最近の中継 王位戦第6局など

昨日は宣言通り、ほぼ終日最近の将棋を観て過ごしました。
あっという間に一日が過ぎていきました。
なんだか浮世離れした話ですが、そもそも一日中かけて一局の将棋を指しているわけですからそれぐらいは普通でしょうね。

飛び立った6日から昨日までで、中継局を数えてみると全部でちょうど30局ありました。
つまり土日含めて1日平均5局ですから、普段と比べても多かったですね。
特に7日に早指し棋戦を中心に11局あったのが大きかったようです。

昨日の王位戦第6局は、封じ手前後から終盤までずっと振り飛車ペースと見ていましたが結果は豊島棋聖の勝ち。
菅井王位としては痛恨の逆転負けだったのではと思いましたが、感想戦コメントを読んだ感じでは大変だったのかもしれません。

やはりトップの将棋は常に懐が深い。
最終局はお互いにとって本当に大きな勝負になりました。

そのほか竜王戦の挑戦者、王将リーグ入りのメンバーが決まるなど、大きな将棋がいくつもありました。
いずれも先手番が押し切った内容で、やはり先後の差は大きいです。
広瀬八段はこのところ上位棋士を連破し続けていて絶好調モードに見えます。

若手棋戦では新人王戦で三段が決勝進出、加古川青流戦では大橋四段がヤマダ杯に続いて若手二冠に王手。
大橋四段はよく新構想を見せてくれている印象ですが先日の将棋も要注目の新型でした。

王座戦の松本ー西山戦がけっこう劇的なトン死の幕切れでした。
西山さんが勝つと女流枠4人全員勝ち上がりとなるところだったのですね。
これはレベルアップもさることながら、持ち時間のルールが変わって経験の差が出にくくなったことも一因ではないかと思いました。

そしてその4人に入っていない清水さんがリコー杯で挑戦権。
最年長記録だそうで、その事実にはちょっと驚きました。

今日はA級順位戦や、叡王戦で師弟対決などがあります。
自分は朝から練習将棋の日。
対局に向けて調子を整えていきたいと思います。

帰国

昨日の朝、成田に着いてお昼頃、無事帰宅しました。

発展途上国を訪れたのは初めてなら、義理の両親と一緒だったのも初めてで、いろいろとこれまでにない旅でした。
ホテルの部屋には無料Wi-Fiがなかったのと、移動中のバスが揺れるのとで(道は予想通りの悪路、でも心配したほどではなかった)モバイル中継もほとんど観ないで数日間過ごしました。これも近年ない出来事でした。

スリランカは日本と比べてはもとより世界全体で見ても貧しい国の一つだと思いますが、人々は明るく、優しく、そして何より勤勉で、幸福度も高そうな国に見えました。
ただ帰ってきてから調べたところでは、統計上はそうでもないようで、幸福という概念は難しいものですね。
一度だけ旅行しての印象ですが世界有数の誠実な国ではないかと思います。治安もとても良いように見えました。

街はコロンボの海岸付近だけが別世界のようで、これは中国との関係もあるようですね。
この街は近年急速に発展しているとのことですがまだまだ途上なのも明らかで、20年ぐらいしたらまた訪れて変化を感じてみたいと思いました。
いっぽうコロンボとキャンディ以外はまさに田舎、ほとんどの場所は田園風景というより森に近い。
数少ない道に沿って人々が暮らしています。つまり道を作れば村ができてやがて街になる、これってまさにカタンとかシムシティと同じじゃないかと思ったり。

こういうのはまさに百聞は一見でいくら文字で書いてもなかなか伝わらないので、興味のある方はぜひ訪れてみてください。
アジアの中でもトップクラスの親日国でもあるようで、行ってみるまで知らないことも本当に多くありました。

シギリアロックに登ったのは良い思い出になりました。
登るのはけっこう大変だったし下りるのはかなり怖かったです。
今回の旅もいままでにない経験ができて良かったです。

今日は最近の将棋に目を通すなどして、明日からまた日常に戻ります。

8/28 高崎六段戦

誕生日の一局です。

戦型は相手のノーマル三間飛車に。
最近プロ間で目に見えて角道を止める振り飛車が増えています。
アマチュアの方に人気のある戦型だと思うので、これは喜ばしい傾向と言えます。

いろいろな対策がありますが本局はあえて一歩タダで取らせる指し方で、安全に居飛穴に潜る。
類型は少ないですが有力な作戦のひとつです。

本局は一局を通してうまく指せました。
図は終盤、どう勝つかという場面。


(※画像は名人戦棋譜速報より)

