注目局など

今日は加藤先生が最年長勝利記録更新か、もしくは引退かということで、注目を集めています。
「この一局に負けると、規定により引退」という(一般の)報道を多く目にして、たしかに事実なのですが「最後の対局に負けた時点をもって引退」というのと、この対局に負けたらそれで引退が決まる、というのとは微妙に違うので、なんだかちょっと不思議な感じもあります。

それはさておき、こういう一番に当たるというのは何かの縁で、若手の高野四段にとっては、貴重な人生経験でしょうね。
ちなみに僕は、加藤先生に最後のメモリアルアーチ(1300勝)を献上したことがあります。
あのときの加藤先生は嬉しそうだったなあ。
「冷房、22度にしてください」はいまも耳に残っています。
(ちなみに11月の対局でした)

明日は藤井四段の28連勝を懸けた対局があり、2日続けて一般に注目を集める一戦ということになります。
いま見たら日本将棋連盟モバイルのトップページのデザインが変更されたようで、このタイミングは偶然なのかどうか?

昨日は夕方事務局に寄ったのですが、相変わらず忙しそうでした。
メディア・広報は特に大変そうで、他の部署でも売り上げが伸びたり、参加人数が増えたりと良い効果があるようです。
モバイル中継の会員数も伸びているとか。喜ばしいことです。

ただ、こういう追い風の吹いているうちは何もしなくても売り上げが伸びるのは当然なので、現状に満足せずもっとできることはないかと探す。
あるいは今後また無風あるいは逆風の状態になったときにこそ、踏みとどまる努力する。
そういう職場であってほしいですね。

あと全体に望むこととしてはこの機会に、プロアマ問わず指導の能力を磨く機会を増やしてほしいと思います。
指導者不足の声をよく耳にするので。
「もったいなかった」とあとで後悔しないように、どんどん前に出る将棋界でありたいですね。

将棋世界

月の後半近くなり、ちょっと出遅れ感はあるのですが、将棋世界の話題。
できれば出てすぐぐらいで取り上げたいのですが、ニュースが多いのと、そもそも読まないうちからは書けないので、ついついこうなってしまいました。
将棋世界

藤井四段、表紙登場もたぶん最年少記録なんでしょうね。
特集記事で目を引いたのがこの一文。

決め手を与えない粘り方は四段の頃の羽生さんと似ているし、一手勝ちを見切る攻めは谷川さんのようです。普通の新人は1つ特長があれば十分で、プロ生活を送っていくうちに多くの要素を持ち、バランスを取っていくのが自然ですが、藤井君はすでに多くの特長を持ち合わせています。(深浦九段)

なるほどたしかに。

最近、いろんな報道関係の方からよく「藤井さんはいったいどこが強いんですか?」という質問を受けるのですが、正直言っていささか答えに困ります。
とにかくミスが少なくて正確、とか弱点がない、とかではちょっとインパクトに欠ける、でもそれに尽きるんですよね。
あとは、尋常でない集中力と、勝負への強い気持ちは見ていて感じます。

僕が好きな大山先生の名言に「長所は短所につながる」というのがあって、つまりここが強い、と言われるのは裏を返せば他のところが弱い、という意味でもあると。
そういう意味でも、「多くの特長を持ち合わせている」という表現は、なるほどと思いますね。

雑誌の話に戻って、そのほかの見どころを一言でまとめると、「斎藤七段、料理を語る」でしょうか。
あんなにいい男でタイトル戦にも出るような棋士が料理もできるとか、まったくもって隙がない。

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昨日の記事では触れませんでしたが、朝日杯は全体ではプロの9-1という結果でした。
今回のアマ側は例年以上に経験・実績の豊富なメンバーがそろった中でのこの結果なので、プロ側が実力を見せたという印象が強いです。
最近、順位戦の開幕戦などでも熱戦が多いように感じますし、プロも藤井四段フィーバーの中で、皆いっそう気合が入っているということではと思いました。
僕自身も、一局一局、一生懸命頑張りたいと思います。

全10局の中で、特に印象に残ったのはやはり持将棋にもつれた佐々木ー小山戦と、あとは井出ー鈴木戦、西田ー稲葉戦など。
個性豊かな将棋が多く、面白い一日だったと思いました。
昨日も加古川青流戦が行われていましたし、土日もこうやって中継があるのはやはり良いですね。

