初トライ

スマホから投稿してみます。

電王戦、良い内容の将棋だったと思いました。ポナは強かったですね。

同日、カロリーナは(たぶん)初めて居飛車で戦ってましたね。割合うまく指していたのではないかと思いました。本戦入り目指して頑張ってもらいたいです。

昨日の王位リーグ、最後に残った丸山ー佐々木戦は熱かったですね。面白い将棋ばかりだったので、あとでまた詳しく見てみたいです。

挑決は菅井七段と、弟弟子の澤田六段の決戦に。これだけのメンバーから勝ち抜いたのは、すごいの一言です。

それにしても、竜王・名人がそろって陥落とは、きびしいリーグ戦だと改めて思いました。

今日も竜王戦の5組決勝をはじめ、中継局めじろ押しの一日ですね。お楽しみください。

僕は今夜、東京に戻る予定です。

5/10 青嶋五段戦(2)

昨日の続きです。
まだの方は先にそちらをどうぞ。

△7七歩の王手に対し、応手は3通り。

(1)まず▲同玉は悪手で、これには△6八と!がやや珍しい好手。

▲同金でも▲同銀でも、△5七飛の王手馬取りが決まってこれは勝ち。

(2)▲同桂は有力。これに対しては昨日出てきた△6七とがまず有力で、▲同玉△5七飛はやはり王手馬取りで勝ち。
ただ▲8九玉と逃げて、△7八歩▲8八銀△7七と▲同銀と丁寧に応じられると、攻めきれません。
そこで▲7七同桂には△6七桂と打つつもりでした。

次は△7九桂成で、▲同金は△6八と▲同金△8八飛、▲同玉は△6八と▲同金△8八銀で、いずれも詰みます。
後者の変化で▲8八同玉△6八竜▲7八合駒に△8九金▲同玉△7九飛の詰み筋を用意したのが、△7七歩▲同桂を入れた狙いです。
(金合があれば詰まないが持っていない)

この図で▲6五馬はやはり有力ながら、△8八銀まで同じように追って▲7八玉△7九飛▲6七玉△6八竜▲同玉△7七飛成▲5八玉

△6六桂▲4八玉(▲同馬は△4七金で詰み)△3八金▲同馬△同と▲同玉△4七角▲2八玉△7四角成と一本道に進んで勝ち。

ただしこれで物語は終わりではなく、△6七桂には▲8八玉の早逃げが「ザ・手筋」。
対してこちらも△9一玉と早逃げしてどうかというのが対局中の読みでした。

桂馬を渡す直前に、桂馬を渡しても大丈夫な状態を作るという狙いです。

以上の変化は感想戦でもやったのですが、帰り道に、▲8八玉でなく▲8九玉と早逃げする手に気がつきました。
玉が8九にいるといきなり▲6七歩と取れる(↑の図だと玉を抜かれてしまう)ので、この変化は負けだった気がします。
第一感だと▲8八玉のほうが自然に見える(△7九桂成が王手にならないので)ところなので、対局中は気がつきませんでした。

 

最初に戻って、実戦は(3)▲8八玉を選択。
実はこの手には意表を突かれました。
なぜか?は昨日の冒頭にあった状況把握を思い出してほしいのですが、現状、飛車が渡せるので△7八飛!と打ち込んでいく攻めがあり、いかにも危なそうに見えるのです。
ところが以下▲同銀△同歩成▲同玉△6七銀▲8八玉△6八とに▲9六歩!が粘りある一着。
形勢はきわめて難解です。

戻って▲8八玉の局面では△6八と▲同銀(▲同金は△同竜で詰み)△5六桂という攻めもあり、これが△7八飛以下の詰めろでかつ銀取り。
いかにも勝てそうに見えますが▲5七角と受けられて、この変化は勝てません。

実戦は▲9六歩のあと、△6九と▲9七玉△7三歩▲8四金△8三金打・・とさらに40手ほど終盤戦が続いて、最後は運良く勝てました。
最初の局面では、勝ちか負けかはともかくもう終わりそうに見えたのが、意外なバランスで全然終わらないので自分自身、将棋の終盤戦の持つ奥深さに驚きました。

いつもこういう面白い終盤に出合えるわけではないとしても、これからもできるだけこういう将棋が指せるようにと思います。

5/10 青嶋五段戦(1)