実はこの△6九金は軽視していました。一段金は効率が悪いので。

しかしここから▲3五角△7九銀▲7八金△7七歩成▲同桂△7六歩・・みたいな感じになるとうるさいです。
うるさい、と言うより逆転模様ですね。将棋の終盤はすぐ逆転します。

この局面では角を逃げるのではなく「△6八金と取られても自玉はZ(絶対に詰まない)」というところから読みを進めるのが、終盤のコツ、そして穴熊戦のコツです。

以上をふまえて一本▲7三歩が筋の一着。
これを△同玉には一例ですが↑の順に進めて、△7七歩成に▲9五角の技が利きます。
実戦の△7三同桂には▲4四角が攻防手。

対して普通は△6八金▲2二角成△7九銀とするしかないところですがこの局面

相変わらず先手玉はZなので▲6一銀と詰めろで迫ってこれは明快な一手勝ち。
▲4四角とラインに設置したことで、「絶対に詰めろがかからない」形にまで進化しています。これは8八金一枚の穴熊では頻出の勝ちパターン。
また▲7三歩の利かしはこの変化のときに働いています。(後手玉が狭い)

実戦は▲4四角に△1二飛▲3五角上△3四歩とイヤな粘りをされましたが、▲6一銀から寄せ切ることができました。
以下の順は
「自玉に詰めろ(一手スキ)がかからない」
→「二手スキの連続で迫る」
という思考で成り立っています。

将棋はやはり終盤が大切なので、良い着地を決められて良かったです。
順位戦は3-1での折り返し、このあとも1つでも順位を上げられるよう頑張ります。

7/31 平藤七段戦

7月3度目の順位戦、2度目の大阪遠征でした。

本局は後手番で流行の雁木を初採用。
これは振り飛車を捨てたわけではなく、9手目の▲7八玉に触発されてみたものです。
比較的前例の少ない形に進みましたが、これで得になっているのかは難しい。


(※画像は名人戦棋譜速報より)

この▲5七角(3五から)が良い手で、はっきり苦しくなりました。
次に▲3五銀~▲2四歩の棒銀が受けにくい形で、実戦は仕方なく△3四銀としたのですがこれはつらい手です。

直前に8筋の継ぎ歩で△8六歩▲8八歩の形を強要して、一歩得と8筋の拠点、どちらが大きいかという戦いに持ち込んだのですがこの大局観が悪かったようです。
(※38手目の感想戦コメントにも記載あり)
ただこういうのはやってみないと分からないこともあるので、ある程度は仕方なかったかなと思います。

数手進んで次の図。

棋譜コメントにもある通りで、この時点ではお互いの攻めの銀をさばき合った勘定なので部分的に互角のやり取りです。

しかしここで▲7六銀が好手でシビれました。
8筋の拠点を緩和するどころか、こちらの攻撃陣が目標になっています。
△4五歩と△6五歩の2手が指せれば攻めに迫力が出るのですが手が間に合っていない。

以下も手堅くまとめられて完敗の一局でした。

7/18 宮本五段戦

延期になった順位戦の1回戦です。
結果的に、七段昇段の一番にもなりました。
いろいろと忘れられない一日になったことは、対局翌日に書いた通りです。
勝ち 忘れ得ぬ一日

この将棋はプロ的には中盤がすべてで、途中からは差がついてしまったのですがそのせいもあって以降はこちらに気持ちの良い手が続きました。
(棋譜は名人戦棋譜速報でご覧いただけます)

駒の損得のほぼない互角のさばき合いで、手番はこちら、他に代償も見当たらないのですでに勝勢に近い局面。
ここで▲5七角が厳しい一手で、飛車を横に逃げると3二の銀が取れます。
しかしタテに逃げるのも▲3九香が継続手、ここで歩切れが痛い。
一歩持たれていると、まだ難しいところはありそうですが。

▲5七角以下△3三飛成▲3九香△3四銀▲3七桂(これも味良し)△1八馬と進んで次の図。

△1八馬は▲4五桂の防ぎ。
ここで▲6五歩が決め手で、まだ夕方でしたがさすがに勝ちを意識しました。
この数手はおそらくプロなら誰もが同じところに手が行くという類の手だと思うので、そこを間違いなく指せたのは良かったです。
誰でも指せる当たり前の手を、しっかり指して勝ち切ることが将棋では一番大事です。

これ以上ない内容で連勝スタートとなりました。