マスク

先日のA級順位戦のことは本当にびっくりしました。

これまで自分は、現在の臨時対局規定(マスク着用のルール)は感染防止を目的としたもの、すなわち対局者にマスクをつけてもらうためのものであって、勝負の決着をつけるためのものではないと考えていました。
なので、マスクをつけて下さいと相手にお願いするとか、あるいは自分自身がウッカリしていて注意されることはあっても(※もちろんそういうことのないように気をつけています)、
反則負けが現実に適用されることはないと、勝手に思っていました。
しかしそれは単なる自分の思い込みで、今後はマスクを勝負のうちとして考えなければいけないのだと思います。

反則負けが適用される以上、今後は条文の「一時的な場合」について、より厳格な基準が示されるものと推測しています。
そして基準が明確になれば、許されると明確に示された範囲で「一時的」にマスクを外すことを繰り返すような例が増えると思います。
その分、いままでよりも感染防止効果は弱くなりそうです。
それでも、感染防止より勝負の公平性やルールの厳格性を優先するということなのでしょう。
自分としては、そのような方向性は望ましくないと思います。

現行規定の運用として、もし対局者がマスクをつけていなかったらつけてもらって、対局を続ければ良いと思っていたので、今回あのような形で運用されたことは、自分としては非常に残念です。
加えて、天彦さんとはたまたま先月対戦したばかりでしたが、記憶する限りそのときはずっとマスクをつけていたと思うので、その点でもとても驚いています。

(追記)
将棋連盟HPに、今回のことについて公式の説明が出ました。
順位戦における裁定について
内容については議論のあるところと思いますが、迅速にこのような発表がなされたことは、ひとまず良かったです。

またブログへのコメントについて、従前より承認制としており、気づき次第、基本的にはすべて承認しています。
承認しない(表に出さない)設定も可能ですので、希望される方は、その旨書いてください。
お返事は明日の対局が終わってから書きます。

28件のコメント

  1. 片上先生のお考えは基本的に首肯できるものですが,「反則負けが適用されることはない」というのは,正直,将棋村のルールという感じがして,世間からすればいささかずれている,という感もあります。世間の見方が正しいとも思いませんが。
    個人的には,かつての「陣屋事件」の木村名人の名裁定のような”大岡裁き”を期待したいです。
    マスクを外し続けてしまった天彦先生,反則負けを主張し棋譜を汚してしまった永瀬先生,公平とは言いかねる立場で裁定を下してしまった鈴木&康光先生。いずれも非を問われる立場になってしまったので…

    1. そうですね。あくまでも私の考えなので、他の見方もあり得ると思います。

  2. 残念です。その通りと思います。
    また決定した役員の方が 報道によると ひとりは順位戦参加者ですし もうひとりは勝利者の恩師ということで客観的な判断だったか疑念も持ってしまいました。 
    相手にマスクをつけて下さいと注意してくれればすむ話だったのに このようなことになり とてもかなしいです。 夜中まで見ていたのに こんなことが起こって観ていてショックでした。今もかなしいです。

  3. 将棋の勝敗は盤上でつけるべきというのは
    ファンとして当然の感覚だと思います
    この規定が作られてから最初のトラブルだったわけですし
    もう少し慎重で柔軟な対応が求められたのではないかと思います

  4. そもそもマスクは必要なのでしょうか。将棋は会話のないゲームだと思いますが。感想戦の時だけ着ければ十分では。

    1. 私も基本的には同じ考えなのですが咳やくしゃみを繰り返す人がいた場合どうするのかという問題があります

    2. マスク着用に感染防止効果があるのは間違いないと思いますし、対局中にマスク着用を求めること自体は自然だと私は思います。

  5. 今回の裁定は、正しくかつ公平だと思います。あっぱれです。今の将棋界、ランチが何だとか,何を食べるとか、おやつは何食べたとか、浮かれた将棋界に気合を入れたいものです。全棋士の方々も気を引き締めて対局に臨まれる事を願います。

    1. 公平な裁定というのも一つの見方ではあると思います。ただ、棋士が食事やおやつで浮かれていたとか、そういう話ではないと思います。

  6. 規則そのものがコロナ防止という目的に対して十全ではなかったですね。
    個人的には内容はどうあれまず明文化された規則に則るべきだと思うので今回の対応は現状仕方なかったと思います。
    連盟はこういった事態を想定して規則を作るべきでしたが、周知以後も指摘・変更の動きがなかった以上棋界全体が責任を負うべき問題だと考えます。

    1. どのようにルール作りをするかというのは難しい問題です。また、この件は繰り返し議論になっており、作ってその後放置されたというわけでもありません。
      責任は時の常務会が負わねばならないもので、時に重い責任がかかることもあるのは、構造上やむを得ないことだと思います。

  7. 注意すれば良いってそんな簡単なことなのでしょうか?
    若手の内気な棋士だと、特に年上の棋士相手には注意できないこともあるではないでしょうか?
    また、注意しても、言ってよかったのかなとか精神的に動揺してしまうのではないでしょうか?
    相手がマスクを外すと、盤面よりもそのことが気になってしまい、集中力が乱されてしまう人もいるのではないでしょうか?
    折田五段が、Twitterでそんな呟きをされています。

    相手のマスク外しで思考を乱される棋士がいる以上、うっかりの着用し忘れならまだ仕方がありませんが、意図的にマスクを長時間外していたら、これはもう一種の盤外戦術だと思います。

    マスクをつけずに反則負けにされた側が被害者ではありません。
    相手側が被害者なのだと思います。

    色々な対処法はあったかと思いますが、根本原因は意図的に長時間マスクを外していたことにあると思います。
    それにはほとんど触れずに、暗に永瀬王座を批判したこの記事は、とても残念でなりません。