その青流戦は、1局目はまたも雁木風味の駒組みが登場。
進んでみると雁木+右玉vs右四間+左美濃、という珍しい対抗になっていました。
この4つの型はいずれも矢倉の支流で、僕が子どもの頃はがっぷり4つの相矢倉がプロの土俵であるのに対し、こうした支流はアマ強豪の土俵、というイメージがありました。
いまはもちろん、全然そんなことはなくて、最近はいろんな意味で、将棋に垣根がなくなってきたなと感じさせられます。

再び雁木とか

しばらく前に「雁木」という記事を書いたところ、普段より多いアクセスがあったようで、右側の「人気記事」のところでずっと上位になっていました。
(いまも残っています。実はどういう仕組みで変化していくのか、自分でもよくわかっていません)
昨日の朝日杯、注目の一戦で、また登場していたのでその続きの趣ですこし書いてみます。

東大生・藤岡君の取った作戦は、6七銀・5七銀と2枚並べる旧式の雁木でした。
藤井四段の将棋を見ていると、角換わりと対振りが目に見えて多く、みんな他の戦型をぶつけないのかな?と最近は疑問に思っていたので、個人的にはなるほどの作戦でした。
ただ、本局は(いつもか)藤井四段の対応が巧みでしたね。
※全棋譜は朝日新聞デジタルで。

序盤を見ていてふと、昔の苦い思い出がよみがえりました。
プロになって2年目、2005年の将棋。
図の▲3七桂で作戦負け、以下も大敗しました。
なぜプロになってからはほとんどやったこともない雁木を指したのか、全く覚えていません。

部分的な対応が、昨日の藤井四段と似ているのが分かると思います。
この将棋は△4五歩のタイミングが命で、▲3七桂~▲4五桂と取られたり、▲4六歩△同歩▲同角と動かれたりして、そこでいい対応がないと、その瞬間にアウト。
という意味で、雁木側に工夫を求められる戦型です。
うまく指しこなせば、いまでも使えると思いますが、例の4七銀型のほうが、マネしやすい作戦とは言えそうです。

全棋譜は名人戦棋譜速報にあります。
第64期C2、伊奈ー片上戦
↑クリックすると棋譜が開きます。
↑↑↑こんなふうに、過去の棋譜もすべて観ることができます。大変お得なサービスだと思います。

前のエントリを書いたのがちょうど2週間前で、その間にもC2の伊藤ー梶浦戦など、雁木は何局か指されており今後もまた公式戦に登場しそうです。

藤井四段はこの朝日杯の白星で27連勝、ついに大記録に王手。
もはやテレビをつけたら彼のニュースをやっている、という状況になってきた感があります。
昨日はNHKにいたら、終局の瞬間に速報が流れていました。
もちろん異例のことだそうです。
次の澤田君は、リベンジに燃えていると思うので、本当に楽しみな一戦です。

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棋聖戦第2局は、羽生棋聖が勝って2連勝という結果に。
斎藤七段のほうが指しやすいのかなと思った場面もあったのですが、優勢とはいかない感じだったようで、壁の高さを感じる内容でした。
いつも淡々と勝っている感じがすごいですね。

図の局面は、右玉側の玉頭方面が普通より分厚く、美しい陣形。
いっぽう矢倉側の陣形は普通より薄いと見るのが、普通の感覚かと思ったのですが。
次の▲3四角に、△4二歩と受けておいてはダメだったんですかね。
こういう利かされの手から考えるようでは、強いプロにはなれないんでしょうか。

ところで、本局も斎藤七段の和服姿はかっこよかった。
第3局はまず、一番返してほしいですね。

あれこれ

昨日はカロリーナの対局(リコー杯女流王座戦)が中継されていました。
久々の対局なのと、直前にヨーロッパに出かけていたので体力的なことも心配していたら、むしろ良い将棋が指せたようで感心。
特に中盤は、すこし苦しい局面と見えたところから、うまく粘りました。

図ははっきり優位に立ったあとに、再び追い込まれている場面。
観戦しているほうは特に面白いところ、対局者としては一番大変なところ。
ここで▲3三銀~▲2五桂と迫ったのが良い手で、勝ち筋に入りました。

本戦入りはたぶん初めてのはずです。
まだ強くなれると思うので、この調子で頑張ってもらいたい。
話題になるだけでなく、こうやって良い将棋を指して、ファンに観てもらうことが大事です。

