名人戦ほか

今日・明日は名人戦第4局、舞台は岐阜。
前夜祭では織田信長や、関ケ原の戦いに言及する挨拶が多かったようですね。

信長が「岐阜」と名付けて450年、というのは初めて知りました。
天下分け目と呼ぶにふさわしい、名勝負に期待しましょう。

貴族が本当に武将のように激しく戦うのかどうか?が見どころでしょうか。
戦型は角換わりに進んでいます。

岐阜では昨日、人間将棋開催の発表もありました。
名人戦と時期を合わせたのだろうと思います。
まったく初耳だったので、驚きました。

理事在職中は、自分の直接関係しないことでも、だいたい知っていたので、こういうリリースを見ると、新しい体制になったのだなあと実感しますね。
外から見ていると、最近の報道は藤井四段一色の状況ですが、もちろんスターはほかにもたくさんいますし、いままで以上にタイトル戦を盛り上げる努力をしたり、イベントを矢継ぎ早に打っていけるようにしているはずです。
これからも期待していてください。

実は明日、次の担当もだいたい決まったということで、簡単な引き継ぎをしてきます。
もちろん、ちゃんとしたバトンタッチというわけにはいかない(手元にないバトンは渡せない)わけですが、自分にできること、やらないといけない仕事はきちんとやるつもりです。

また今日はマイナビの第3局も指されています。
サクサクと序盤から手が進んだようで、戦型は振り穴vs銀冠。
僕の好きな形です。

こちらは愛知県の銀波荘ということで、名人戦とも比較的近い場所です。
男女にまたいでこういうケースは、かなり珍しいでしょうか。

今日の中継はそのほかに竜王戦の準決勝、王位リーグ、王座戦本戦、そして引退がらみが2局(森師匠の対局もあります)ということで、外せない取り組みばかりの都合7局。
忙しい一日になりそうです。
記者の手配もさぞ大変だったでしょうね。

最後に昨日の中継の話題。
竜王戦1組決勝、▲羽生ー△松尾戦で懐かしい(と僕は感じる)定跡形が登場していました。

いま後手が3五の歩を取り、先手が2六の飛車を2五にぶつけた局面。
初見で指すにはなかなか難しい局面ですが、プロは研究したり他の棋士の対局を観ているので、ある程度の指針を持って指すことはできます。

とはいえ、この局面がよく研究され、公式戦で指されたのは6~7年ぐらい前のこと。
その頃の研究をきちんと覚えておいて指すというのは、人間にはかなり困難なことで、トップ棋士といえども大変だと思います。
少なくとも自分のレベルだと、忘れていることも多いですし、覚えているとしても正確に思い出すために時間や思考力を取られてしまうのは避けられません。
ネット中継を観ると、過去の公式戦の実戦例について言及されていることが多いですが、すべて踏まえた上でやっていると簡単に思われてしまうと、ちょっと厳しいものがあります。

時代の流れとともに研究は拡散化、深化の両面をたどるので、何の情報を重点的に整理するかが問われますね。
こういうふうに突然何年も前の流行形が登場することがあるので、それなりに幅広く押さえることが勝負の上では欠かせず、その上で目の前の課題にどう対処するか。
方向性の違う勉強をしないといけないので、大変だなあと思うのです。
多くの棋士の悩みであろうことを、自分なりに書いてみました。

電王戦とか

昨日は朝から家の用事があり、夕方まで外出していたのでNHK杯は観られず。
午後の昔の名人戦を取り上げた番組とともに、録画したので後日の楽しみです。

その後、軽い仮眠のつもりが長い昼寝になってしまい、夜眠れなくなって大いに後悔。
と反省。翌朝に思いっきり影響が出ています。
いまの生活に時差ボケは大敵なので、気をつけようと思いました。

おりしも電王戦がもうすぐなので、夜中にタイムシフトで振り返り番組などを観ていました。
最近は特番まで含めて、どことなくまとめに入ってきたような印象を強く受けています。

昨夜放送があった決起酒会(誰が考えたんだろう?ドワンゴさんらしい企画ですね)は、けっこう皆さんの本音が出ていたように思いました。
その中で、その場にいた全員の一致した意見として、出場して良かった、次にオファーがあったらまた出る。
というのが一番大事な部分だったと自分は思っていて、本当に、良いイベントになったなあと思いました。

コンピュータとの対戦というのはそもそも賛否あって当然ですし、一歩間違えていたら、どうなっていたか分からないと思うので。
少なくとも実際に出場した棋士が(勝ち負けを問わず)そう考えている、というのは大きなことだと思います。

FINALの人選に関しては、(兄弟子でもある)山崎八段が「強くても事前研究しなそうな人は入っていない」とやや嘆き節で(?)言ってましたが、まあ、その通りです。
あとは、自分より年下から選びました。

