星の偏り

昨日の名人戦第3局は、最終盤に大きなドラマがあったようですね。
「戦いは最後の5分間にある」の名言が思い出されます。

2日間にわたってお互い9時間の持ち時間をフルに使い合っての最後の1分将棋、どんな気持ちになるのか自分にはわかりません。
第1局はやや不完全燃焼気味なところもあり、第2局は大熱戦になりそうなところで急に形勢が傾いてしまっただけに、この第3局が終盤の接戦になったことは、良かったと思いました。

ただ結果としては挑戦者の3連勝、これは奇しくも叡王戦と全く同じ展開です。
タイトル戦でこうやって星が偏る理由もまた、自分にはわかりませんがちょっとしたことで流れが変わることも多いので、できればストレート決着はしてほしくないなと観戦者としては思いますね。

注目される舞台で常に最高のパフォーマンスをすることがいかに大変なことか、その点は自分にも想像に難くないですが、昨日のような大熱戦がこの後も一つでも多く観られることを願っています。

また昨日は女流王位戦の第2局も熱戦で面白い将棋でした。
こちらは1-1のタイになり、5番勝負としては面白くなったと思います。
久々に家でじっくり観戦して、大満足の一日でした。

高野山

この2日ほどは予約投稿を入れておいて、祝賀会の足で妻と小旅行に出かけていました。

ホテル阪神を出て、まず向かった先は奈良。
春日大社、興福寺、東大寺、法隆寺、石舞台古墳などのメジャーどころを回りました。奈良は1日や2日では全然足りないので、続きはまた今度ですね。

そして翌日は、午後から高野山へ。
初めて来ましたがこんなに広いとは知りませんでした。
そしてこんなに荘厳な空間とも知らず驚きました。街全体が森の中にあるようで、一体感がすごい。まさに聖地です。

宿泊した福智院の立派な庭。本堂からの景色が望めるのは朝の勤行直後の時間帯だけ

前夜には精進料理をいただき、写経体験をしました。
これも初めてのことでした。

1時間ぐらいでできました。

帰りがけに「高野山の決戦」で知られる部屋を見せていただくことができたのも収穫でした。対局が行われた場所はいまでは普通の宿坊になっており、そうとは知らないまま泊まって帰るという方も多いのだとか。

高野山 別格本院「普門院」の一室

この1か月ほどは本当によく遊び、自分にとって新しい体験をたくさんしました。
今日から日常に戻って、明日からは別人のように働こうと思います。

モンテネグロ(観光)

大会期間中は基本的にホテルの中か周辺で過ごすことがほとんどなのですが、途中に2回、観光に出かけました。
ホテルのフロントで声をかけると、観光サービスをあっせんしてくれます。
行きたい場所を伝えると、所要時間と費用を教えてくれて、それでこちらがOKなら商談成立という感じで、即席の個人旅行ができます。もちろん送迎だけでなく簡単な案内もしてくれるし、何か所か立ち寄ってくれるので効率も良いです。

最初に行ったのはコトルという、ブドヴァの隣町でした。
お昼すぎに出かけて5時間ほどで戻ってきて、100ユーロでした。2人で割って50ユーロ、3人だともっと安くなるので悪くないでしょう。
ここはモンテネグロ国内では一番有名な観光地のようでした。

コトル湾。海と山が同居する美しい風景。

この国の国土の大半は山なので、たぶん産業のかなりの割合を観光が占めているはずです。
オフシーズンと思われるこの季節、会場のホテルの周囲は人はまばら(ホテルはたくさんあるけどどこも閑散としていた)でしたが、コトルにはそれなりの数の観光客が訪れているようでした。

城壁の街を高台へ。このあと、さらに山頂へと上るルートもありました。

観光コースとしては、いわゆる旧市街で観光タイムのほか、湾の周囲をぐるりと一周する途中にフォトスポットが何度か。
ただ、これだと帰りは道のりが長いばかりでちょっとつまらないな~と思っていたら、なんと帰りは船でした。
この渡し船自体が観光ルートになっていて、かなり大型のバスもたくさん乗り込んでいました。地図で見て、ここに橋がないのは不便なのではと思っていたのですが、うまく考えられているものです。

事実上、車専用の渡し船。客席のない船に乗ったのは初めてでした。

もう一回は隣国、クロアチアのドブロブニクへ。
モンテネグロは日本ではかなりマイナーですが、こちらは日本からの観光客も多く有名ですね。むしろクロアチアに行ったついでに、コトルにも立ち寄る、というケースが多いようです。
国境を超えるので、ということでこちらは半日で160ユーロでした。

陸路(車)で国境を通過するのは初めての経験でした。当然、パスポートが必要で、ドライバーが全員の分を集めて係員に渡してくれます。
写真は禁止なのでありませんが、入国と出国、両方のゲートがちゃんとあります。そしてその途中に1kmぐらいの何もない道があるんですが、そこを通過している間は、飛行機や船の上みたいな感じで、無国籍状態なんでしょうか。

もしモンテネグロもEU(シェンゲン協定)に加盟すれば、この手間はなくなります。昨今、イギリスのEU離脱が大きな話題ですが、せっかく知恵を出し合って便利になったのに、時計の針を逆戻りさせるのはいかがなものかと、一旅行者としては思うばかりです。