一昨日に続いて、渡辺竜王のブログより。
昨日はほとんど同じ時間帯に、藤井四段の学校のことを書いていたようで、偶然の一致にちょっとびっくり。
渡辺竜王も高校生としての3年間をプロとして過ごしているので(彼は東京ですが)、大変さは分かるのでしょうね。

あと先手中飛車に対するこの構え、実は僕も同感で、この形が流行しているのは何だか不思議な感じなんですよね。
僕はまさに「自分らの年齢の棋士」です。
ひとつ言えることは、端から△1四歩~△1三角と使う技術が昔に比べて一般化された、ということはありそうです。

26連勝目を献上となった、瀬川五段のブログ
対局の朝に声かけられちゃうとはびっくり、でもそれは藤井君だけでなく、瀬川さんも有名だからこそでしょう。
渡辺さんとも瀬川さんとも、最近は全く会ってないんですが、久々にブログ研やりませんか。

それはさておき、負かされたとたんに応援団になるという気持ちは、なんとなく分かる気もします。
あと、近々に対戦が決まった棋士もたぶん、自分のところまでは負けずに来てほしいと思っているはずです。
将棋指しとはそういうものだと思うので。
ファンや世間とはすこし違った形で、棋士もみんな、藤井四段の対局に注目しています。

その藤井四段、今日は朝日杯でアマチュアとの対戦。
混乱を避けるため、公開対局は急遽中止になったそうで、ここでは指す前から伝説を作ってしまいました。
たしかに、会場が対局どころでなくなっては本末転倒なので、やむを得ないと思います。
公開するためには、電王戦のときみたいに有明コロシアムとか、国技館とかを借りるしかないですかね。
(冗談半分ですが、あながち冗談でもないかも?)

ちなみに朝日杯はプロアマ戦全10局の一斉対局で、東西、午前・午後に分かれて指されます。
例年通り、全体の勝敗も注目されるところでしょう。

それから、今日は棋聖戦第2局。
中継ブログによると、戦型予想はかなり割れたみたいで、これほど予想が分かれるのは珍しい?
なんだかいつにもまして、楽しそうな前夜祭です。
個人的には横歩取りかなと思っているのですが、どうなるでしょうか。
第1局に続いて、終盤の大熱戦を見たいですね。

カウントダウン

藤井四段は昨日も勝ち、これで26連勝。
いよいよ新記録へのカウントダウンが始まった感じです。

テレビでも話したとおり、最近の彼の将棋を観ていると、簡単に勝っている将棋はなく、いつも難しい将棋でミスが少なく、結果競り勝っています。
とすると疲労感も相当なものだと思うのですが、どうなのでしょうか。

ブログを書き出してふと、彼はたぶん今、学校に行ってるんだよなあ、と気が付きました。
いまの彼と同じ年の頃、僕は奨励会の初段で、月に2回、大阪に新幹線で通っていました。
例会前日は学校から帰ったらカバンを持ち換えて大阪に行き(当時は奨励会は平日だった)、将棋会館に泊まります。
翌日の例会が終わったら夜中遅くに広島に帰ってきて、次の日はまた学校に行く、という生活がちょうど6年ほど続きました。
中学生であればそれは当たり前のことながら、対局の前日も翌日も学校に行くというのは、それなりに大変だった気がします。

彼の場合はプロ棋士としての対局なので持ち時間もはるかに長く、東京か大阪に出かけて対局して、地元に戻って学校に行って、のコラボはかなり大変なはずです。
深夜に及ぶ順位戦を指して、その2日後にも対局があり、となると普通の棋士なら、今日は一日休むところです。
天才は、体力がなくては務まらないのだなと、いまさらながら思いました。

そういえば、「将棋は体力」という名言もありました。
言ったのはたしか、中京地区のスター棋士・板谷進先生だったはずです。
ここまで来たら大記録を見たい気持ちもあるいっぽう、早く誰かが負かしてあげなくてはという気もします。
これだけ強いと誰と当たっても簡単には負けない、と羽生先生が言ったそうですが、次はどうなるでしょうか。

C1に続いて昨日のC2も、熱戦、遅い終局の多い一日でした。
今週だけでいくつの名局が生まれたのでしょう。
一人のスターをきっかけにして、モバイル中継などで対局を観る人が増えてほしいですね。