第1局の感想戦番組も、興味深く見ました。
記者会見のときにも感じたのと同じで、佐藤名人の説明能力、言語化能力の高さが印象的でした。
名人のタイトルを取るまでは、いまのようにメディアに出る機会はそれほどなかったと思うので、知りませんでした。
機会が増えたので訓練を積んだのか、あるいはもともと得意だったのか。
いずれにせよ、ぜひ見習いたいものだと思いました。

特に、中盤で△3六飛と歩を取る手を選んだ理由(将棋世界の記事にもあった通り、この手を選んでも見送っても、決定的な差が生じるわけではない)や、▲9七香~▲7四歩~▲7七桂という手順がいかに読みにくいかという理由が、よく理解できて、いろいろと納得できました。
名人戦との同時並行で心配の声を聞く中で、冷静な視点で自己分析をしてしかもそれを番組で話しているというのは、状態が良いということではないかと感じました。

週末が電王戦第2局ですが、その前に明日・あさってで名人戦第4局。
まずはそちらに、注目したいと思います。

盤外の話題

ここ数日のこと。

最近は、対局以外ではあまり連盟に行くこともないのですが、先週は珍しく2日続けて行きました。
水曜日が竜王戦の対局で、木曜日が書道部。
書道は棋士の必須科目なので、自分もヘタなりに努力しています。

最近は、将棋ファンで知られる、ある文豪の名言を練習中です。
(と聞いてピンと来る人は、どの程度いるでしょう?)
近いうちに、お披露目できたらと思っています。

金曜日は首都大学東京で講師を務める日。
これから4週続けて、自分の担当回です。
(後半は、中村太地六段にバトンタッチ)
「将棋で学ぶ法的思考・文書作成」という授業で、実は将棋そのものの授業ではなく、「法的思考」と「文書作成」の授業です。

言い換えると、「考える・思考する」ことと「書く・表現する」ことの2つを、学んでもらうということです。
僕自身は考えることはもちろん得意で、書くことも好きなほうだと思うので、わりと向いていると思っています。
逆に、「覚える・記憶する」ことはかなり苦手です。
将棋がもし、高度な記憶力を必要とするゲームだったら、続いていなかった気がします。

僕も棋士として、一生懸命自分なりに考えて、それを盤上に表現することで、これまでなんとかやってきました。
もちろん考えるためには、セオリー・コツ・手筋など、いろいろな知識、つまり考える材料が背景にあるのはもちろんですが、どう組み合わせるかという点で、個性が出やすいのが将棋というゲームだと思います。

5限の授業終了後、夜はご縁あって中原先生と食事してきました。
中原先生と言えば、もちろん雲の上のような存在ですが、三段の頃にはよく記録を取っていて、終わったあとにお誘いいただいたこともありました。
たぶん、ご一緒するのはそれ以来だと思います。
昔の貴重なお話もずいぶんうかがいましたので、そのお話は、自分の宝物にしたいと思います。

連盟HPからコンテンツをひとつご紹介。
女性限定、将棋を指さない将棋イベント?

数年前から、「東竜門」「西遊棋」として、若手棋士たちが自身でイベントを企画・立案・運営していて、本当に頼もしい限りです。
こうした機会は近年増える一方なので、これからもぜひ足を運んでいただけたらと思っています。
上記はイベントレポートですが、その他にも初心者向けの講座や昭和の名勝負の紹介、タイトル戦の見どころや教育系の読み物等々、連盟HPでは毎日いろいろなコラムが更新されていますので、ぜひチェックしてみてください。
毎日定期的に発信していくことは自分も心がけているところです。
あとは、新規の方の目線を意識して、いろんな形で普及に貢献していきたいですね。

今日のモバイル中継は、リアルタイムの対局はありませんが、弟弟子の大石六段が昇級を決めた1局が配信されています。
先日の祝賀会での本人の挨拶によると、ずっと苦しい将棋で、師匠も一日ずっと心配していたのだとか。
後日配信にはリアルタイムとは全く違った良さがあると思いますし、序盤からハラハラする内容の面白い将棋でしたので、一読をオススメします。

最後に最近読んだ本の紹介。

少し前に買ってあったのですが、厚みがあるので時間ができてからと思っていて、最近ようやく読み終わりました。
面白いことは読む前から保証されているようなものなので、とても楽しみにしていて、実際期待通りでした。
棋士がプロとして棋譜を生み出すように、記者の方もプロとして観戦記を世に送り出して下さっているので、名局とともに良い観戦記が、これからも時代・世代を超えて多くの人に届いてほしいと思います。

女流王位戦ほか

昨日の女流王位戦は、挑戦者が勝って1-1のタイに。
伊藤女流の持ち味全開で、見事な入玉劇でした。
やはり、個性が出た将棋というのは見ていて面白いと感じます。
また、自分の長所が出せたほうが、結果にもつながりやすいという面も、あるように思います。
里見さんは相変わらず強いですが、他にも強い若手はたくさんいるので、近いうちには新たにタイトルを取る人も現れそうな気がします。

