将棋の日、JT杯

予約投稿です。

今日の対局、モバイル中継もあるようです。
良い将棋が指せるよう、頑張ります。

今日11月17日は「将棋の日」。
ご存じの方も多いと思いますが、8代将軍徳川吉宗が、御城将棋の日をこの日に定めたことに由来しています。

将棋連盟ではこの日の近くでイベント(今年は札幌で行われました)と、東西の将棋会館で表彰・感謝の式典を行うことを習わしにしています。
後者は普及活動にご尽力いただいている方々に、感謝の意を表す大切な一日になっています。

また今夜はJT杯東京大会のレセプションもあり、こちらには対局後にお邪魔しようと思っています。
近年は金曜日にレセプションで、中一日あって決勝大会というのが恒例になっているようですね。

先月の学校訪問のときにも書きましたが空前の将棋ブームの昨今、子ども大会の参加者もおそらく過去最高、すごい数になるのではないかと期待しています。
好天にも恵まれますように。

プロ公式戦(日本シリーズ)の決勝は山崎八段ー豊島八段というカード。
こちらもぜひ多くの方々にご覧いただきたいと願っています。

公開対局に関して、今月の将棋世界に出ていた竜王戦第1局の記事(大川記者)の文章が非常に感銘を受けるものだったので、引用させていただいて今日の結びにします。

ファンの方々のあまりにシリアスな眼差しに、私は舞台上の対局に目を向けるのをすっかり忘れていた。携帯電話の電源はもちろん切られており、スマホに目をやるものはいない。ただただ、渡辺と羽生が読みに没頭する姿を凝視している。「多動力」などという言葉が流行し、同時に複数の物事を処理することが求められる時代だ。空き時間ができればスマホを眺める人は多く、それが悪いわけではない。だからこそ、この時が止まったような悠久の空間で、対局者も観客も一つの物事に集中することは大きな意義があるのだと強く感じた。

明日対局

昨日も書いた通り、昨夜はある企業の将棋部へ。
職団戦前の特訓ということで、ここ数年は恒例になっています。

ただ皆さんお忙しいのか、昨日はいつもより参加者少なめでした。
日本社会全体でもいまは人手不足が顕著、就職戦線も空前の売り手市場だそうですし、無理もないことかもしれません。

社会人になるとなかなか自由に将棋を指す時間を確保するというのも難しくなると思います。
そんな中でずっと将棋を続けておられるアマ強豪の方の存在は、我々プロにとっても良い刺激になっています。

これからも無理のない範囲で、あとは何か具体的で身近な目標をモチベーションにして、情熱を保ち続けていただければと願っています。

帰途、そして帰宅後はB2順位戦を観戦。
中村王座と畠山七段の連勝がストップ。
鈴木九段の居飛穴退治、田村七段のケンカ殺法、いずれも見事な斬れ味でした。

他にも阿部ー戸辺戦とか、明らかに両者ペースというか、棋風通りの戦い方をしている棋士が多い一日だったように思いました。
個性は大切ですね。

最後に残った藤井ー北浜戦は、序盤から終盤まで、見どころたっぷりのすごい将棋でした。

今後これが「新藤井システム」になるのかどうか、いずれまた似た将棋は見られるのではないかと期待しています。

 

日付変わって今日はB1の全5局と、A級が1局。
そのA級の深浦ー豊島戦は、来週また王将リーグの挑戦を懸けた一番でも対戦します。

こういうことは案外珍しくなくて、たとえば竜王戦7番勝負真っ最中の渡辺ー羽生戦も近くA級順位戦で対戦がありますし、今期銀河戦決勝の羽生ー久保戦もやはりA級と連戦でした。
2つのタイトル戦を並行して戦った例とかもたくさんあります。

トップ棋士ならではですが、こういうのってどういう気分なんですかね?
番勝負を戦うのに似ているのか、あるいは違う戦略があるのか、まったく気にせず普段通り指すのか。
自分にはなかなかわからないことなので、以前から気になっています。

明日の自分の対局は、棋聖戦の一次予選で真田八段と。

真田さんとは過去5戦、すべて先手番を引いていて、初手合いこそ勝てたもののそこから矢倉、矢倉、また矢倉、そして相掛かり、すべてねじり合いの末に負け。
力の違いを見せられていますが、今度こそはなんとかしたいところです。

勝つと午後にもう一局あるバージョンで、2連勝すると枠抜けになります。
頑張ります。

女流名人リーグほか

昨日のブログでは王将リーグについて書きましたが、同日、女流名人リーグの最終日なのはうっかりしていました。
たぶん、挑戦者がすでに決まっていたからでしょう。

伊藤さんは全勝での挑戦。
前例はあるそうですが、快挙だと思います。

ところで、このツイートにはなるほど。

こんなケースもなかなかないでしょうね。

この世代は5~10年に一度ぐらいの、男女そろって(というところが珍しい)豊作の年で、有望な若手がたくさんいます。
ちなみに自分とは干支が同じ。若い。

昨日の帰り際、たまたま妹弟子の室谷さんとすれ違って、負けたのは知ってたのでほとんど話はしなかったのですが、まさか3-6で残留していたとは。
4-5で落ちることが普通のリーグなので、相当な幸運と言えます。
2度タイトル戦で負けてから、ちょっと調子を崩しているように見えるので、来年は巻き返してもらいたいと思います。

 