    1. 個人的には、マスクしてると少し息が残って酸素が減って思考が鈍る感じがするのですが……
      だとすると勝負どころでマスクをちゃんと着けてないのはズルいというかフェアでないと思います。

      立会人が指摘するべきでしたが、深夜で居なかったのは仕方ない。1時間連続不着用は、将棋に没頭する故でしょうが、一発アウトもやむなしと思います。

      マスクちゃんと着けてあそこまでの将棋を指せる藤井竜王を見ると、健康な若い棋士は「マスク着けてると指せない」とは言えますまい……

      ただ、長年タバコ吸って肺が弱ってる中高年棋士には、なんか配慮があってもいいのかもしれませんが。

      1. 個人的には、マスクは多少の不便さ・息苦しさはあると思いますが、もう2年以上いまの状況が続いているので、さすがにずいぶん慣れてきました。
        あと練習将棋を指すときもマスクはしていますし、家でもマスクして棋譜を並べたりします。他の多くの棋士もたぶんそうだと思います。

    2. 特にどちらが被害者、という考えは私にはありません。
      現行ルールの運用として、マスクをつけていない人がいればマスクをつけてもらって、対局を続行するのが良いのではないか、というのが私の考えです。

      1. 天彦九段は、ここ半年くらい、片上先生もされている通り、飲み物を飲む時も目薬を指す時もマスクを右耳だけ外した状態でした。
        そうしておけば、左耳にマスクがかかっている状態なので、マスクつけ忘れも起きにくいと思います。
        そういうことで簡単にマスク着け忘れ対策が出来るのに、件の対局では、天彦九段は、一時的な場合にも当たらないにも関わらず、右耳にかけてたマスクを外して、少ししてから左耳にかけてたマスクも外しています。天彦九段は、30分後に一度マスクをつけていますが、1分ほど後に飲み物を飲む時に、また両耳から完全にマスクを外しました。
        天彦九段の今までの習慣とも異なることです。
        簡単に出来る(今まで出来ていた)マスク着け忘れ対策もしないで、相手に注意させるっておかしくないでしょうか?自分の義務を怠って相手に義務を負わせるってことですよね。
        永瀬王座にとって天彦九段は年上相手でもあるので、すぐに注意はできないと思いますし、盤面にも集中できなくなると思います。片上先生だと、例えば羽生九段との対局で羽生九段が必要もない場面でマスクを外されたような場合に、すぐに注意できますか?また、盤面に集中できますか?
        A級順位戦という重要な対局でこんなことが起こると、平常心が保てなくなるのではないでしょうか?
        相手の平常心を乱すのは、心理的なことは軽視されがちですが、特に時間の少なくなった終盤であれば勝敗にも直結するくらい重要なことだと思います。
        マスクをつけてもらうように注意すれば良い、というのは、マスクしない側の甘えじゃないでしょうか。片上先生が懸念されているように、注意されるまでマスクを外す棋士が出てきて、感染防止対策にも逆効果ではないでしょうか。
        それよりは、マスクを片耳だけ外して、マスク着け忘れを防ぐって言う、簡単な対応をやった方が良いと思いますし、それを意図的にやらなかったなら、盤外戦術とも言えますので、反則負けも仕方ないのではないと思います。

  8. 一番の問題は、警告なしでいきなりアウトにしたことです。警告したにもかかわらず、マスクを着けなかったのなら負けでもしようがないですが。マスクを着けてもらえませんかとどうして言えないのでしょう。注意もしないで一方的に反則を主張するのは、一般常識に反する行為です。

    1. 一般常識に反するかどうか、については私自身も棋士なので客観的な判断が難しいですが、私の意見としては、この記事に書いた通りです。

  9. 規定に反則負けにすると書いてありますが、反則負けになることはないと思われた理由はどこらへんになあるんでしょうか。そういった判断になるような周りの雰囲気あったのでしょうか。

    1. 雰囲気は、分かりません。私の考えは記事に書いた通りで、
      >感染防止を目的としたもの、すなわち対局者にマスクをつけてもらうためのものであ
      ると考えていたから、です。

  10. 大熱戦の対局がこのような形で終局になってしまったことが非常に悲しいです

    自分が棋士をリスペクトする理由として、集中力があります
    羽生先生が盤面に集中するあまり、現実世界に戻れなくなるのではと感じることがあるっていう話が好きです
    おそらく、天彦先生も終盤の難所で盤面に没頭するがあまりに起こったと思っています
    もちろん、不適切な行動だったのは間違いないですが、一声かけるだけで解決できる問題だったので、非常に切なさを感じます

    個人的には反則負けは最終手段であって欲しかったですね…他の解決策はあったのでは?残念

  11. 連盟は警告無しの一発アウトで問題ないとの見解ですが
    ならこれまでは警告してたみたいですが、それって助言行為に該当するのでは?

    1. 正式な回答を私からすることはできませんが、マスクの着用を促すことが助言に当たるとは私には思えないです。

  12. 今後類似トラブルを減らすには個々の棋士の意識の改革が必要だろう。
    自分たちで規約の妥当性を監視し、必要に応じて改正を要求する。決められたルールはしっかり守る。

    連盟常務にお任せで、自分は規約に無関心で、ルールなんて守らなくても罰せられることないと思っていたら、同じことが何度でも繰り返される。

    1. >連盟常務にお任せで、自分は規約に無関心で、ルールなんて守らなくても罰せられることないと思ってい
      る棋士は、少なくともこの件に関しては、少ないと思います。棋士は誰もが、対局のことを真剣に考えています。

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