次の一手のような手が見られたのでご紹介。(先手番)
棋王戦予選の枠抜けの一番です。
自分の第一感は、▲7四歩△同飛▲8三角で、たぶんそれも有力でしたが、実戦の進行は全然違いました。


解答は末尾に。
また、全棋譜は将棋連盟ライブ中継で。

藤井四段は昨日も強かったですね。
これで17連勝。
対局開始時の写真を見るたびに、報道陣が増えているように感じます。
大阪の事務局もさぞ大変でしょう。
ワイドショーなどでもちょくちょく見るようになり、取り上げていただけるのはもちろんありがたい半面、ちょっと本筋とそれ始めたようなところも。
将棋そのものに、注目が集まるきっかけになればと願っています。

ブログのはなし。
「タグ」を打つとどういうメリットがあるのかまだよくわかっていないのですが、とりあえず見よう見まねでやってみています。
棋戦名、棋士名などを中心に、あと「図面あり」のタグをつけて、将棋の解説をしている記事は後からでもまとめて読めるようにしてあります。
ご参考まで。

昨日は久々に大学講師をしてきました。
そのほかもろもろ明日、おりしもリアルタイム中継もないようなので、盤外の話題をまとめて書きます。

上記の正解は▲8五桂!
一歩を入手して▲3四歩(以下△5一角には▲2二角)が狙い筋で、実戦も狙いが実現して先手快勝。
守りの桂を捨ててまで歩を入手するというのは珍しい手筋です。
盤面を広くとらえることが大切ですね。

前例

昨日の中継は3局。
うち、大阪で行われていた、北浜ー澤田戦(王将戦)をお昼頃観てびっくり。
つい先日、自分の指した将棋と同じ展開だったので。

翌日に「この内容では鑑賞に堪えないので、今回は図面は控えます」と書いたのですが、まさかこんなことが起きるとは思わなかったので、簡単に触れてみます。

前例を離れたのがこの局面。自分が後手で、相手は遠山五段でした。
その将棋は、△5一金右に代えて△2八飛と王手し、以下▲7八銀△4四馬▲4一桂成△2九飛成▲3二飛△5二歩▲4二成桂と進んで短手数で負け。

△4四馬という手は、▲2二飛の攻めを防ぐ意味で(昨日の将棋では▲2二飛△3二銀合のあと、△4四馬から飛車を取りに行く展開になった)、かつ敵玉もにらむ形になるので本筋だと思いました。
しかし本譜の攻めが早く(実は▲6一桂成△同玉▲5五角のような手を予想していました。読みが甘い)、一気に負け筋になってしまいました。

激しい展開だったので、一気に負けてしまったこと自体に悔いはなく、それだけなら↑のようなことは書かないのですが。
実はこの変化は杉本七段の本を読んで、なるほどそんな手がと思った程度で軽い気持ちで飛び込んでしまったので、それが良くなかったと反省しています。
当たり前ですがプロとして、もうすこし自分の頭で考えてから指さないといけなかったなあと。
ただ、面白いと思ったら分からないなりに挑戦する気持ちも大事なので、そこの折り合いは難しいところですね。

(途中の△6五金という手がそれで、↑の本の「藤井聡太の衝撃」というコラムに書いてあります。
他にもいろいろオススメできる内容なので、興味のある方はぜひどうぞ)

 

で、その対局の感想戦で△5一金右という手を指摘されて、だいぶ検討してなるほどこれが最有力かという話になったのですが、昨日の感想戦コメントでは真逆のことが書いてあって、つまり将棋は難しい。
ただ検討結果が全く異なるということではたぶんなくて、△2八飛▲7八銀合に△4四馬ではなく△5一金右とした場合、▲4一桂成△同金に▲3九金と打たれる可能性があるので、△2八飛と王手せずに単に△5一金右を選択した。
というニュアンスだと思います。
本譜は△2八飛▲7八銀を保留した結果、数手後の▲5二銀から澤田六段が一気に寄せ切ったわけですが、本当に寄っていたかどうかは、簡単ではなさそうなので、もうすこし考えてみます。
(2度あることは、3度あるので、また公式戦に現れてもおかしくない)

ところで、その遠山編集長は、最近充実しているようで。
昨日の戸辺七段との将棋があまりに快勝で、自分が吹っ飛ばされたのも何だか納得してしまいました。
とても鮮やかな終盤だったので、鑑賞をオススメしておきます。

今期は竜王戦で3組は村山七段(優勝)、4組は千葉六段、5組は伊藤五段が、決勝進出。
前期の順位戦では横山六段(B2へ)と西尾六段(C1へ)が昇級。
など、同世代の棋士が粘り強く活躍しているので、自分も頑張らなくてはと、いい刺激をもらっています。

今日は女流王位戦第2局、舞台は北海道。
戦型は相振り飛車になっています。