2018東急百貨店「将棋まつり福袋」のお知らせ
その室谷さんと、特別対局室で、公式戦のような雰囲気で対局できるという商品だそうで。

「福袋」というと何が入ってるかは分からないもの、開けてからのお楽しみ。
というイメージなんですが、そういうものばかりではないんですね。

東急さんは将棋まつりで半世紀!にわたりお世話になってきたデパートですが、他の百貨店でも来年は将棋関連の福袋がいろいろと出るみたいですね。
こんなところでも将棋ブームが実感できます。

こういった商品が出ることで、将棋を知らない方に、こういう世界があると知ってもらえることが、何よりも大きいことだと思います。
棋士や業界の中の人から見た将棋界と、将棋ファンから見た将棋界と、そうでない方から見た将棋界は、それぞれに見え方が違っているはずなので、その点は常に意識しておきたいものですね。

 

今日・明日はB2・B1と続けて順位戦が行われます。
自分の予定としては今日はある企業の指導、明日は書道部、あさっては対局、土曜日は日帰りで宇都宮。
ということで今週はちょっと予定が詰まっています。

王将リーグほか

王将リーグはこの季節に集中して行われ、11月末に最終戦というのが通例のスケジュール。
昨日豊島八段が勝てば早くも挑戦決定でしたが、対戦成績の悪い糸谷八段がここは意地を見せました。

内容的にも、相変わらずの力強い指し回しでさすがの一局でした。
普通はあんなと金の作られ方をしては悪いとしたものなんですがね。

奇数人数で抜け番を含むこともあって、進行にバラつきがあってややこしいんですが、整理してみると
(1)最終戦でここまで4-1の豊島八段が勝つと挑戦決定という状況は変わらず。
(2)豊島八段の相手の深浦九段は3-2ながら、順位差があるので勝つとプレーオフ他力。
(3)糸谷八段は最終戦に勝って豊島八段が負けるとプレーオフ進出。
(4)他に今日の渡辺ー斎藤戦の勝者が、最終戦に勝てばプレーオフ他力。

という状況ですかね。
「上位2人がプレーオフ」でリーグ入り3名は同順位なので、ちょっと複雑です。
それにしても佐藤名人が真っ先に陥落決定とか、珍しいことではないにせよ恐ろしいリーグですね。

ところで、ついこないだも書きましたが、最近トップ棋士そろい踏みの日が多くあります。
その理由の一つには、たぶん王将リーグの日程が詰まっていることが大きく影響しています。
集中して観るには良いのですが、もうすこしリーグ戦の開始時期が早められるなら、それに越したことはない気もしています。

 

また昨日の竜王戦、宮田六段の▲3三金~▲2二角はカッコイイ手でした。
昇級のかかった大きな一番で、ああいう手が指せたらさぞ嬉しいだろうなあ。

竜王戦は七番勝負真っ最中ですが、もうすこししたら昇級者がすべて決まり、その後来期の抽選も行われることと思います。

今日は久々に(たぶん4年ぶりぐらい)銀河戦の解説のお仕事です。
ネタバレになるといけないのでカードは書けませんが、放映日が近づいたら改めて告知したいと思います。

祝賀会と、AIのはなし

昨日は木村一基さんの九段昇段祝賀会にお邪魔してきました。
お祝いの席というと、公式な就位式・表彰式等の他に、森一門でも毎年恒例になっていますが、それ以外で出席させていただくのは、久々のことでした。

木村さんはお世話になっている先輩でもありますし、三段リーグで5期10年苦しんで、22歳でようやく四段になれた自分みたいな棋士にとっては、希望の星のような存在でもあります。
いつも多くのファンを大事にする姿勢や、抱腹絶倒のトークは、見習いたいものと思います。

昨日も本当に大勢のファンの方々がお見えでした。
おめでとうございました。

 

電王トーナメントは、いろいろと波乱があったようで。
予選5位と10位で決勝とは驚きましたね。
それぞれのソフトの個性や創意工夫までは僕には分かりませんが、ともかく実力伯仲ということなんでしょう。

そしてponanza引退ですか。
一成君があれよあれよという間にコンピュータ将棋界の申し子みたいな存在になって、ponanzaとともに成長していく姿は、振り返ってみるとなんだか感慨深いものがあります。

10年間お疲れ様でした。
またいつでも戻ってきたらいいと思うよ(笑)

 

1週間ぐらい前に、NHKの「人間ってナンだ?」という番組を観たんですが、最近のAIは不完全情報ゲームでも、かなり強くなっているみたいですね。
例として取り上げられていた人狼は、自然言語の能力にかなり左右されそうなので、いまはそれほどでなくても、言語能力の進化とともにある日突然強くなるのではと予想しています。
また麻雀のようにルールが明確で、他の知識を必要としないゲームならば、既に相当な腕前なんでしょうね。

AIに関して経験的に明らかなのは、彼ら(?)は常に自分(多くの人、と言い換えても良いと思う)の予想できないスピードで、かつ予想もしない方法で強くなる。
そして、そのスピードは常に予想よりは速い。ということです。

それを恐れる必要はまったくなくて、予想もしなかった未来が訪れたいまを、大いに楽しめば良いと思います。
5年後、10年後も、そういう気持ちを持ち続けている自分でありたいものです。

 

ソフトに負けてしまうと将棋界はどうなるのか、と不安に思っていた人は業界の内外問わずたくさんいたと思うのですが、僕の場合、かえって将棋が面白くなりました。
最近は観ていて本当に楽しいですし、毎日欠かさず将棋に接しています。
棋士として当然のことでもあるし、とても幸せなことだと思っています。

今日の中継は竜王戦が1局と、王将リーグが2局。