この日はあいにくの雨でした。それもかなりの大雨でした。ちょっとついてない。

有名な角度からの写真。雨に煙るとはこのことですか。

国境を越えてから旧市街までが思ったより距離があり、ブドヴァからは2時間半近くかかりました。
途中にティヴァットとドブロブニク、2つの空港を通過。車で空港を2つ通過するってなかなかないような。
ドブロブニクでも大会があるそうですし、クロアチアには機会を改めてまた行きたいと思っています。

あと、モンテネグロはイタリアの対岸だけあって、食事はヨーロッパの中でもおいしいほうだと思います。
やはり南欧は野菜も肉も海産物も充実してますね。
これが北欧だと冬が厳しいためどうしても品目が限られてしまいます。
食事は基本的に朝晩ホテルのバイキングだったんですが、メニューにはけっこう入れ替わりがあり、満足できました。

おまけ:コトルは猫の街なのだそうです。野良猫が街じゅうにいます

ドブロブニクまで行ってくれたほうのドライバーによると、アドリア海を望む3大ビューティフルタウンはヴェネチア、ドブロブニク、コトルなのだそうです。
今回、期せずしてこの3つを制覇することができて、とても良かったです。

モンテネグロ(交通)

先日コメントでリクエストをいただいたので(帰国)、モンテネグロがどんなところだったか、 少々時間は空きましたが書いてみたいと思います。
来年も大会が行われるかもしれないので、主にギャモンプレイヤー向けではありますが、モンテネグロという国に出かけたことのある日本人は多くないと思うので、もしかしたら何かの参考になるかもしれません。

モンテネグロはヨーロッパの南東、イタリアから見て東側の海をはさんで対岸に位置する小さな国です。福島県と同じぐらいの大きさで、人口は60万人余。
地理的なことや歴史的なことは、この記事が分かりやすかったです。
(なお、EUに加盟したとあるのはたぶん誤りで、実際は加盟していないようです。ただし、通貨はユーロが使えて便利です。)

日本からモンテネグロへの直行便はありません。
よって就航のある周囲の都市で乗り継ぐことになりますが、僕はローマ経由でポトゴリツア(PDG・モンテネグロの首都)に飛びました。
距離的なロスも少なく、乗り継ぎ時間もほど良くスムーズでした。
また同行者がステータスを保持していたのでローマでラウンジに入れたのですが、広くて、料理もいろいろあってとても助かりました。乗り継ぎを選ぶ際は大きなポイントになると思います。

他の選択肢としてはイスタンブールやパリ、フランクフルト、ウィーンなど、ヨーロッパの主要空港であれば定期便があるようです。
一番便数が多いのは隣国セルビアのベオグラードなんですが、ここは日本からの直行便はありません。

空港は一国の首都とは思えないぐらい小さく、全部合わせて1日10便ぐらいのようでした。
飛行機を降りたら滑走路を歩いてゲートに向かいます。乗るときも同じです。
これはどこかの小さな空港では経験があったはずですが、海外ではたしか初めてでした。

2019年4月7日入国。朝、ローマを出たときは肌寒かったのが、モンテネグロに着いたら汗ばむ陽気でした。

あと、この空港には国際線しか飛んでいません。
小さい国なので当たり前といえば当たり前ですが、国内線のない空港に来るのも、自分にとっては初めてのことでした。
ちなみに空港は国内にもうひとつあり(ティヴァット空港)、こちらも同じぐらいの大きさ・便数のようです。
福島県に2つ空港があると考えると、この国への交通の便は意外に良いと言えるかもしれません。

空港から市街地へのアクセスは、鉄道はなく、バスはあるようでした。
基本は送迎かタクシー、あとはレンタカーということになるでしょう。
大会参加者は自分の見る限りほぼ全員がホテルの送迎を利用しているようでした。
会場はブドヴァという海岸の街にあり、ポトゴリツアからはちょうど1時間ぐらい。道は快適でした。
美しい国、と聞いていましたが正直言って期待以上でした。

ホテルからの眺め。ヨーロッパの大会はこういうリゾート地で行われることが多い。

あと一つ気づいたのは、この国にはたぶん、信号がありません。
ドライブは楽しそうですがもしレンタカーを借りたら、十分注意して運転してください。
けっこう車は走ってるので、道を渡るのには慣れるまですこし怖い思いをしました。

明日は観光や食事について書いてみます。

来場御礼

今年も大勢の方々にお越しいただき、誠にありがとうございました。
この年齢での七段昇段は、特筆すべき実績には当たりませんが、それでもプロとしてそれなりのキャリアを重ねて、こうして一つの結果を残せたことには嬉しく思っています。
次はもちろん八段を目指してまた勝ち星を積み重ねていきたいですし、竜王戦や順位戦でも昇級を目指して頑張りたいと思います。

昇段が昨年7月だったのでそれ以降、昨日までにだいぶ間があって(そういえば六段のときも祝賀会直後でした)、ふとしたときに壇上で話す内容について考えることが何度となくあったのですが、直前になるとなかなか言葉が出てこなくなって、まあそういうものなんですかね。不思議なものです。

プロになったのが平成中期、それから15年間、祝賀会はほぼ欠かすことなく続いてきました。
その間ずっとお越しくださっている方もいて、本当にありがたいことと感謝しています。
自分自身の次の機会がいつになるかはわかりませんが、これからも気長に応援していただけたらと思います。
どうもありがとうございました。