昨日の電王戦がどうなったか気になるところですが、現在北海道を旅行中です。
今夜はponanzaの山本一成君が情熱大陸に取り上げられるらしいですね。
録画してあるので帰京後の楽しみです。

彼はこのイベントの申し子と言って良い存在で、ここぞというタイミングでの放映ですね。
松本哲平君と3人で、将棋世界に連載していた頃は、よもやこんなことになるとは思いもしませんでした。
こうやっていろんな形でスターが誕生したことも、本当に良かったと思います。

先日の竜王戦の対局、終盤が非常に面白かったので、予約投稿で2回に分けてご紹介します。

自分が後手番で、前局に続いてゴキゲン中飛車を採用。
図の後手玉は穴熊の名残ではなく、7二にいた玉が8二→9二と追われて、▲9一角成!△同玉▲8三桂成△9二角!というような攻防があってこうなりました。
このあたりのやり取りもなかなか面白かったし、序盤も比較的珍しい形で、最終盤も難解で、全体として良い将棋が指せたと思います。

この局面は数手前からの読み筋で、状況をこんなふうに把握していました。
(1)桂馬は基本的に渡せない。(▲8四桂がある)
(2)でも桂馬以外ならだいたい渡せる。(たとえば飛車を渡しても、まだ詰まない)
(3)自玉(後手玉)に次に詰めろをかけるなら、▲6五馬しかない。
(※)たとえば▲6一角とかは、一枚足りないので詰めろにならない。

以上をふまえて△6六飛!がきれいな妙手、のつもりでした。
▲6五馬を防ぎつつ、次に△6七飛成▲8八玉△6八との必至筋を見ています。
ところがこれは▲6五角!という切り返しがあって勝てないことに気がつきました。

一枚使ってでもこのラインを狙うのが急所で、次に▲7三金と開き王手をかけられたときに、合駒がないのです。
(△8三桂合は▲同香成△同歩▲8四桂で詰み)
重ね打ちは盲点でした。

他に△6七と、という手が浮かんだ人は鋭いです。

▲同玉は△5七飛の王手馬取りなので、▲8八玉と逃げるしかないのですが、そこでもうひと押しがなく、負け筋です。

他に△5六桂という足し算の攻めも有力ながら、▲5五馬と引いた手が詰めろを逃れながらの桂取りで、これも勝てません。

いろいろ考えた末に、実戦は△7七歩と王手。
この手は長考した甲斐あってなかなかの手だったようで、相手も長考に沈むことに。
(明日に続く)

 

 

 

電王戦

本日、第2局。
今度こそ、本当に最後の最後、Final of FINALです。
正直言ってここまで盛り上がり続けるとは、当初は思っていなかった気がします。
終わりが来ることはもうだいぶ前から分かっていたとはいえ、寂しい気持ちもあります。
自分自身、ある一時期を濃密に関わりましたし、一棋士としても深い関心を持って見守ってきました。

実は今日から旅行に出かけるので、旅先で日本将棋連盟モバイルをチェックすることになりそうです。
ニコニコ生放送はこちら

ずっと紹介しようと思っていて、伸び伸びになってしまっていたのですが、未来にも役立つと思うのでいまさらながらご紹介。

いまから注文しても対局が終わるまでには届かないし、このブログの読者なら皆さん買ってるでしょうから全くの手順前後ですが(笑)
お手元にある方はぜひ、パラパラと読み返しながら観戦されてはいかがでしょうか。

将棋に一番関係があるのは第2章かと思います。
いくつか「核心」となっていると思った部分を、要約して紹介してみます。

・将棋は囲碁と違って、「何もしない」ことが最適解になることが多い。将棋にはマイナスの指し手、極端な悪手が多く、逆に囲碁はほとんどの手がプラスである。だから、将棋は「ダメな手」が分かることが特に大切である。
・では「ダメな手」をどうやって見分けるのかというと、実戦経験で「図形の認識能力」を高めていく。これが「美意識」につながっていく。プロ棋士が直観でほとんどの選択肢を捨てて、読みの方向性を絞り込んでいけるのはこの「美意識」があればこそのこと。
・ところが人工知能には「美意識」がない。また、「恐怖心」もない。しかし、美意識や恐怖心がないからこそ、人間が「美しくない」あるいは「不安」「危険」と感じて知らず知らずのうちに捨てている可能性の中から、良い手を拾い上げることができる。
・将棋ソフトであれば、そうやって可能性を広げてくれるのはただただ有意義なこと。しかし社会一般に人工知能が導入されていくとなると、人間が人工知能の判断に納得できるかどうかは、より厳しく問われるだろう。
・人工知能も間違えることはある。人間がミスをするのは理解できる一方で、人工知能は絶対に間違えないと勘違いしてしまうことはありうるので、過信しないようにしないといけない。
・一方で人間の「美意識」もまた、時代とともに変わっていくものである。決して定まったものではない。

