
「プロ棋士になるだけが人生ではない」
「棋士として勝つことはとても大事だけれど、それだけが人生のすべてではない」
と思っていた、と時の第一人者が活字にしたことは案外大きくて、時代を表しているかもしれないなと思いました。

 

ところでまったく話は変わるのですが、最近色紙用に、「人生は一局の将棋なり」という菊池寛の名言を練習しています。
そんなこともあって、この一節はとても心に留まりました。

 はじまりがあって終わりがあるという意味では将棋はしばしば人生にたとえられますが、将棋の技術をそのまま生かせるほど人生は甘くも軽くもないでしょう。
ただし、まったく意味がないとも思いません。

現実的で、客観的で、つとめて抑制的でもあり、どことなく意外な面もありつつ、納得させられる一冊です。