自分自身もAIに対して、かなり近い感覚を持っていると思っています。
ただもしかしたら、自分の言葉に変換していくうちに、そうなっているのかもしれません。
皆様はどう思われるでしょうか。

最後に一か所、とても腑に落ちた部分を引用して今日の結びにします。
この意味では、将棋界は多士済々で、逆張り、他の人と違う研究をしている人がたくさんいる世界なので、これからも進化がやむことは当分ないだろうと思っています。
(実際、いまでもソフトを使っていない棋士はたくさんいる)

>「学習の高速道路」について、私にはもう一つ根本的な疑問があります。それは、本当に皆で「高速道路」を走っていくことが、進化を速めることなのだろうか、ということです。
実は、自然界では、むしろ生物の個体それぞれが遺伝的に多様性を持つことが、進化の鍵となっています。とするならば、全員が同じ選択をすることは、むしろ全体から見ると、多様性が失われていて、かえって進化が止まってしまう気もするのです。

自分自身も、かつて谷川会長が言われたように、技術と個性を磨いて、これからも棋士として頑張っていきたいと思っています。

では、今日の対局にご注目を。

つれづれなるままに

昨日は久々に後輩との意見交換会、いわゆるVSでした。
練習将棋はこの半年以上まったくできていない状態だったので、これから徐々に再開していきたいと思っています。

藤井四段は昨日の加古川青流戦・開幕戦にも勝って18連勝。
彼の将棋は、目に見えて強いところがいままでのスター棋士のデビュー当時と違うような気がしています。
神秘的な部分がない一方で、なぜこんなに自然に指せるのか、とびっくりします。
次の対局は竜王戦の6組決勝とのこと。

もう一局の三枚堂ー木村戦(王将戦)が、つい前日までの名人戦と同じ進行だったので、目を引きました。
50手目の局面が同じで、51手目に、名人戦のときとは方向性の違う手が出たという将棋。
このたった一手で、まったく毛色の違う戦いになるというのも、将棋の奥深さを表す一面と思います。

激しい変化だと、水面下ですでにお互い研究や実戦経験があっての合致、ということもあります。
この将棋の場合は、名人戦の将棋を観て、お互いに力が出せそうな展開と踏んだからこそ、のように見えました。
「また出るでしょうね」と感想戦でのコメントにもあったそうです。
自分も、まったく同じことを思いましたので、具体的な指し手への言及は控えます。

昨日のエントリで、増田四段のインタビュー記事について書いたばかりですが、昨夜は藤井四段のインタビュー記事が、ネット上で話題になっていましたね。
これまた興味深い内容でした。
twitterにも書いた通り、彼ら2人は(いまのところ、僕からは)すごく対照的に見えていて、面白いです。
この個性の豊かさこそが、将棋界の魅力、価値の源泉だと思っています。

もう一つ、超長文の力のこもった記事を読みました。
読むのにだいぶ時間がかかりましたが、とても面白かったです。
「電王戦」5年間で人類は何を目撃した?

長いのでいろいろと見どころはあるわけですがたとえば、羽生世代によって「情報の探索における革新」が進められたのに対し、現在は「情報の評価における革新」が生じている。というのは興味深い対比、面白い指摘だと思いました。

僕もこの数年間で、ずいぶんいろんなことを見てきましたし、将棋界もいろんなことが変わりました。
これからも将棋界、プロ棋士の歴史は続いていきます。
変わっていくことを避けられない部分もあれば、決して変わるべきではない部分もあり、変わってしまったこともあれば、ずっと変わらず続いてきたこともある。
そんな将棋界の良さを、これからも大切にしていきたいと思います。